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漁師と魔女と約束の島【最終部】



【最終部:漁師と魔女と約束の島】


563 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:18:37.58 ID:QqSaSH3xO


…………………
……………
………


…五年後


白衣「──以上がいわゆる『魔女事変』の経緯、そして終焉ですね」

白衣「その後の事は皆さんも記憶に新しいと思います」

白衣「月王を失った月の国は新たな王をたてようとしましたが、間も無く民衆により倒され民主主義国家となりました」


白衣「およそ50年前以降に占領した地域は全て元の国へ返還され、月の国の領土は当時の五分の三ほどにまで縮小したのです」

白衣「軍も一旦解体され、現在では専守防衛を約束した自衛組織としての機能を留めるのみ」

白衣「そして元来より月の領土であった地域でも、ひとつだけその支配下から外された場所があります。……解る人は?」


生徒「はい、魔女の島です!」


白衣「その通り、あの島は世界で最も小さな独立国となりました」

白衣「惑星の御子様を君主とし、今は約100人が暮らしています。そのおよそ半数が御子様を護る『御子の騎士』ですね」

白衣「ここはその御子の騎士を育てるための学校。つまり島にいるのは皆さんの先輩という事になります」



564 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:19:12.32 ID:QqSaSH3xO


生徒「質問です! 君主が惑星の御子様なのに島の名前が『魔女の島』なのは何故ですか?」


白衣「なるほど、当然の疑問です…が、これに明確な答えはありません」

白衣「簡単に言えば『御子様がそう呼ぶから』魔女の島なのです」


白衣「他に何か質問は?」

生徒「はい! 月王に従い魔女の血の譲渡について研究していた悪い人が、今は先生をしているのは何故ですか!?」

ドッ…!アハハハハハ…
ソウダソウダー!ワルモノー!

白衣「はぁ…去年も受けたなぁ、この質問」ガックリ


白衣「黒騎士の台詞じゃありませんけど、それこそ当時の国王の命令で仕方なく執り行っていたのです」

白衣「もちろん知っていると思いますが、この施設こそがそれを研究し実行していた場所…つまり魔女の砦」

白衣「現在は負の遺産として保存されると共に、こうして御子の騎士を育てる場として活用されて──」


ハナシ ヲ ソラシタ ゾー!
ワルモノー!キチクー!
アハハハハハ…

白衣「ぐぬぬ…」



565 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:19:50.71 ID:QqSaSH3xO


ガラッ…


校長「随分賑やかだな」カッ、カッ…

白衣「砦長、すみません…廊下まで響いていましたか」

校長「ごほん、私は校長だが?」

白衣「あ…失礼いたしました、つい癖で」


コウチョウ ダ…!
ワルモノ ノ アジト ノ ボス ダ…
チョー ワルモノ ジャン!アハハハハハ…

校長「…この者達が御子の騎士を目指す二期生か、去年と変わらず活きがいいようで何よりだ」チッ


白衣「もう特別講師はお着きに?」

校長「ああ、さっきな。今は控え室におられると思うが」

白衣「そうですか、じゃあ静かにさせないと……はい! 皆さんお静かに!」パンパンッ!


シーーーン…



566 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:20:39.76 ID:QqSaSH3xO


白衣「皆さんの入学を祝い、激励下さるために、特別講師が来られています。これから私が呼びに行きますから、静かに待って──」


──ガラッ

友「…あ、悪い。呼びに来るんだったか」


ダレダ アレ?
バカ!シラナイ ノ カヨ!?
マジョ ジヘン デ クロキシ ト タタカッタ
レジェンド ノ ヒトリ ダゾ!

ザワザワ…


白衣「お静かにっ! はぁ…本当は次の時間に友さんのお話を頂くつもりでしたが、まあいいか」

友「悪いわるい……じゃあ、真面目な激励は次の時間で。今はなにか質問でも受け付けようか」


生徒「はいっ! 魔女様を砦から攫う時、校長を人質にとった感想を教えて下さい!」

ドッ…!アハハハハハ…


友「ははは、悪いことしたなぁ…って思ってるよ、さぞ怖かったでしょう?」

校長「殺されると思いました」

友「まあでも魔女様を攫うなんて、大それた作戦だったからな。あの時は必死だった」



567 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:21:21.50 ID:QqSaSH3xO


白衣「他に質問のある方ー?」

生徒「はいっ! どうやって眼帯さんを口説いたんですか!?」


アハハハハハ…
キキターイ!ヒューヒュー!


友「ば、馬鹿野郎…それは企業秘密だ。校長、こいつら全員あとで砦の周り五周走らせましょう」

校長「十周いっときましょう」

白衣「はい、この後の休み時間は持久走に決定で」


ヒデー!
ドコ ガ ヤスミ ジカン ダー!
ダレ ダヨ ヨケイ ナ シツモン シタ ヤツー!?

ブーブー!


友「はぁ、ほんと活きがいいな」

校長「ははは…御子の騎士を目指すなら、これで良いのかもしれません。では友殿…よろしくお願いいたします」

友「ためになる話ができるかは解りませんよ?」

校長「なんだかんだ言って、みんな貴方達に憧れて入学してきたのです。なんでも話してやって下さい──」



568 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:21:55.22 ID:QqSaSH3xO


──ガラガラ……ピシャン


校長「ふぅ…」


校長(…あの悲しい砦が、こうして笑顔の溢れる場所になった。喜ばしいことだ)

校長(私も白衣も、この施設で働けるなど光栄の至り)

校長(確かに半ば強制されていたとはいえ、本来なら処罰されていてもおかしくはなかった)

校長(…しかし、御子様よりこのような役目を頂戴した以上、それに身を尽くそう)


校長(魔女様…島でお元気にされているのでしょうな)

校長(…貴女の名を知っているのも、もう私だけ)

校長(私はこのまま、墓まで持って行く所存です)

校長(魔女様…どうかここに囚われていた間の分まで、幸せな時を──)



569 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:22:30.06 ID:QqSaSH3xO


………


…魔女の島


地元友「──はい、お足元にご注意下さいー。この度はご乗船ありがとうございましたー」


幼馴染「ご苦労さま、今日の便も満員御礼だったね」

地元友「ああ、新婚旅行の夫婦が三組もいらっしゃるようだったよ」

幼馴染「あらあら、それはお金落としてくれそうだねぇ。よーし、今度は私が頑張らなくちゃ」

地元友「ははは…」


幼馴染「はいはーい、魔女の島観光ツアーでお越しの皆様ー! 長らくのご乗船お疲れさまでしたー!」

幼馴染「参拝順路は東回りとなっておりまーす! 参拝順路あちらからでーす!」

幼馴染「お帰りの際は是非この船着場でお土産をお買い求め下さーい!」

幼馴染「魔女の島ビスケット、魔女の島サブレ、魔女の島の磯で採れた貝の佃煮など、各種名物をご用意しておりまーす!」



570 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:23:05.05 ID:QqSaSH3xO


幼馴染「また御子様のサインをお求めのお客様は参拝前にこちらでご予約頂くと、御子様にお名前を書き添えて頂きまーす!」

幼馴染「私が御子様のオサナナジミであるが故に実現した当店限定の特典となっておりますので、是非ご利用下さいませ──!」


魔剣士「──盛況な事だ」

地元友「おかげさまでね。少し久しぶりじゃないですか、魔剣士さん。ご乗船お疲れさまで」

魔剣士「波が穏やかで何よりだったよ」


地元友「…この度はおめでとうございます」

魔剣士「ありがとう、見に来ておかないと悪く言われそうに思えてね」

地元友「ははは…違いない、早く行ってあげて下さい」

魔剣士「あいつはもう自宅に?」

地元友「ええ、今週の頭から戻ってると聞きました」

魔剣士「わかった、行ってみよう──」



571 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:23:40.19 ID:QqSaSH3xO


………


…島の岬


ザアアァアァァァ…ザザアァアァァァン…
…サアアアアァァァァ──


魔女「──いいんですか? 戻らなくて」

男「だって時間通り戻ってもサインに名前書かされるだけですし」

魔女「あはは…」


男「私は惑星との魔力共有バランスを調整するのに忙しいんです」フンス

魔女「へえ…共有バランスの調整って、岬にゴロ寝してするんですね」クスクス


男「魔女様もしてみては?」

魔女「……じゃあ、お隣よろしいですか?」

男「どうぞ、ご遠慮なく」

魔女「失礼します」ポフッ…ゴロン



572 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:24:13.14 ID:QqSaSH3xO


男「この時間帯、ちょうどクスの大樹が太陽を隠して、木漏れ日が心地いいんです」

魔女「ほんと…すぐに寝ちゃいそう」

男「置いて行きはしないので、どうぞ目を閉じても結構ですよ」


サラサラ…ザワワ…
…サアアァアァァ


魔女「……今年は魚、大漁だそうですね」

男「はい、特に鯵がいいようです」

魔女「落日の砂漠も少しずつ緑を取り戻してると聞きました」

男「そうらしいですね」


魔女「全部、男さんのおかげなんでしょうね?」

男「……私は木陰で昼寝したり、釣りをして過ごしてるだけですよ」

魔女「それでも、です」



573 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:24:48.87 ID:QqSaSH3xO


男「みんな大層に御子の騎士だとか構えて、そんなのいいのに」

魔女「だめですよ、命を狙われたりしたらどうします?」

男「私が死んでも、その内新しい御子が産まれるんでしょう」


魔女「じゃあ何か弱みを握られて、その力を軍事利用されたら…?」

男「弱み?」

魔女「はい、例えば…そうですね、私を人質にとられたら?」

男「お、それは困りますね」

魔女「ふふふ、だからこの島はみんなで護るんです」


男「…でも、魔女様は私が護りますよ」

魔女「御子様に護って頂けるなんて、光栄の至りですね」


男「それを思えばみんなが御子の騎士になってくれて良かったのかな」

魔女「……どういう事です?」

男「ええと…それは、ちょっとゴロ寝せずに話しましょうか」ムクリ

魔女「?」ムクッ…



574 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:25:24.50 ID:QqSaSH3xO


男「魔女様、実は…ですよ」ゴホン

魔女「はい」

男「あの日、ひとつ黒騎士から聞かされた事がありまして」

魔女「黒騎士…から?」


男「…それは、どうして黒騎士が知っていたのかは解りませんが、貴女の本当の名前です」

魔女「!!」

男「…よろしいですか?」

魔女「は、はい」ドキドキ…


男「──なんとかメアリなんとかかんとか…です」


魔女「なんとか…ですか?」

男「はい……メアリってところだけは間違いありません…が、長過ぎて覚え切れませんでした」ハァ…



575 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:26:04.93 ID:QqSaSH3xO


魔女「ぷっ……あはっ…あははははっ」ケラケラ

男「すみません…」ポリポリ…


魔女「いいです、顔も知らぬ両親がつけたか月王がつけたか判りませんが、あまり興味はありません」

男「おや、そうでしたか」

魔女「名前とは家族がつけるもの、今の私の家族は島の皆さんですから」

男「なるほど…じゃあ、そのみんなが御子の騎士になった事が好都合…という話ですが」

魔女「はい」


男「それは…今は魔女の騎士は一人でいい、そう思うからです」


魔女「……その一人とは、男さんですよ…ね?」

男「もちろんです」

魔女「………」テレテレ


男「はぁ…なんとか思い出して、プロポーズの時には名前で呼ぼうと考えたんですが…ダメでした」

魔女「男さんが私をそう呼んでくれる限り、魔力を失っても私は魔女。聞いた名前はそのまま、お忘れ下さい……ところで」

男「………」ドキッ

魔女「今、なんと──?」



576 : ◆BlfAYzXRRw [saga]:2015/05/04(月) 21:26:40.60 ID:QqSaSH3xO


………



眼帯「──魔女ちゃーん! 男ー!」フリフリ


男「あれ? 眼帯…」

魔女「えっ…もうこんなとこへ歩いて来ても大丈夫なんでしょうか」

男「いいんでしょう、ほら…自ら腕に抱いてるみたいですし」


魔女「私、まだ抱っこさせてもらってないんです! させてくれるかな…」ワクワク

男「…私なんか触れられませんけどね」ガックリ

魔女「あ…そうか…」


眼帯「早く、赤ちゃんが日に焼けちゃうー! 兄様も家で待ってるからー!」フリフリフリ


男「ああ…そういえば、今日は魔剣士殿が来るって言ってましたっけ」

魔女「……あの、男さん」モジモジ…

男「なんでしょう」


魔女「その…どうしても赤ちゃんに触りたかったら…ね?」

男「はい…?」

魔女「ちょっとくらいの間なら、魔力…お預かりしますから──」




【おわり】



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