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奇跡の使い方(原題/幼馴染「クリスマス、サンタさんに何をお願いした?」)



1: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 15:55:02 ID:vYJQk0B6


『──クリスマス、サンタさんになにをおねがいした?』

『ニンテンドーWiiがほしいって、手がみ書いた』

『前から言ってたもんね、もらえるといいね』


『そっちは?』

『あたしは……きょ年とおなじ』

『そっか……お母さんのことだったな』

『うん、死んじゃった人を生きかえらせるなんてムリだって分かってるけどね』


『じゃあぼくも、らい年はそれを書くよ』

『あたしのお母さんのことを?』

『うん……そんでそれがかなわなかったら、いつかぼくがサンタになってかなえてあげる』

『ありがと、あはは……サンタになれたらいいね──』



2: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 15:55:32 ID:vYJQk0B6


……………
………


…12月24日


「──初めてだったねぇ、こんなクリスマス」

「本当な、18年も隣に住んどきながら」

「イブの夜に二人で食事とか緊張したよ」

「そりゃ俺もよ、まともなレストランなんて家族でしか行った事なかったもん」


「これで雪の降るホワイトクリスマスだったら、もっと素敵なのに」

「曇ってるけど降らないな。まあ、雨じゃないだけいいよ」



3: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 15:58:00 ID:vYJQk0B6


「今年は家でのパーティーはしないの?」

「うん……明日するって言ってた、今年も来るだろ?」

「なんか毎年で悪いなあとは思うんだけど」

「何を今さら遠慮してんだよ。たぶん母ちゃん、もうお前の分まで食事の材料買ってるよ」

「うん、お言葉に甘えて妹と一緒にお邪魔します。あの子、アンタの家で食事するの大好きなの」


「……なんて言ってる内に家に着いちゃったな。お疲れ様、今日はありがとうな」

「こちらこそ、お誘いありがとうございました。もちろんプレゼントも嬉しかったよ」



4: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:01:10 ID:vYJQk0B6


「似合うと思ったんだ、よかったら使ってくれな」

「使うよぅ、使うに決まってるじゃない。普段着に合わせるカジュアルな腕時計って欲しかったんだから」

「そんなに高いもんじゃないけどね。こっちも貰ったネクタイ、大事にするよ」

「大事にするより使い倒してくれたら嬉しいな? ふふ……アンタが就職するって聞いた時から、今年のクリスマスに贈ろうって思ってたんだ。いい赤だったでしょ?」

「うん、ありがとうな。それじゃまた明日……じゃないか、学校ももう休みだった」


「冬休み中も暇ならどっか誘ってよ」

「……うん」



5: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:01:49 ID:vYJQk0B6


「じゃあ、おやすみなさい」

「…………」

「ん? なにか言いたげですか?」

「いや、そんな事ないよ。……今日はすごくいい思い出になった」

「記念になった、じゃなくて? 思い出なんて言ったら最後みたいじゃない」

「ごめん」

「なんで謝るかなぁ?」

「……ごめん」

「ふふ……ヘンなの。それじゃ、おやすみ──」



6: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:02:28 ID:vYJQk0B6


……………
………


…翌日、12月25日


「──遅いわよ、もうお昼前じゃないの」

「えっ……!? か、母さん……?」


「なによ、私を見て驚いたりして」

「…………あれ? そうだよね、わかんない……なんでだろ?」

「変な子ねぇ」



7: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:03:01 ID:vYJQk0B6


「あ、そうだ。メリークリスマスだね、母さん」

「はいはい、メリークリスマス。それにしても花の女子高生がクリスマスに何の予定も無いの?」

「感じ悪っ! そんなんあったとしても昨日、イブの夜でしょ……無かったけど」


「今夜はささやかにパーティーするからね、午後にはあんたも手伝いなさい」

「えー、たまには妹にも言ってよぅ。……って、なんでパーティーは今日なんだっけ。毎年、イブにしてたよね?」

「そりゃ、あんたが昨夜……」

「……昨夜?」

「昨夜……あら? なんだったかしら……」



8: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:03:49 ID:vYJQk0B6


「もう、しっかりしてよ……と言いつつ、私もド忘れしてる事があるみたいなの。母さん、この腕時計のこと知ってる?」

「あら可愛いじゃない、誰かから貰ったの?」

「それを訊いてるんだよ」


「知らないわよ、あの子に貰ったんじゃない? お隣の……」

「お隣には小学生の弟くんしかいないよ、なんで高校生の私が弟くんから腕時計なんて…………弟くん……? 誰の弟……だっけ?」

「嫌ねぇ、お隣さんは一人っ子でしょ」


「…………ねえ、母さん。私たち何か大事なこととか忘れてない?」

「そんな事ないと思うけど……でもなんとなく色々と腑に落ちないわね」



9: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:04:30 ID:vYJQk0B6


「なんだろう……なんか、思い出そうとすると胸がざわざわする」

「……こういうの聞いた事あるわ。ただの御伽噺だと思うけど」

「御伽噺?」

「ええ、ちょうどクリスマスのお話よ。イブの夜、日付が変わる時に新しくサンタになる人が旅立つんだって」

「サンタになる……」


「そう……そしてサンタになった人の事は全ての人の記憶からも、あらゆる記録からも魔法みたいに消えてしまうって」

「記録から消えるって、戸籍とか? その人の持ち物とか書いた文字とか、どうやって消えるの?」

「だから魔法みたいに……としか表現されてないのよ。そんな事あったら本当に魔法だわ」


「じゃあ、この時計はサンタになった人からの贈り物だって事?」

「あくまで御伽噺よ。たぶん学校のお友達に貰ったんでしょ、三学期になったら解るわよ──」



10: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:05:20 ID:vYJQk0B6



──釈然としない

私はどうして、母さんを見て驚いたんだろう

どうしてパーティーはイブじゃなく、今日なんだろう

そうなった理由……昨夜の私はどうしてたんだろう

何故、隣の家の男の子を誰かの弟だと思ったんだろう


《──初めて──ねぇ、こんな──》


たぶん私は、何かを忘れてる

きっと大事なことなのに、思い出せない


《──今日はすごく──思い出に──》


この腕時計は、誰が──



11: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:06:01 ID:vYJQk0B6


……………
………


…翌年、12月25日


「──おはよう、昨夜は初仕事おつかれさん」

「エリア長、おはようございます」


「どうだった? サンタになって初めてのイブは」

「めちゃくちゃ焦りましたよ。なんとか配り終えたけど、先輩達の半分も持たされてなくてそれでしたから……まだまだだなぁって」

「予定分をこなせただけ立派だよ。それにしてもネクタイ締めたサンタクロースとはね、まあ面白いが」

「すみません、サンタ衣装の内側は特に服装決められてないって言われたので」



12: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:06:32 ID:vYJQk0B6


「いいよ、それ人間界から持ってきた大切なものなんだろう?」

「ええ、とても」


「……君は色々と珍しいヤツだな。サンタになる時、人間界から一つだけ持って来られる貴重なものにネクタイなんて実用品を選ぶし」

「もっと違うものを持ってくる人が多いんですか?」

「そうだね、アルバムとか記念品みたいなものを選ぶ人が多い。最近なら電波は通じなくともスマートホンとかね、写真や動画がいっぱい入ってるとかで」

「……これも記念のものなんです」

「いや、すまない。決して悪く言うつもりではないんだ」

「分かってますよ」



13: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:07:08 ID:vYJQk0B6


「それに……珍しいといえば、ほら。サンタになる代わりの──」

「──奇跡、ですか」


「うん、人間界を捨ててサンタになる……その代わりにひとつだけ起こせる奇跡。それを君は自分の家族とは違う相手に使った」

「はい、約束したので」

「とても珍しい事だよ。大抵は死んだ我が子を生き返らせたり、その病気を治したり……だからサンタは年配の者が多いんだ」

「……後悔はしてません」


「重ねてすまない、これも決して悪く言っているんじゃないんだ。ただ……そんな珍しい例が今年の新人にも見られてね、それでふと君を思い出した」

「今年の新人にそんな人が?」

「ああ、願った奇跡がなんと……ほら、君も昨夜それを見たはずだよ」

「僕もですか? なんだろう……」



14: 以下、名無しが深夜にお送りします :2020/12/24(木) 16:07:45 ID:vYJQk0B6


「このエリア、昨日の人間界の天気予報は晴れだったろう」

「ああ、それなのにホワイトクリスマスになりましたね。…………え、まさか」

「そう、彼女が願った奇跡は『イブに雪を降らせる事』だったそうだよ」

「それだけですか? 人間界を捨てる代償なのに」

「しかもサンタへの志望動機は『どうしても確かめたい事がある』というだけらしい。まったく……女性というだけでも珍しいのに、さらに君と同じ年齢だというから驚いたよ」


「同い年の女性……イブの雪……?」


「ああ、変わってるだろう? それと人間界から一つだけ持ってきたものも君と似てて、実用品なんだ──」



【おわり】


.
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コメント

今年のクリスマスSSも相変わらず好きな雰囲気のお話でした。陰ながら応援してます。

No title

なんと……っ!
久々の更新を2週間も逃していたとは……。

今回も素敵なお話でした^^
心が洗われた気分です。有難うございます。
やはり主様の作品は最高です!
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Author:garakutasyobunjo
主に掲示板へ投稿したSSを格納していきます。投稿時から文章の再編集等調整が行われている場合があります。

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