がらくた処分場

かなめSeptember



このSSは過去作『さくらOctober』の後日談です


◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


カナメ『──もうちょっとこっちおいでよ』

ケヤキ『いいよ、暑苦しい』

カナメ『もう9月も半ばだよ? 今年わりと涼しいし』

ケヤキ『常緑樹で葉の丈夫なお前とは違うんだよ』


イロハ『ケヤキ、素直じゃないねー』

ノムラ『ねー』


カナメ『少しくらいイチャついたっていいじゃん』

ケヤキ『俺の柄じゃねえ』

カナメ『…ケチなんだから』ハァ…



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


男「おー、痴話ゲンカか」

幼馴染「お邪魔するよー」


カナメ『あ、幼馴染ちゃん! 今日は顔色いいね!』

イロハ『気持ち悪くないのー?』

ノムラ『ないのー?』


幼馴染「うん、ちょっと楽。あんまり心配しないでよ、病気じゃあるまいし」

男「悪かったな、こないだ庭で屈み込んだりしてみせたから…」


ケヤキ『桜の様子でも見に来たか』

男「まあそれもあるけど、新居から徒歩3分の距離を散歩するのに深い理由なんかないよ」

ケヤキ『まあそうか。大丈夫だ、接木の桜は特に葉色がいい』

男「みたいだな、安心したよ」



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


ケヤキ『さすがサクラから直接とった苗木だけある…今度、夜に来てみてくれ』

男「ん? …もしかして?」

ケヤキ『ああ、枝下にぼんやりと光が集まってる。もうじきに意識を持って動きだすだろう』


イロハ『楽しみだねー』

ノムラ『ねー』

カナメ『………』


幼馴染「それって、ひょっとしてサクラの子供!?」

ケヤキ『子供って言い方は相応しくないかもしれないがな、そんなとこだ』

男「早いなー、まだ10年物にもなってないのに」

ケヤキ『もともと精の宿ってた枝の接木だからな』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


男「よーし、今日は紅葉2本の害虫防除するぞ。こないだ見たら葉っぱにイラガの食い痕あったからな」

イロハ『今はいないよねー』

ノムラ『ねー』

男「だめだ、まだまだ発生期だからな。予防の意味も含めて、やらないわけにはいかん」


ケヤキ『観念して薬浴びな』

男「紅葉ほどじゃなくとも、ケヤキにもカナメにもイラガはくるからな。お前らもだぞ」

ケヤキ『…あんまり展着剤効かせないでくれ。ベタベタして好かん』チッ


カナメ『………』

幼馴染「……?」



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


ケヤキ『実は最近背中がちょっと痒いんだ』

男「って事はこっち側かな…? ああ…あるある、食われてる」


ケヤキ『くそ、やっぱり紅葉のある側じゃねえか、伝染しやがったな』

イロハ『勝手に伝染っていったんだよー』

ノムラ『だよー』


カナメ『………』


幼馴染「…カナメちゃん、ちょっと向こう行こう?」ポンッ

カナメ『えっ、でも…薬…』


幼馴染「男ー、カナメちゃんの防除ちょっと待ってね」

男「あ? 他のやり終わる頃には戻ってくれよ? 調子悪いとこ訊かなきゃ」

幼馴染「解ってるー」



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


幼馴染「さて…と、ここなら声は聞こえないね」

カナメ『幼馴染ちゃん…』


幼馴染「ケヤキさんとちょっとケンカしちゃったのかな?」

カナメ『ケンカってほどじゃないけど』

幼馴染「…聞くよ? ほら、遠慮なく」

カナメ『なんでもない』


幼馴染「……カナメちゃん」

カナメ『べつにケヤキ、なにも悪いことしてないし』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


幼馴染「近くに居すぎなんだよね」

カナメ『…え?』

幼馴染「同じ庭の中なんだから当たり前だし、仕方ないんだけど」


カナメ『で、でも、それが嫌なんじゃないし!』アセッ

幼馴染「あははっ、解ってるよーう」ニコッ

カナメ『そっか、幼馴染ちゃんと男も…』

幼馴染「うん、ほんと…二人ほど近くないけど、ずっと一緒だったからね。よく解るな、カナメちゃんの気持ち」


カナメ『ボクが隣りにいるなんて、特別な事じゃないのかなって』

幼馴染「うんうん…でも、離れたくもないしね?」

カナメ『…うん』コクン



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


幼馴染「カナメちゃんも大きくなったね…人間の歳の重ねようとは違うみたいだけど」

カナメ『だって、幼馴染ちゃん達と話すようになってもう6年になるんだよ』

幼馴染「そうだね、ちゃーんと恋に悩める乙女になったね」クスッ


カナメ『解ってるんだ、別に大事にされてないわけじゃないの。でも…』

幼馴染「でも?」

カナメ『……もっと、甘えておきたいんだ』

幼馴染「甘えて『おきたい』?」



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


カナメ『まだ九月だけど、じきに10月になって…その後半くらいになると、落葉樹は眠くなって』

幼馴染「ふんふん」

カナメ『11月になると寝てる時間が長くなって、冬の間はほとんど話もできないし』

幼馴染「休眠期だもんね」


カナメ『だからボク、もっと近くにいたいのに…ケヤキは暑苦しいって』

幼馴染「ケヤキさんは硬派で照れ屋だから…」

カナメ『うん…それと──』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


……………
………


…後日、夜


ケヤキ『…もう少しだな』

カナメ『うん、もう人の形になってる』


…フワッ


カナメ『あ…動いた!?』

ケヤキ『大きい声出すな、モミジ達が寝てるんだ』


カナメ『……ちっちゃいなぁ』

ケヤキ『お前もこんなだったぞ』

カナメ『その頃はケヤキだって子供だったくせに』

ケヤキ『まあな』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


カナメ『ねえ、ケヤキ』

ケヤキ『なんだ?』


カナメ『……ケヤキはボクの生まれた時のことも、それからのことも全部知ってて』

カナメ『もちろんモミジ達も、今度はこの子のことも…そうなるんだよね』

カナメ『ボク…たまたまこの庭の中で、ケヤキといちばん歳が近かったから』


カナメ『植えられた場所も近かったから──』

ケヤキ『──カナメ、お前…明日ずっと寝とけ』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


カナメ『えっ…?』


ケヤキ『明日は男が来て、俺の木を手入れする事になってる』

カナメ『そ、それは知ってるけど…』

ケヤキ『悪いがその時、なんの相手もできねえ。だから…そうだな、夕方に作業が終わるまで』


カナメ『なんで…? だって、もう秋──』
ケヤキ『──明日だけだ、それも男が作業を終えるまでだけ。そのくらいもきけねえのか』


カナメ『……ばか』ポロッ

ケヤキ『泣くようなことかよ』

カナメ『ケヤキの馬鹿っ! ニレもどきっ!!』ダッ…



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


……………
………


…翌日


男「…あれ? カナメは?」


イロハ『寝てるよねー』

ノムラ『ねー』

男「寝てるって、もう午後も2時回ってんぞ」

幼馴染「姿消してるみたいだね…」


イロハ『怒らせたんだよねー』ヒソヒソ

ノムラ『ケヤキがねー』ヒソヒソ


ケヤキ『お前ら、うるせえぞ』ギロッ

モミジーズ『あい』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


男「幼馴染、たぶん自分の木の近くにはいるんだと思うから」

幼馴染「うん…私、傍にいてみるよ」

男「頼む。でも気分悪くなったら、家に入っとけよ」


ケヤキ『男…悪いが』

男「ああ、始めようか」カチャカチャ

ケヤキ『切りよう…剪定の仕方なんだけどよ…』

男「ん?」

ケヤキ『葉を──』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


………


…夕方


カナメ『……ごめん、幼馴染ちゃん』スゥーッ…

幼馴染「あ…カナメちゃん、おはよう」

カナメ『ずっと傍にいてくれてありがとうね』


幼馴染「…今日は寂しかったよね」

カナメ『もういいの、ケヤキはいつもあんな感じだったもん』

幼馴染「素直じゃないだけだよ」

カナメ『……わかんない』

幼馴染「わかるよ」



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


カナメ『わかんないよ』グスッ

幼馴染「……カナメちゃん」

カナメ『大事に想ってるなんて、伝えてくれなきゃわかんないよっ!』ポロッ…


幼馴染「伝えてくれるよ」

カナメ『え…?』


男「幼馴染ー、終わったぞー。カナメ起きたかー?」



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


幼馴染「ほら、カナメちゃん」

カナメ『………』グスン

男「なに泣いてんだよ、カナメ。ほら、ケヤキ…見違えるだろ?」


ケヤキ『…笑うんじゃねえぞ』ポリポリ

カナメ『笑うって……えっ? ……えぇっ!?』

男「涼しくなってからってのも変だけどな、まあ似合ってんじゃないか?」クックッ…

ケヤキ『うるせえよ』キッ


イロハ『松ジイがいたら「ケヤキ坊主」って言うよねー』

ノムラ『ねー』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


カナメ『ケヤキ…その頭…なんで人間のスポーツ刈りみたいになってんの!?』

ケヤキ『……悪いかよ』

カナメ『えと…あの…似合ってる…と思う…けど』

ケヤキ『髪の長さは枝の長さだからな…今回思い切って切ってもらったんだよ』チッ


カナメ『でも、どうして──』

ケヤキ『──カナメ』ギュッ


カナメ『ふぇっ!? ケ、ケヤキ…!?』ドキッ

イロハ『ハグしたねー』

ノムラ『あっちいねー』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


男「夏の西日で焼けた葉はおおかた無くなったし、幹のひびもだいぶ熊手で掻いて落としたぜ」

幼馴染「ふふっ…意外とケヤキさんそういうところ気にするんだね」


ケヤキ『落葉樹は仕方ねえんだ、葉は一年で使い捨てだからよ』

カナメ『ケヤキ…』

ケヤキ『葉が焼けりゃ髪はゴワゴワになるし、幹がひび割れれば肌がガサガサになる』

男「特にケヤキはな、そもそも幹が割れやすいから」


ケヤキ『そんな状態で、お前とくっつくなんて…できるかよ』スリスリ

カナメ『うぅ…そんならそうと…』ウルウル



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


イロハ『ちびちゃん、動いた!』

ノムラ『立った! 立った!』


カナメ『えっ!?』


幼馴染「すごい…もう二歳くらいの姿してる…」

ケヤキ『精として生まれてからは、もうその位になる…姿を固定する力が整ったのが今ってだけだ』

男「もう喋れたりすんのか」

カナメ『モミジ達は生まれた時から片言で喋ってたけど…』


チビ桜『…あぅ、あー』ヨチヨチ



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


チビ桜『ぱ…ぁぱ』

ケヤキ『ん?』


チビ桜『まーまーぁ』ニパッ

カナメ『へ?』


イロハ『怖いパパだねー』

ノムラ『泣き虫のママだねー』

男「お…これは…」ニヤッ

幼馴染「僅かに先を越された…かな?」クスクス


ケヤキ『俺が…パパだと…』テレテレ

カナメ『はぅ…ママかぁ…』ホクホク



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


カナメ『…ケヤキ、ごめんね』

ケヤキ『あ?』


カナメ『ボク…ケヤキにとって、モミジ達やこの子と自分の関係の違いがわからなかった』

ケヤキ『カナメ…』

カナメ『たまたま歳や場所が近かったからこういう仲になっただけで、ボクじゃなくてもよかったんじゃないか…って』


チビ桜『まぁまっ』

カナメ『よちよちー、はじめましてだねー』ニコニコ


ケヤキ『カナメ…知ってると思うが、桜は冬も花芽があるからよ』

カナメ『うん、完全には眠らないよね』

ケヤキ『俺だって完全に寝てるわけじゃねえよ、一応春に芽吹く新芽はある』

カナメ『でも芽吹くの遅いから寝てばっかじゃん。…この子は暖かい日には起きて、少しづつ花芽に水を送るはず』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


ケヤキ『…だから』

カナメ『解ってるってば』

ケヤキ『言わせろよ』

カナメ『……じゃあ、言ってよ』


ケヤキ『俺が休んでる間…その子を頼む』

カナメ『任せて』


チビ桜『きゃっきゃっ』


ケヤキ『俺たちの子…だからな』

カナメ『…うん』



◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2014/09/12(金) 00:00:00 ID:teiteitoutou


イロハ『私がお姉ちゃんだよねー』

ノムラ『私もお姉ちゃんだよねー』

幼馴染「うん、二人ともそうだよ?」


男「また少し、賑やかになるなー。この庭も…」

幼馴染「これからも、精が増えたりするのかな」


男「どうかな、ツツジとか植えてみるか」

幼馴染「私、紫陽花好きだなー」

男「紫陽花は落葉性だからな、冬場にずっとカナメだけじゃ大変だから」


幼馴染「そっか…そういえば今度、植木市あるって」

男「じゃあ記念樹の候補でも見に行くかー」ナデナデ

幼馴染「もう、まだ触ってもわかんないってば──」



(おわり)


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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2014/09/12(金) 15:24:16|
  2. 擬人化SS
  3. | コメント:10

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