がらくた処分場

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星と占いと四番街の迷い猫【前日談①】(原題/「セクサロイド? お前が?」 「そうじゃ、おかしいか?」)



【前日談①】

(本編の十年前)


……………
………


…四番街のはずれ


「──このコソ泥が!!」


売り物を盗まれた商店の主人が、犯人である少年を殴り飛ばす。

少年の懐から数個の缶詰が溢れ落ちた。


「クソッ……幾つか凹んで売り物になりゃしねえ、そんだけ持ってここから失せろ! 糞餓鬼!」

「うっ……!」


主人は舌打ちし、大きく凹んだ缶詰を少年に投げつける。

その内ひとつが目の上に当たり、彼はよろめいた。

数秒経って地面にぽたりと血が落ちる。


「……ってぇ」


傷口に指で触れると刺すような痛みが走り、少年は顔をしかめた。

流れる血が入ったのだろう、視界の霞む左目を瞑った彼は周囲に誰も居なくなった事を確認して「もう大丈夫だ」と声を発した。

すぐに物陰から一人の少女が駆け寄り、ぼろぼろの鞄から傷口に当てる布を探す。


「綺麗な布……無い」

「いい、放っときゃ治る」


少女は涙ぐんで「水道のあるところへ行こう」と促した。

彼女の鞄には、少年がくすねたより多くの缶詰や固形食品が入っている。

少年は商品を盗む時、わざと主人に見つかるようにしたのだ。

そして少女は主人が彼を追っている間に、より多くの食べ物を安全に盗んだ。


「ごめんなさい、いつも」

「俺はこのくらいの傷はへっちゃらだ、お前も痛くないんだから泣くんじゃねえ」

「でも……」

「文句言うな、俺はすぐに泣く奴は嫌いだ」


彼は少女に対して、いつも言っている事があった。


『泣くな、笑え』

『辛くて泣くくらいなら生きてる意味が無い』

『笑いながら過ごせば、明日も生きようと思えるだろ』


手に入れた分の食料があれば、ひとまず一週間は生き長らえるだろう。

少年は少女の手を引き、水道のある公園を目指して歩き始めた。

その時、二人に背後から声を掛ける者がいた。


「その傷、割と深いぞ。手当てした方がいい」

「……誰だ」

「いいから……手当てしてやるから来い。僕は一人暮らしだ、心配は要らない」


声の主は15歳ほどと思える男だった。

彼は自分の名を「タロー」と名乗り、二人に歩み寄る。


「スラムグループに属しておけば配給が受けられるだろうに、どこから来たんだ」

「……追い出された」


自治体に登録されたスラムの共同体には食料の配給と共に、年に二度わずかな生活補助金の支給がある。

二人は先日までスラムグループに属していたが、グループ全体に補助金が払われると同時に追い出されたと言う。

補助金はグループに所属する人数に応じて額が決まるからだ。

今までもずっとそうだった、いわば彼らは半年に一度の頻度で住処を失い続けてきた。

少年と少女が出会ったのは、ふたつ前のグループに属した時だ。


「グループは三人から登録してもらう事ができる、よかったら僕と──」

「──半年間だけか? 次の給付金が入ったら、また俺達を追い出すんだろ」

「そんな事しないよ、まあその時まで信じないんだろうけどね。ええと……君達、名前は?」

「……二人とも無い、チビって呼ばれたり小僧とか、坊主とか」


タローは腕組みをし、少し考える。

しかしそんなに凝った名がすぐに思いつく訳もない。


「まあいいか……僕がタローだから、君はジロー。女の子は花子でいいだろ? 気に入らなきゃ、また考えよう──」


──半年後、補助金の給付を受けてもなおタローは彼らを変わらず仲間として傍に置いた。

それから少しずつ彼らはタローに打ち解け、いつしか『タロ兄ちゃん』と呼び慕うようになる。

彼は幼い二人に「この居場所を失いたくなければ、決して罪は犯すな」と言い聞かせた。

そして逆に余所者が四番街で悪さを働くようなら追い払うか、もし『行き場も無く困っているようなら仲間に迎え入れる』というルールが生まれたのだ。


間も無くこのグループにはサブローとシロー、数年遅れて百合子とゴローが加わる。

そしてグループが生まれておよそ十年後、心根の優しいシロが先のルールに従い『ある野良ロボット』を連れて帰る事になるのだった。



【前日談①おわり】



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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
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