がらくた処分場

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

星と占いと四番街の迷い猫【後日談④】(原題/「セクサロイド? お前が?」 「そうじゃ、おかしいか?」)



【後日談④(最終)】

(本編二十数年後)


ある冬の夕暮れ、シロとノーラは手を繋ぎ休日の街を歩いていた。

すれ違う人達は時に彼らを好奇の目で見る。

それも仕方ないだろう、既にシロは四十路にさしかかろうという歳だ。

ひきかえノーラは変わらず少女の姿のまま、彼らの見た目はふた回りほども違っている。

そして仲睦まじく並び歩く様子は、どう見ても親子とは思えない。


この冬、ノーラは外出する時いつもマフラーを身に着けている。

それは去年のクリスマスにシロが贈ったもの。

ロボットの彼女が寒さに凍える事はないが、冬らしい装飾品として彼女はそれをとても気に入っている。

故に人々の目に、彼女が首輪を着けたロボットである事は判らないのだ。


「この間入った子らは皆、元気が良い。少々いたずらが過ぎるのは困るが、可愛いのう」

「そうだね、女の子達はすっかりスミレが仕切ってるけど」

「あはは……さすが、ユーリの娘じゃな」


サブローと百合子の夫妻は、長男のサン太より後に三人もの子を儲けた。

今、名前の挙がったスミレが一番の末っ子にあたる。

ジローと花子にもロクローの下に双子の娘がおり、つい先日ようやく身を固めたゴローもまた半年後には父親になる予定だ。


「……賑やかな家じゃ、幸せじゃの」

「うん、本当だね」


そこにシロとノーラの子が加わる事はない、だがそれは二人とも『嘆く事ではない』と考えている。

ノーラにとってシロは唯一の所有者であり主だ。

そしてシロも彼女以外と生涯を歩むつもりは無い、その相手がロボットだったというだけの事。


時刻は18時になろうとしていた。

もうすぐこの道はイルミネーションに包まれる。

二人はこの冬まだそれを見ていないが、今年の装飾テーマは『流星』だという。

彼らにとっては何となく遠いあの日を思い返してしまうキーワードであり、是非見ておきたいと話していた。


「あ……シロ、点き始めたぞ」


軒を並べる建物や街路樹、道を跨いでそれらに渡された架空線に星々を思わせる白や金色の光がちりばめられてゆく。

それだけでも見上げるようにすれば、確かに星空のような趣きを感じられるものだ。

だが更にそこへ、数年前から取り入れられたホログラムによる演出が加わる。


「おお、見事じゃな……!」


昼と夜の違いはあれど、それは二十数年前に見た彗星の欠片が降る光景を思わせた。

顔を綻ばせてはしゃぐノーラ、対照的に真面目な顔でそれを見上げるシロ。

そして彼は決心をした。


「……ノーラ、あれ以来なんだけど」

「む? 何がじゃ?」

「二度目、これで最後の命令をするよ」


彼はこの二十数年、ノーラに命令らしい命令をする事はなかった。

ささいな喧嘩などをしてしまった時に冗談で「命令だ、機嫌をなおせ」などと言った事はあるが、それはカウントすべきではないだろう。

人間同士であれそういった希望は唱えるし、そうでもしないと膨大な記憶を持つノーラに口喧嘩で勝てるはずがない。


「いつか、僕が死ぬ時の事だよ」

「……お前はずっと生きていろ、というのではあるまいな? 言われれば断れぬが、儂はそれは嫌じゃぞ」

「違う……逆だ、お前も一緒に時を終えてくれ」


命令を受けたノーラは暫し目を丸くした後、微笑んで頷いた。

それを確認して、シロは「少し早いんだけど」と呟きながらポケットを探る。


「ノーラ、ロボットは死んでもロボットか?」

「ふむ……それは考えた事も無いが、どうじゃろうな?」

「きっと違うだろ。死んだら人間もロボットも同じだ、そうじゃないと困る」


ホログラムの流星がその数を減らす。

代わりに長い尾を引いた彗星が投影され、ノーラは向き合うシロの背後にそれを見た。


そして彼は取り出した小箱をノーラに向けると、その蓋を開けて言った。



「死んだら結婚しよう、ノーラ」



人間よりも優れた思考能力を持つはずのノーラ、だが彼女はその処理が一瞬フリーズしたような錯覚を感じた。

シロは「これは命令じゃない、考えて答えてくれ」と続け、小箱に収められていたリングを手に取る。

震える声で「はい」と答えたノーラの頬を、一筋の涙が滑り落ちた。


「……セクサロイドに求婚などする者がおるとはの」

「セクサロイド? お前が?」

「そうじゃ……じゃが、もうそんな事を言うのはおかしいじゃろうな」


ノーラの左手、その薬指に婚約指輪が通される。

それが結婚指輪に変わるのは数十年後、穏やかに眠るシロの隣で彼女が生を終える時だ。


シロが右手を差し出すと、ノーラは左手でそれを握り返した。

彼の手にまだ少し冷たい金属の感触が伝う。

二人はまたゆっくり歩き始め、四番街の方へと続く光の川を下っていった。



【おわり】



.
スポンサーサイト

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
  2. SF
  3. | コメント:7

コメント

幸せの形は人それぞれでいいんですよね。
お疲れさまでした。大変楽しく読ませていただきました
  1. 2016/12/08(木) 12:26:19 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

面白かった。
  1. 2016/12/10(土) 23:43:39 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 幸せの形は人それぞれでいいんですよね。
> お疲れさまでした。大変楽しく読ませていただきました

コメントありがとうございます
なんとなく何もかも人間と変わらない都合のいいハッピーエンドにまではしたくなかったんですよねー
またよろしくお願いします!
  1. 2016/12/13(火) 08:25:27 |
  2. URL |
  3. てーい #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 面白かった。

せっ……さんくす!
  1. 2016/12/13(火) 08:25:58 |
  2. URL |
  3. てーい #-
  4. [ 編集 ]

前後日談がここまで書かれていることに気が付きませんでした……。

私としては、可能な限りたくさん主様の世界観に浸りたいので、前後日談はとても嬉しかったです^^

素敵な気持ちになれました。ありがとうございました^^

P.S. 今年のクリスマス閑話(ry
  1. 2016/12/16(金) 00:52:58 |
  2. URL |
  3. キリンレモン #-
  4. [ 編集 ]

執筆お疲れ様でございました。
恋、愛、幸せ。人間の負の感情も含めて、
この物語の感情量に、
計り知れないものを感じました。
きっと二人は、綺麗な月を眺めています。
  1. 2017/01/12(木) 00:32:15 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

あーーーーすばらしい
  1. 2017/02/24(金) 01:45:14 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

<%template_post\comment>


管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。