がらくた処分場

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男「めりー釣りすまーす」幼馴染&幼友「貴様、男の皮を被ったオヤジだな!」

SSの性格的に頂戴したレス等も含めて掲載していますが、ありがたい事に非常に多くのレスを頂戴しているため、似た内容のレス(主に「てーい・とーう」)等、一部のレスは掲載を割愛させて頂いています。
名前欄が青色表記のレスが本文です。
また、赤色表記の文字は参考画像等へのリンクボタンになっています。(準備中)



649 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 11:36:01 ID:KQB.HnP6 [1/4]


…男の作業部屋


男(…あと鯛ラバの60gヘッドが20個と70gが15個、バス用ラバジの1/2オンスが10個と1/4が20…)

男(緑ラメのマニキュアが足りないかも…)ペタペタ

男(それからヘラ用の針ハズシが4本…辣韮竹材は充分あったはず)

男(今日は火曜日だから、今週の平日の内には発送したいところ)

男(来週もチヌ用ラバジとヘラ浮きのオーダーが詰まってるから…追い込まないと)

男(うへぇ…マニキュアの臭いで気持ち悪くなってきました)クラクラ

男(…でも、こないだの旅館利用でお金使ったし)

男(あ、そうだ…叔父さんの店からもバックオーダー請けてました)

男(塗装済みのヘッド、結構あったはず…あれを全部納めれば稼ぎは大きいな…)ゴソゴソ

男(今日が…10日か、大丈夫…いけそうです)



650 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 11:36:52 ID:KQB.HnP6 [2/4]


……………
………


…二週間後、昼間


幼友(…ビール、日本酒、ウイスキーと炭酸水、焼酎は…芋でいいよね)

幼友(せっかくだからロックアイスも買っとこうか)

幼友(あ、いっけない…お酒ばっかりじゃダメじゃん)

幼友(烏龍茶と…ジンジャーエールでいいか)

幼友(お兄に車出してもらっといて良かった…飲み物担当、荷物が重いわ…)

幼友(…いったん荷物を置きに帰って、それからもう一度ひとりで出ようかな)

幼友(あれこれ迷う買い物なんか、お兄を連れてったら怒られちゃう)



651 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 11:37:26 ID:KQB.HnP6 [3/4]


………



幼馴染(二品…三品…四品、あと…そうかアレもあるから五品…)

幼馴染(出来あい物も少しは持ち寄るので、充分でしょう)

幼馴染(さて…下拵えだけしておくものから、片付けますか)

幼馴染(ふっふっふ…鶏モモは半月前から買って冷凍しておいたのです。昨日や今日に買うなんて愚かな事はしません……)

幼馴染(はわわわわ!でも解凍忘れてた…!)

幼馴染(漬け込む時間が…足りるかな…)



652 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 11:37:58 ID:KQB.HnP6 [4/4]


………



店員「いらっしゃいませー」

男「予約してた『男』です」

店員「男様…はい、ご用意できております。持ち帰り時間は何分くらいでしょうか」

男「三十分くらいです」

店員「かしこまりましたー」

男(自分でこんなところに来るのは久しぶりです)

男(…お……)

男「すみません、これも三つ…別の箱で」

店員「三つですね、かしこまりましたー」

男(…そろそろ夕方です、幼馴染を迎えに行くのは…あと一時間)

店員「ありがとうございました、お気をつけてお持ち下さい」

男(…おぉ、外…やっぱり寒いです)



653 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 11:56:41 ID:vnNv0EgQ [1/4]


……………
………


…1時間半後、幼友宅


ピーンポーン…

幼友「いらっしゃーい」ガチャッ

幼馴染「寒いです、早く入りましょう」

男「おはよおっぱい…は夜だから言えないので、何と挨拶すればいいでしょう」

幼友「普通に『今晩は』でいいんじゃないですか」

幼馴染「いいから早く入れて下さい」

男「そんな…前戯も無しに」ポッ

幼馴染「お前、外な」

男「ごめんなさい、早く入れて下さい」



654 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 11:58:16 ID:vnNv0EgQ [2/4]


幼馴染「じゃあ、台所を借ります」

幼友「どーぞー」

男「おお、愛しのコタツ!」

幼馴染「暫く寛いでて下さい」

幼友「喜んでー」

男「物を運ぶ時は言って下さい」

幼馴染「ラップやホイル、勝手に使います」

幼友「好きにして」

男「フッ…好きにされる覚悟はあるのかい、子猫ちゃん」

幼友「やーん、灯りは消してね」ポッ

幼馴染「お前、本当に外出るか」包丁キラーン

男「すみません、調子こきました」



655 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/18(水) 14:28:12 ID:pKtWxBGo [1/2]


続きはよ~はよ~



656 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 15:14:30 ID:NZofGL7M [2/2]


幼馴染に俺のブラックバスをてーいしてほしい



657 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 15:36:13 ID:TQ2cZ9rE


>>656
外道がなんだって?



658 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 18:04:48 ID:jgC5eaGE [1/2]


………



幼馴染「ではテーブルセットして下さい」

幼友「コタツだけどね」

男「隣に卓袱台を並べてお酒やトレーを置きますか」

幼馴染「コンロ、出てるでしょうか」

幼友「すたんばーい」

男「ガスも替えています」

幼馴染「ではこの鍋を温めておいて下さい」

幼友「ひゃっほーう、チーズフォンデュ」

男「これはまた、オサレなものを」

幼馴染「白ワインを多めに入れているので焦げつきにくいと思いますが、たまに底をかき混ぜてて下さい」

男「混ぜたヘラは、その後舐めても」

幼馴染「だめです」



659 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 18:06:25 ID:jgC5eaGE [2/2]


幼馴染「料理、これで全部です」

幼友「すごーい、豪勢!」

男「では、お酒を注ぎます。幼友ちゃん、スターターは?」

幼友「もちろんビールです…って、相変わらずの発泡酒ですけど」

男「ふっふっふ…買ってあるんだな、プレミアムで金色なニクい奴を」

幼友「まじですか、頂きまーす!」

男「氷水に浸けてキンキンです、ふた缶しかありませんが…」

幼馴染「じゃあ、私も最初はビールを頂きましょう」

男「……ふた缶」

幼馴染「頂きます」ニコッ



660 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 18:50:14 ID:eUYcMKQw [1/2]


幼友「…BGMはっ!?」

男&幼馴染「Xmasオムニバス、セットおっけー!」

幼友「チキンはっ!?」

男&幼馴染「骨付きホカホカ、香りよーし!」

幼友「メインディッシュはっ!?」

男&幼馴染「チーズフォンデュ、トロトロ具合絶妙!」

幼友「おつまみはっ!?」

男&幼馴染「ミモザサラダ、サーモンのマヨ焼き、何故か豚の角煮、こってり!」

幼友「部屋の飾り付けはっ!?」

男&幼馴染「片付けが面倒なだけなので、なーし!」

幼友「乾杯のお酒はっ!?」

幼馴染「プレミアムよーし!」

男「発泡酒よーし…」



661 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 18:51:01 ID:eUYcMKQw [2/2]


男「では…三人で過ごすイブに、乾杯ー!」

幼馴染「めりくり、てーい!」

幼友「はぴくり、とーう!」



662 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 19:05:47 ID:n3I0lY2M


俺「めりーてーい!」



663 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 19:09:49 ID:a4E5mS5Q [1/2]


幼馴染のプレミアムがプレミアムで男がてーいか…



664 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/18(水) 19:11:00 ID:pKtWxBGo [2/2]


俺は独りなんだが。

淋しい。



665 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 19:15:18 ID:R3E6GJsQ


>>664
・゚・(ノД`)ヽ(・ω・`)てーい



666 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 19:25:09 ID:2TkzwmFo


ははは、何を言ってんだ?

今年のクリスマスは中止だろ?



667 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 19:27:53 ID:hjf7OpKs


クリスマスはここ何年もやってないはずだが



668 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 19:34:36 ID:He2E9Nhg [1/3]


みんなすまねえ…



669 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 19:35:22 ID:He2E9Nhg [2/3]


幼友「それにしても、今年は後半からめっきり釣りにハマッちゃいましたねー」ハフハフ

男「してやったりです」グビグビ

幼馴染「思えば最初は海釣りの二日目、私が幼友との約束を忘れ掛けてたのが始まりでした」

幼友「そもそもが酷い話だわ」

男「でも二人とも釣りのセンスは良いです。…発泡酒おかわり」

幼馴染「ビギナーズラックという言葉もあります」

男「いや、釣れる釣れないだけでなく、キャストやアワセなど…なかなか思い切りがあります。初心者ならもっとおっかなびっくりなものですが」プシュ

幼友「んー、だってねー」モギュモギュ

幼馴染「男の釣竿を使っていますので」チビチビ

男「…俺が貸している道具は、そんな高級品ではないのですが」

幼友「いや、そうじゃなくて」ゴキュゴキュ

幼馴染「折れてもいい位に思って使っているのです」

男「もう貸さねえ」



670 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 19:36:01 ID:He2E9Nhg [3/3]


幼友「鶏モモにかぶりついて、ビールで流し込む…なんという幸せ」プハーッ

男「チーズフォンデュ、じゃがいもを浸けるのが抜群です」アチアチ

幼馴染「私はアスパラを浸けるのが好きです」フウフウ…パクッ

幼友「男さん、今までに釣った魚で一番でっかいのって、どんなですか?」

男「長寸で言うと…まあウナギなどは例外として、やはりシーバスの97cmになります。チューハイぷりーず」

幼馴染「それはどのくらいすごいのでしょう」

男「正直、すごくはありません。まずはメーター超え…いつかの夢は120cmです」プシュ

幼友「メチャクチャな大きさに聞こえますね」ハフハフ

男「それでもシーバスの1.2mはなんとなく納得できませんか?…むしろもっと小物の印象のある魚の記録の方が耳を疑います」ゴキュゴキュ

幼馴染「ほほう、例えば」

男「マアジの50cmオーバーとか」

幼友「まぁじぃー?」ドヤッ

幼馴染「てーい!貴様、幼友の皮を被ったオヤジだな!」



671 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 20:17:53 ID:2OnKKBWM [1/8]


幼馴染「確かにマアジのそのサイズは、スーパーに並んでいるのが想像できません」モグモグ

幼友「他には、そういう面白い記録ないんですか」

男「結構なんの魚にも記録はあるものです。…イカナゴって解るでしょうか」ハフハフ

幼友「くぎ煮の?」

男「あれ、30cmに迫ります」

幼馴染「五寸釘どころの話じゃありません」

男「それからサヨリですが」ゴキュゴキュ

幼友「口紅してるやつですよね」

男「40cm超えます」プハーッ

幼馴染「それ、サンマでしょう」



672 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 20:18:36 ID:2OnKKBWM [2/8]


男「大きさの記録も面白いですが、俺は珍しい外道が釣れるのが好きです。角煮最高」モギュモギュ

幼友「このド外道がぁっ」

幼馴染「外道というと喜ばれないイメージですが」

男「そればかりが釣れると嫌になりますが、たまに思わぬものが掛かると楽しいものです」

幼馴染「例えばどんな釣りで、どんな外道が掛かるのでしょう」

男「アジをサビキで釣っている時の小さめなカマスとか、投げ釣りでのイイダコ、大物ではサーフでのシーバスルアーにヒラメなど…これは外道と言ってはいけないレベルですが」

幼友「そういえばマダイ釣ってた時のグチやカサゴも外道だったんだよね」

男「更に珍しい外道だとノマセ釣りをしていてのマトウダイや、チヌを狙ってる時のアカエイ…これはちょっと怖いです」

幼馴染「エイって毒針があるのでしょう」チビチビ

男「刺された事は無いですが、命に関わるようです」

幼友「エイッ」ギュッ

男「はぅあっ」ムニュッ

幼馴染「ちょ、ネタで男に抱きつかないで下さい!」



673 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 21:06:52 ID:2OnKKBWM [3/8]


幼友「それでは男さんが買ってきたケーキでーす」

幼馴染「待ってました」ホクホク

男「お気に召すと良いのですが」

幼友「じゃーん」パカッ

幼馴染「ブッシュドノエルです、実に甘美なオーラを放っています」キラキラ

男「切り分けましょう…俺は小さめでいいです」

幼友「私、このチョコの葉っぱがのってるところがいーなー」

幼馴染「残ったところでいいから、大きく!」

男「甘い物にはウイスキーです」

幼友「ロックアイスありますよー」

男「素晴らしい…銘柄は何でしょう」

幼友「だるまです」

男「日本人ですね、ロックでお願いします」



674 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 21:07:56 ID:2OnKKBWM [4/8]


幼馴染「甘ーい…幸せ…」トローン

幼友「チョコと洋酒って合いますよねえ」コクッ、カラカラ…

男「同感です、俺は饅頭とビールでも飲める人間ですが」

幼馴染「贅沢だと思うのですが、甘いクリームのケーキを食べると香ばしいチーズケーキが恋しくなります」

男「いつもそう聞いているので、そっちに小箱があるのです」

幼友「開けるよ……うわ、プチサイズのベイクドチーズケーキ」

男「いい色だったので」

幼友「さすがですな、男さん」

幼馴染「一生ついていきます…」



675 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 21:15:09 ID:2OnKKBWM [5/8]


幼友「プレゼント交換ー」パチパチパチ

幼馴染「交換ー」パフパフー

幼友「この小さめな箱が男さんからのですね」

幼馴染「小さい方が期待度は高い!」

男「貴金属ではないです、念のため」

幼馴染「開けます」ピリッ

幼友「………」ドキドキ

男「気に入って貰えるといいのですが」

幼馴染「これは…」

幼友「白のBaby-G、文字盤可愛い…!」

男「釣りに行く時に気兼ねなく着けられると思いまして」

幼馴染「…正直、何か釣り具だろうと思っていました」

幼友「幼馴染ちゃんとお揃い、嬉しいですよー」

男「ちなみにお揃いというわけではありませんが、俺のG-SHOCKも似てます」



676 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 21:16:14 ID:2OnKKBWM [6/8]


男「では、幼馴染のを…この袋が俺のですか」

幼友「私のは箱に入ってる」

幼馴染「すみません、私は収入が無いのでお金のかかったものではありません…」

幼友「あ、可愛い。トンボ玉のネックレス…もしかして」

幼馴染「手作りです。箱は100均ですが」

幼友「ありがと…着けてみよ、似合うかな?」

男「今日の服とも合ってて、幼友ちゃんの可愛さが引き立ちます」

幼友「かっ…」ボッ

幼馴染(……?)

男「うーん、綺麗なトンボ玉です」シゲシゲ

幼馴染「…男、トンボ玉のトップを見るふりして谷間を凝視してませんか」

男「めめめ滅相もない」ギクゥッ

幼友(可愛い…かあ…)ドキドキ



677 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 21:16:59 ID:bYTZwnbc


よろしい、戦争だ(#^ω^)ビキビキ



678 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 21:18:01 ID:2OnKKBWM [7/8]


男「俺の方は…」シュルッ、ガサガサ…

幼馴染「うう…自信ないです」

男「ニットキャップ…とネックウォーマー、もしかしてこれも」

幼友「手編みだねー、妬けるねー」

幼馴染「…夜釣りに使ってもらえるかと」

男「嬉しいです。…被ってみます」スポッ…パフッ

幼友「色もベースは黒で落ち着いてるから、オトコの人でも…似合……う……」プッ

幼馴染「とても良く似合ってます。柔らかい毛糸を使ったのでチクチクしないと思うのですが」

男「耳あてからポンポンが垂れててちょっと可愛いですね」テレッ

幼友(猫耳がついてる…気付いてない…)ププッ

幼馴染「男、にゃーって言ってみて下さい」

男「にゃー?」

幼友「ヤバイ、萌える」ズキューン

幼馴染「気に入って貰えて良かったです」



680 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 21:27:57 ID:2OnKKBWM [8/8]


幼馴染「じゃあ幼友のを開けてみます」

男「けっこう重さのある箱です」パカッ

幼友「えへへー、シブ可愛いでしょ」

幼馴染「焼き物のマグカップ…いい色です、すごく味があります」

男「俺のは同じ焼き物のビアジョッキです、これは嬉しい…素焼きですね」

幼友「そんなに高いやつじゃないんですけどねー。細かい泡が出来てビールが美味しいですよ」

幼馴染「丸っこい葉っぱの型押しがしてあって可愛いです」

幼友「それ、ミモザの葉っぱとフワフワ模様のところが花だって。私も同じビアマグ買ってるんだ」

男「早速、ビールを注いでみるしかありません」

幼馴染「私も、烏龍茶だけどこれで飲みます」

幼友「ミモザの花言葉は『友情』なんだって。そういえば偶然このサラダもミモザだね」

男「ぷはーっ、本当に泡がクリーミーで…こりゃはかどります」

幼馴染「『友情』…三人にぴったりな花言葉です」

幼友「……うん」



681 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 21:41:31 ID:cI0aWhY.


はやく幼友にも良い人を見つけてあげて(´Д`)







俺みたいな( ・´ー・`)



682 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 22:03:14 ID:zScx1H5Y


下心なしに、幼友と友達になって酒飲みたい



683 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 22:06:41 ID:.D0jK26A


>>681
よう!呑めなくて空気読めないチャラ男じゃん
こんな所でどしたの?



686 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 22:55:03 ID:/BzL4026


男「ふう…良いクリスマスでした」

幼馴染「イブでしょう。では、幼友…おやすみなさい」

幼友「ちょっと待った」

男&幼馴染「…はい?」

幼友「今夜は幼馴染ちゃん、私の部屋ね」

男「おおう…そんな展開が、こういうNTRも…ちょっと複雑ですが…無しでもない…いやしかし…」

幼友「何を考えてんですか、そうじゃなくてアナタ達には私を寝不足にした前科がありますからね」

幼馴染「もう懲りてます…けど、たまには女同士のパジャマパーティーも悪くないかもしれません」

男「おやおや…仲間外れですか」

幼友「それとも」

男&幼馴染「…はい?」

幼友「…三人で、寝ます?」



687 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 23:09:48 ID:cq1BmrHc


  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /



688 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 23:23:35 ID:RSsoo7fA


幼馴染「え、ええと…それは」

幼友「だって、旅館でもそうだったし」

男「なんとなく違う気がします」

幼友「三人、川の字になって」

幼馴染「旅館では私が真ん中でした」

幼友「…今日は誰が真ん中になります?」

男「…おや?」

幼馴染「お、幼友…」


幼友「……冗談、ですよ?」ニコッ


男「ですよねー」

幼馴染「………」

幼友「独り寂しく…おやすみなさい、男さん。残念でしたー」



689 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 23:28:59 ID:f4ECZYLg


陶器ビアジョッキに発泡酒注ぐと
泡立ち過ぎて不味い
まめな



690 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/18(水) 23:33:25 ID:3Dc8d6GE


………


…真夜中


幼友「すぴーすぴー」

幼馴染「………」

…ピッ

《検索:ミモザ 花言葉》

ピッ…

《1:友情》






























《2:密かな愛》



691 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 23:35:03 ID:UWX1o4/2


>>689
よくジョッキ冷やしてみ



692 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 23:44:56 ID:sWuQFdC.


………


…翌朝


幼友「おっはよーう」

幼馴染「おはようございます」

男「ふぁ…おはよ…」

幼友「眠そうですね?」

幼馴染「おかしい…男が『おはよおっぱい』を言わないとは…」

男「…ちょっと寝付けなくて」

幼友「あれあれー?本当に寂しかったんですかー?」

男(…まさかを期待して、壁に耳をつけてたとは言えません)



695 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/19(木) 00:38:21 ID:qTeC6Vpw


幼馴染「では、幼友…お邪魔しました」

幼友「うん、楽しかったよ。さすがに次に会うのは年が明けてからかな?」

男「初詣も三人で行きますか?」

幼友「ううん…いい加減、二人の邪魔ばっかりはできないよ。…ってか、イブも二人きりじゃなくて良かったの?」

男「俺は良い飲み相手ができて嬉しいです」

幼馴染「私も、三人が良かったので」

幼友「…三人が?」

幼馴染「幼友に彼氏が出来たら、こうはいかなくなるかもしれませんから」

幼友「…ん、そうだね…」

男「では、良いお年を」

幼友「はーい、そちらもねー」



幼友(…ちょっと、勘付かれた…かな?)



《クリスマス閑話、おしまい》



*続いて、年越し閑話です*



701 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/19(木) 18:59:39 ID:zTKyG83A


………


…夜の貨物港


幼馴染「今、ぎょぎょライトが揺れませんでしたか?」

男「…あのカドの無い揺れは、たぶん波のせいです」

幼友「気になるんなら、見に行ってみれば?」

幼馴染「…いいです、きっと波です」

男「実に怠け者の釣り方ですが、冬場の夜はこうしてチョイ投げしておいて車内待機というのが最高です」

幼友「ヒーターが効いてればもっといいんですけどね」

男「お財布のためにも環境のためにも、エンジン掛けっぱなしはダメですので」

幼馴染「寒い中で毛布に包まるのも幸せです」



702 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/19(木) 19:00:13 ID:zTKyG83A


幼友「…そろそろBGMが一曲終わりますね」

男「じゃん」

幼馴染「けん」

幼友「とーう」

幼馴染「…負けた」

男「ちょうど一曲終わりました、行ってらっしゃい」

幼友「寒いからドアは素早く閉めてね」

幼馴染「くっ…行ってきます」ガチャッ……バタン

幼友「左の竿は…まだエサ、あったみたいですね」

…テーイ!



703 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/19(木) 19:00:44 ID:zTKyG83A


男「真ん中の竿…ああ、あれはつけ替えないと」

…エサ カエナキャ…テガツメタイデス…

…テーイ!

男「…右は…大丈夫みたいです」

…テーイ!

ガチャッ…

幼馴染「寒いっ!死ぬーっ!」…バタン

幼友「ご苦労さまー、はい…魔法瓶のコーヒー注いどいたよ」

幼馴染「あああああああったかいいいいい…」カタカタカタカタ

男「では、BGMチェンジします。…これが終わったらまた上げてみましょう」

幼馴染「次は負けてなるものか…」

幼友「ふっふっふ…ここんとこ五回連続で負けてないぞー」



704 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/19(木) 22:24:37 ID:ge47jlUo


何釣りかな



705 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/20(金) 00:14:13 ID:36y9T4CQ


昔は竿の先に鈴付けてやってたなー



706 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/20(金) 06:25:26 ID:b44Evsng



太刀魚かな?



707 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/20(金) 12:42:56 ID:ukkVjXr2


幼馴染が竿を確認に行って
幼友はなにもしてないの?



708 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/20(金) 12:51:41 ID:KpgJaOfY


幼馴染「ん?…今度こそ左の竿がアタッたような」

男「今のは間違いないです」

幼友「行かなくていいの?」

男「左の竿はサンマの切り身をつけたアナゴ専用なので、少し食い込ませた方がいいです。待ち過ぎると仕掛けが滅茶苦茶になりますが」

幼友「左の竿担当は…」

幼馴染「私…です」

男「お、また揺れました。順調に食い込んでいるようです。そろそろ行って、次にまた竿先が揺れたら手応えだけ確認してアワセて下さい」

幼友「行ってらー」

幼馴染「また冷え冷えになってきます…」ガチャッ……バタン



709 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/20(金) 12:52:26 ID:.eA8RbR6


アッ…アタッタ…
ソーット、ソーット…

男「さて、ノるでしょうか…」

幼友「どうかなー?」

…テーイ!

幼友「アワセたー!」

男「BGM、チェーンジ!」ピッ

《ダンスッ!…ブーギー ワンダァラーンッ…ハッ…ハッ…ダンスッ!》

幼友「釣り番組みたーい」ケラケラ

《…ブーギー ワンダァラアアアアァァァァンッ!》

男「うーん…ちょっと選曲、違ったかもしれません…」



710 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/20(金) 12:53:04 ID:.eA8RbR6


ウンショッ、ヨイショッ…
…ツレター!アナゴデスー!

男「おお、まあまあの太さです」

幼友「ちゃんと外せるのかなー」

イヤー!テニマキツイター!
ギャー!カマレター!
イタイー!キモチワルイー!

幼友「…行ってあげた方がいいんじゃないですか」

男「修行です」

テガヌルヌルシマス…
アラワナキャ…ツメタイ ダロウナァ…
……ヒイイイィィィィッ!ユビガシヌーッ!

幼友「冷たいぞー、あれ。…ああ、コーヒー美味い」ヌクヌク

男「修行です。…毛布ぬくい」ホカホカ



711 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/20(金) 12:54:19 ID:.eA8RbR6

>>705
あれも風流よね、あったかい時期は

>>707
ジャンケンで負けたからね



712 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/20(金) 13:02:53 ID:GNAzGaqU


修行だからな



721 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 08:58:31 ID:pMbyMIAs


東北大震災の前の年。今頃。
鼻水をススリながらアイナメを釣りに。。。

今だ、海が怖くて釣りに行けません。
暗い話題スマン。



722 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/21(土) 13:31:57 ID:Xu9HyYOk


何もできないけど、少しでも傷が癒えてまた海辺に立てる事を祈る
それまでは淡水いっちゃおうぜ!狙え、タキタロウ!



723 :うにゃ:2013/12/21(土) 13:40:42 ID:XhmeVPZk


>>395>>433>>453>>607です

いつの間にやらブラックバス編が完結してた^^

番外編(?)2の年末年始(?)編も続けて4円するぜ

Love is Some All

今日もいい日だっ!! ばいちっ!!



724 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 13:41:11 ID:dSteCwIM


イトウなんかもお願いしたいです



725 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/21(土) 13:43:54 ID:FYTRDyvA


イトウなんか釣った事ねえええ
ネットで拾った知識でしか書けないだろうから、どうかな…



728 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 15:29:15 ID:ttj1u1GI


このSS見て、久々にMr.釣りどれん引っ張り出して読破したわ。
ワカサギのムーチングとか見てみたい



729 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 15:55:11 ID:GluQcVPE


氷上のワカサギ釣りも見たいな



730 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 16:31:04 ID:Etfhfd4M


しえんしえん



731 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 18:08:42 ID:7zA/IZNQ


男と幼馴染の娘が、幼友の息子と結婚・出産して、大家族での釣り大会を暖かく見守りながら、男が幼馴染の膝の上で天に召されるまで連載は続くよ!



732 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/21(土) 18:13:11 ID:YPbuq3PY


夢は膨らむねー(遠い目)



733 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 18:46:18 ID:MBLffkE2


「胸も膨らむねー」

「くっ」



734 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 19:20:13 ID:7rIgkoAA


幼友=顔が可愛くて胸が大きい!

幼馴染=胸が可愛くて顔が大きい!



735 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/21(土) 19:33:15 ID:LPzWdBdk


>>734
てーい( ゚∀゚)=○)`Д゚)<・;'



736 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/22(日) 13:06:15 ID:BXT8XNC.


淡々も終わってしもうた。

はよ はよ書いてや〜



737 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/22(日) 13:16:01 ID:9UOIYPCE


>>734

せめて
幼馴染=胸も顔もかわいいとかにしとけよ



738 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/22(日) 13:35:13 ID:2SlA5.5A


>>734
ミスチルのOverかな?(白目)



740 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/22(日) 16:12:11 ID:BXT8XNC.


>>739
淡々シリーズも面白かったけど
てーいとーうもすごく良いがな。
きばってや。(激励)



741 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/22(日) 16:28:06 ID:fhLWqBd.


>>740 押忍!



743 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/23(月) 13:28:53 ID:7UgcqmFE


幼馴染「また一曲、終わりそうです」

男「ではでは、じゃん」

幼友「けん」

幼馴染「てーい」

男「くっ…負けました」ガクッ

幼友「あれ?…タイミング良くアタッてませんか?右の竿…」

幼馴染「右の竿はそもそも男が担当だったはずです。一度で済んでよかったと思って下さい」

男「よし、行ってきます」ガチャッ……バタン

幼馴染「右の竿は普通にイソメをつけています」

幼友「さーて、何が釣れますかねー」


…アタッテル、アタッテルー
イキマース…
…ヨイショーッ!


幼馴染「けっこう引きが強いようです」



744 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/23(月) 13:29:28 ID:7UgcqmFE


幼友「お、上げたよ…なんだろう、あの魚」

幼馴染「うーん、見たことはあるような気がします」


…オッケーイ、ナイス フィーッシュ!
ツギモ ツレテコイヨ…
テーイ!

ホカノモ テーイ!テーイ!


幼友「さすが、魚外すのもエサつけるのも早いねー」


…ギャアアアァァァ!
テヲ アラウノガホントニ ツメタイイイィィィ!

ガチャッ…


男「た、ただいまーっ!エンジン&ヒーターONっ!」バタムッ、ズキュキュッ…ブロロォンッ

幼馴染「あ、ずるい!エコじゃないです!」

男「だまらっしゃい!」

幼友「今の、何の魚だったの?」

男「アイナメでした、色が黒っぽかったのでクジメかと思いましたが」

幼馴染「相舐め…」キャッ



745 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/23(月) 13:34:20 ID:9Vgh4Mv6


幼友「クジメっていうのは?」

男「アイナメのそっくりさんですが、味やサイズは劣ります」

幼馴染「マハゼとウロハゼのようなものですか」

男「アイナメは尾鰭に切れ込みが入る事が多いのですが、クジメは扇形になっている個体が多いです」

幼友「多い…って事は、そうとは限らないの?」

男「その点や色味だけで見極めようとすると、どっちとも言いにくい微妙な個体がいます。確実に見分けるポイントは側線です」

幼馴染「そくせん?」

男「魚にとって重要な感覚器官で、多くの魚の身体側面に走るラインです。これがアイナメは5本あります」

幼友「あー、あのアジの稜鱗に続くところですか」

男「5本…といっても、一本を除いては退化して機能は失われているらしいのですが。見分けのポイントとしては確実です」



746 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/23(月) 13:34:52 ID:9Vgh4Mv6


幼馴染「どうして色んな魚で、そっくりさんは味が劣るのでしょう」

男「それは単に一番美味しい魚を本物扱いしているだけだと思います。先ほどのマハゼとウロハゼ、マサバとゴマサバ、マイワシとカタクチイワシなど、どれも人間が勝手に『真』などという文字をあてているのでしょうから」

幼友「うーん、偽物扱いされてる種類がちょっと可哀想だなー」

男「中にはマガレイとマコガレイのように、そっくりさんでも甲乙つけ難く扱われているものや、ホンベラとキュウセンのように『本』がつく方が美味しくないものもいます」

幼馴染「ベラについては偽物以上に可哀想な気がします」

男「なかなか釣りに挑める魚ではありませんが、マカジキよりもクロカジキの方が大型化すると言われ、カジキの王様とも呼ばれます」

幼馴染「青カジキは?」

男「青カジキ…?」

幼馴染「マツカタが釣っていました」

男「ああ…ブルーマーリンですか、それがクロカジキです」

幼友「黒か青かハッキリしやがれ!」

男「生きている間は青っぽいのですが、死ぬと黒くなるそうです。許してあげましょう」



747 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/23(月) 13:49:53 ID:cBRPv7Fs


それを言ったらブラックマーリンなんて標準和名シロカジキだしなw



748 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/23(月) 14:41:29 ID:JjffqKaA


いつも楽しみにしています!とーう!



749 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/23(月) 15:25:35 ID:.afjGAWY


ぜんぶまとめに載ってるし、クオリティは下がってないと思う
どんどん続けてください
別の幼馴染モノも見たいけど



750 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/23(月) 16:18:02 ID:D0VDvL4E


ていてーい



756 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/23(月) 18:06:17 ID:M6RLxj8Q


幼友「じゃん」

幼馴染「けん」

男「ぐー!」チョキー

幼友「なあぁぁっ!?グーって言ったじゃないですかー!」パー

男「別に最初はグーでチョキを出したわけじゃないでしょう」

幼馴染「一人じゃないだけマシです、潔く負けを認めましょう…」パー

男「行ってらっしゃい」フリフリフリ

幼馴染「行ってきます」

幼友「納得いかないけど、行ってきますよーだ」ガチャッ……バタン



757 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/23(月) 18:06:57 ID:M6RLxj8Q


男(さてさて、竿先にアタリは出ていませんでしたが)


ヨイショ、ヨイショ…
アレ…?ナントナク ツンツン スルヨウナ…


男(おや?…小さいのが掛かった…?)


キノセイダッテバ!カンチガイ シナイデヨネッ!
ソノ ネタ ツカイスギデス…


男(幼友ちゃんの竿に何かついているようです…)


アッ、カサゴダー!
チッチャクテ カワイイデス!


男(……ん…!?)ガチャッ!



758 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/23(月) 18:07:31 ID:M6RLxj8Q


男「触るなっ!二人とも!」

幼友「えっ!?」

幼馴染「びっくりした…男のこの焦りようはゴンズイの時と同じです」

男「夜釣りだと小さなカサゴと間違いやすいですが、それはハオコゼ。触ると洒落にならないくらい痛いです」

幼友「ひええぇぇ…」

幼馴染「男は触った事が?」

男「気付かずに触った事が二度、気をつけて外そうとしていて一度…見事にやられました」

幼友「見た目はちょっとキモ可愛い感じなのにー」

男「これも波止の釣りでは仕方なく釣れてしまう税金のようなもの。決して触らずにポイです」ポイッ



759 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/23(月) 20:28:36 ID:LCPzcI0E


ミノカサゴかと思った



760 :うにゃ:2013/12/23(月) 22:59:23 ID:.C7kZkpw


関西ではカサゴをガシラ、ハオコゼをエセ(似非)ガシラとも言います
エセガシラは毒魚として有名です

ここでは只の毒魚扱いされたゴンズイは身が美味しいので
毒ヒレ周辺を切り取って、持って帰る方もいますよ
ってか、堤防釣りの狙う対象として本に載ってたりしますwww

男と幼馴染と幼友の3人にいい結末が訪れるように4円します



762 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 04:36:59 ID:EnsF/2Xc


期待



770 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 17:08:22 ID:J57Rjk6.


メリークリスマス

おいらは独りだし。寒いばっかだ。
男はいいよな。幼馴染がいて。
早々と飲んで寝るか。

ちょ 寂しい。



771 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/24(火) 23:11:38 ID:jG.vJNd6


めりくりー
どうせ寒いなら釣りもいいと思うんだ



777 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/25(水) 11:05:56 ID:hL.SLRv6


男「じゃん」

幼馴染「けん」

幼友「とととーう!」チョキー

男「フェイントだめです」チョキー

幼馴染「また負けたー!?」パー

幼友「行ってこーい」

男「ハオコゼには気をつけて」

幼馴染「…行ってきます」ハァ

ガチャッ……バタン

幼友「ふっふっふ、これも修行ぢゃ」

男「今のところ何もアタッてはいませんでしたが」



778 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/25(水) 11:06:42 ID:hL.SLRv6


アタリナーシ!エサヨーシ!
…テーイ!


幼友「右と真ん中はエサ、大丈夫だったみたいですね」

男「左のアナゴ用は切り身エサなのでハオコゼが来る事は無いでしょう。心配なのが来るとしたら…」

ナーンカ チョット オモイ ヨウナ…
デモ アバレナイカラ キノセイデス

幼友「…ん?何かついてません?」

アレ…ナンデショウ?コレ…

男「うわー、本当に釣れてしまいましたか。あれも触るとヤバイです」

幼友「え…!?じゃあ、早く教えないと!」

男「いや、焦らなくても…」

…ヒギャアアアァァァ!!
ウニウニシテマス!キモチワルイー!
タスケテエエェェェ!!

男「…見た目からして、絶対触ろうとは思わないはずですので」ヤレヤレ



779 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/25(水) 11:08:29 ID:hL.SLRv6


さて何が釣れたでしょう

違う地方には知らないUMAがいるのかもしれないけど、自分的には五文字で呼ばれるアレのつもり



780 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 11:13:54 ID:vXeimm3k


アロワナかな



781 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 11:36:04 ID:W6gopHGM


あめふらし



782 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 11:46:52 ID:fWvAhv5Q


あおりいか ですな。

あれ?前作であおりいかはもう釣ったか?



783 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 11:59:26 ID:5aLJYUsM


すいしたい



784 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 12:42:54 ID:lPQFwQ2Y


だい王イカ



785 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/25(水) 12:49:25 ID:ylpSefoc


男「触らないと思うけど、触らないで下さい。それも刺します」

幼馴染「誰が触るかあああぁぁぁ!」ガタガタ

幼友「これは凄まじい見た目だねー」

男「ウミケムシという生き物で、こうして投げっぱなしにしていると度々釣れる厄介なヤツです」

幼馴染「度々…勘弁してほしいです」

男「ちなみに今夜は冬にしては珍しく夜光虫がよく出ているようなので、針を外すためにこれをペンチで押さえたりすると…」ギュッ

虫「オエッ」ブシャッ

男「…このように光る液体を撒き散らす、まさにクリーチャーと呼ぶに相応しい状態になります」

幼馴染&幼友「ぎゃああああぁぁぁぁ!!!」



786 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/25(水) 12:53:29 ID:j6HvmGMA


>>780 海だっつーに

>>781 それでもよかったかもしれん、あれの液くさいもんな

>>782 海釣り編で釣った、今の幼馴染はアオリイカくらいじゃ驚かないぜ…

>>783 それのどのへんで何がうにうにしてんだ…

>>784 幼馴染強すぎ



787 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 13:23:53 ID:fWvAhv5Q


>>786
なんですか?これ~
ゴカイの仲間ですかね。気色悪いやつですね~
これ、大量発生したら。。



788 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/25(水) 13:32:27 ID:cAgi54c6


多毛類なのでゴカイの仲間というのは正解
ちなみに10センチくらいある

こればっかりが大漁の時は、まじで心が折れそうになるよ



789 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 14:16:13 ID:fWvAhv5Q


>>788
東北には、こんなのいませんね。

>>1さんが書いた餌のまむしの事を岩ゴカイって呼ぶし。
じちゃんは岩ゴカイの事をマエバって呼びます。
色々呼称があって面白いですね。



790 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 14:28:27 ID:UFrDd3w6


>>785
ぎゃー!◆M7hSLIKnTはん!なんてもの見せてくれるんや!



791 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 17:04:01 ID:FzzmxjYk


支援
久々に良作みつけたわ



792 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 19:44:19 ID:cuublMj.


淡々との方は熟練の渋みみたいのがあったけど、こっちは軽快で読み口がいいね



793 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/25(水) 23:01:20 ID:/zhA8O0g


はよ



810 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/27(金) 18:35:05 ID:JOCIR3Gc


幼友「それにしても…クリスマス以降、また年内に会うとは思わなかったなぁ」

男「急に誘ってすみません」

幼友「そんなのいいんです、予定は無かったから。ただ、ちょっと二人の邪魔をしすぎかな…って」

幼馴染「自覚はあるのですか」

幼友「てめえ」

男「俺と幼馴染は本当にごく近所なので、釣り以外でもしょっちゅう会っています」

幼友「例えば?」

男「幼馴染がスーパーに牛乳買いにいくから着いてこいとか」

幼馴染「男がファミチキ買いにいくから着いてこいとか」

男「親父の車にガソリン入れに行くから横に乗れと言ってみたり」

幼馴染「そのままブラブラして、せっかく給油したガソリンをまた消費したり」

幼友「てゆーか、普通のデートとかしないんですか?」

男「……あぁ」

幼馴染「……おぉ」

幼友「何、その『そういえば』っていうリアクション」



811 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/27(金) 18:35:59 ID:JOCIR3Gc


男「確かにそれらしい事をする機会はあまり設けていませんでした」

幼馴染「最後に映画を見に行ったのが二年前です」

男「そもそも町に出る事自体、ほとんどありません」

幼馴染「逆に海とか山とかばかり好んで訪れています」

幼友「あらあら…そんなだとマンネリ化しちゃって、早々に冷えちゃうんじゃないのかなー?」

幼馴染「なっ…!そ、そんな事には…なりま…せん……?」

男「俺はなりません」

幼友「でも、幼馴染ちゃんはどうなのかな?本当は釣り以外のデートとかもして欲しいんじゃないの?」

幼馴染「……まあ、否定はしません」チラッ



812 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/27(金) 18:36:58 ID:JOCIR3Gc


幼友「ちょっとはお洒落な店に食事に行ったり」

男「ほほう」

幼友「何を買うでもなく腕組んでモールを歩いたり」

幼馴染「………」キラキラ

幼友「この時期だからイルミネーションの歩道で、肩寄せながら寒さを凌いで」

男「ふむふむ」

幼友「それで男さんが『今夜はホテルに部屋をとってるんだ』…って」

幼馴染「………」ウットリ

幼友「たまにはそんなのも、必要なんじゃない?」

男「なるほど…わかりました」

幼馴染「え…」ドキッ

幼友「おっ」



813 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/27(金) 18:37:42 ID:JOCIR3Gc


男「じゃあ今度、駅前に買い物に出て」

幼馴染「お、男…」ドキドキ

男「イタリアンでも食べて」

幼友「うんうん」

男「宿泊はしなくても、ホテルの展望バーから夜景でも楽しみましょう」

幼馴染「…はい」ニヘラ

幼友「いいじゃん、やったね」

男「…三人で」

幼馴染「てーい」スパーン
幼友「とーう」スパパーン

男「はぅあ」



814 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/27(金) 19:24:19 ID:cjZTVZdM


東北 仙台 光のページェントが始まりました。

是非、男と幼馴染と幼友と来て下さい。



815 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/27(金) 22:32:29 ID:WS3MKcWM


ちょっと幼馴染に会いにファミマ行ってくる



816 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/27(金) 23:12:04 ID:XSWySqGg


幼友のスパパーンは音的に二発…つまり乳ビン(ry



817 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/27(金) 23:26:49 ID:RgXkq8aE


乳ビン…の SE ってもっと可愛いと思うんだ
幼友のはこう、マリオRPGのピーチのアクションコマンド的な



818 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/28(土) 00:29:40 ID:j76JBg7k


アクションコマンドでビンタといえば、マリオストーリーのレサレサビンタ
あれは五発だったっけ



827 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/29(日) 11:03:16 ID:xH4AUM6.


おい、男!!
お前は甲斐性があるのか、ないのかどっちなんだ!?
折角のデートでも3人でってwww
甲斐性無いなら幼友が可哀そうだ><

ではでは



831 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/30(月) 18:28:00 ID:mUsufWXI


幼友「今、何時ですかー?」

男「もう11時半を回ったところです」

幼馴染「今年もあと僅かです」

幼友「こんな風に年を越すのは初めてだなぁ」

男「あ、そうでした…ちょっと待ってて下さい」ガチャッ…バタンッ

幼馴染「はい?」

幼友「なんかトランクの方でゴソゴソやってるよ?」

幼馴染「あ…真ん中の竿がアタリました」

幼友「ここは私達でなんとかするしかないね!いくよ、幼馴染ちゃん!」

幼馴染「行ってらっしゃい!」

幼友「とーう!貴様も来いっ!」



832 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/30(月) 18:28:45 ID:mUsufWXI


幼友「そーっと……おぉ、いるいる…ぴくんぴくんしてるよ」

幼馴染「なんかエロい」

幼友「いくぞー、せーの……とーう!」ビシィッ

幼馴染「けっこう竿が曲がっています、重いのでしょうか」

幼友「うん、なかなかいい手応え…!」

幼馴染「浮いてきました……確かに大きそうです。抜き上げられますか?」

幼友「うん……どうせタモは届かないし、一気に上げてみる!」

幼馴染「ぐっどらっく!」

幼友「…とーうっ!」バシャアッ…ビチビチッ



833 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/30(月) 18:29:19 ID:mUsufWXI


幼馴染「釣れたー!男、釣れました!カサゴのお化けです!」

男「カサゴのお化け…?」

幼友「なんか虫刺されみたいな模様がいっぱいあって、ちょっと気持ち悪いなぁ…」

男「ああ、たぶんアコウです。いいものを釣りましたね」

幼馴染「いいものなのですか」

男「正しくはキジハタと言い、高級魚ハタの仲間の中では最も身近ではありますが、味は素晴らしい魚です」

幼友「ひゃっほーい」

男「関東ではアコウと言えばアコウダイの事らしいのですが、ここらへんではソイツの事を指します。鍋物に抜群ですので、またお酒が捗りそうです」

幼友「お付き合いしまーす」

男「いえっさー」



834 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/30(月) 18:29:50 ID:mUsufWXI


幼馴染「ところで男はさっきから何をしているのでしょう」

男「あ、ちょうど五分経ちました……どうぞ」

幼友「おー、どん兵衛のお蕎麦だ」

幼馴染「年越し蕎麦代わりですか」

男「普段は美味しいものでなくとも、寒い夜の海際ですするカップ麺は格別の味です」

幼友「なるほど、じゃあ…問題は」

幼馴染「これがどん兵衛の、お蕎麦だという事です」

男「……それが何か?」

幼友「うどんは五分だけど」

幼馴染「蕎麦は三分です」

男「動揺を隠し切れません」



835 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/30(月) 18:32:13 ID:9MvyLkRg


馬鹿野郎、蕎麦は2分30秒だ



836 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/30(月) 19:53:57 ID:/PJTBLqE


天ぷらはべちゃってまずいので
きつねそばを探すがみつからない



837 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/30(月) 22:38:41 ID:sz/vqCU.


>>836天ぷら出してからお湯入れろよ…



838 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/30(月) 22:39:53 ID:2mE.l1tk


わかる
おれもきつねが好きでそばが大好きだから狐そばを探しているんだが見つからない



839 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/31(火) 22:16:12 ID:hlGQx60Q


幼馴染「車内で食べるどん兵衛、美味しいです」ズーッ

幼友「ちょっとのび気味だけどね」ズズーッ

男「でも正直、今のストレート麺より前の縮れ麺の頃の方が好きでした」ズルズル

幼友「それ、すごく解る」

幼馴染「日付が変わるまで、あと五分です」

男「色んな事があった年でした」

幼友「ほんと、釣りに目覚めたわー」

幼馴染「目覚めさせられたという方が正しい気がします」

男「 狙  い  通  り 」フフン



840 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/31(火) 22:17:57 ID:hlGQx60Q


男「あ、左の竿がアタッています」

幼馴染「このタイミングで……やむを得ません、行ってきます」ガチャッ

幼友「行ってらー」


…バタンッ


男「アナゴか…それともまたウミケムシか」

幼友「…でも、もう幼馴染ちゃんの腕前だったら、ちょい投げ釣り位なら安心して見てられるんじゃないですか?」

男「そうですね、もちろん幼友ちゃんでも…ですが」

幼友「あはは、本当ですかぁ?」

男「はい、二人とも自慢の弟子です」

幼友「……そういう点では、同じラインに立ててるんですね」

男「はい……?」



841 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/31(火) 22:41:31 ID:duppYnYU


(コソーリ…乙!良いお年を!!)



842 : ◆M7hSLIKnTI:2013/12/31(火) 22:49:20 ID:oDEa.lPc


幼友「男さん…あのね」

男「………」

幼友「私…ね…?」

男「………」

幼友「何が、どうなるとも…思って無いですよ?」

男「………」

幼友「むしろ、どうもならない方がいいんです」

男「…幼友…ちゃん」

幼友「今まで通り、ずっと三人で仲良くしたいの」

男「………」

幼友「だからね……だけどね」

男「………」

幼友「私は…ね、──」



848 : ◆M7hSLIKnTI:2014/01/01(水) 00:02:00 ID:.b5BFcaA


幼馴染「寒いーーっ!アナゴgetしましたー!」ガチャッ…バタンッ

男「お疲れ様でした」

幼友「日付、変わるよ?…5、4、3、2、……」

幼馴染「明けましてーい!」

幼友「おめでとーう!」

幼馴染「今年もよろしくお願いしますと私は私はよく知りもせず誰かの真似をしてみます」

男「……幼友ちゃん」

幼友「はい?……去年の事なんか、もう言っちゃだめですよ?」

幼馴染「……?」

男「…そうですね、今年もよろしくお願いします」

幼友「はい、よろしくですよー」

幼馴染「……?」



《年越し閑話おしまい》

849 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/01/01(水) 00:04:33 ID:AsWsYhr2


あけましておめでてーい!!



851 : ◆M7hSLIKnTI:2014/01/01(水) 00:53:57 ID:CS3kYMVU


幼馴染「明けましてーい」

幼友「おめでとーう」


.
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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/12/23(月) 09:50:47|
  2. 釣りSS
  3. | コメント:0

黒き尾鰭のロマンを求めて(原題/男「釣りロマンを求めて」幼馴染「ブラックバス編です」)

SSの性格的に、頂戴したレス等も含めて掲載していますが、ありがたい事に非常に多くのレスを頂戴しているため、似た内容のレス(主に「てーい・とーう」)等、一部のレスは掲載を割愛させて頂いています。
名前欄が青色表記のレスが本文です。
また、赤色表記の文字は参考画像等へのリンクボタンになっています。



298 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 13:20:17 ID:cehwDkSo [2/7]


男「おはようございます」

幼馴染「これはどういう事でしょう」

男「何がですか」

幼馴染「今は午前九時です」

男「確かに、それが何か」

幼馴染「迎えに来るのが早朝ではなく普通の時間帯です」

男「どうあがいても朝まずめに釣り場に着く事はできませんので、今回は夕まずめから釣るつもりで行きます」

幼馴染「えーとえーと…何に対する怒りで目を覚ませば良いのでしょうか」

男「別に怒りを朝の原動力にしなくても良いのでは………ほら」チュッ

幼馴染「てーい!てーい!」

男「痛いです。目覚めの口づけは前回の貴女が求めた事です」

幼馴染「貴様男の偽物だな!男をどこにやった!」

男「いいから早く着替えて下さい」



299 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 13:21:03 ID:cehwDkSo [3/7]


幼馴染「今回も車はハイラックスサーフですか」

男「そして例のごとく無断借用です」

幼馴染「二泊三日と言っていましたが、そんなに長く無断借用して大丈夫なのでしょうか」

男「最近父親はサーフだと燃料代がかかるからと母親を言いくるめて買ったコペンばかり乗っているので心配ありません」

幼馴染「また随分可愛らしいのを購入したのですね」

男「おかげでガレージを開ける度に(°∀°)に、ワクワクして『乗る?乗る?』と言われている気になります」



300 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 13:22:01 ID:cehwDkSo [4/7]


男「では出発しましょう、乗って下さい」バタンッ

幼馴染「………」バタンッ、キョロキョロ

男「……?」

幼馴染「…いませんね」

男「ああ…幼友ちゃんは今日は外せない用があるらしく、明日の午前中に旅先の駅で合流の約束になっています」

幼馴染「仮にも奴は『幼友』なのですが、なぜ最近こういう連絡を直接男がしますか」ムスー

男「…他意は無いのですが」

幼馴染「少し弁えて下さい、男は私のかっ…か…かっ…」

男「……か…?」

幼馴染「か…かっ………てーい!てーい!てーい!」

男「痛いです。途中で心折れるなら無理に『彼氏』とか言わなくてもいいです」

幼馴染「迎えの時間が違うからでしょうか。なにやら今朝は自分が空回っている気がします…」



301 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/18(月) 14:35:27 ID:U/BnoHOY


面白いです。
てーい



302 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/18(月) 17:36:22 ID:yPSHSCZ6


大学生とは思えぬウブさ



303 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/18(月) 17:39:33 ID:mu0uS.7s


バス編 始まりましたか。
とーうとーう。



304 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/18(月) 18:39:07 ID:2.w18jDg


幼友は空気を読める良い子です

とーう。



305 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 19:30:51 ID:cehwDkSo [5/7]


幼馴染「そもそもブラックバスとはどんな魚なのでしょう」

男「その質問に対してよく『シーバスと呼ばれる海のスズキの仲間なんだよ』という答えを返す人がいます」

幼馴染「違うのですか」

男「これがスズキ目の話であるなら、違いはしなくとも浅い知識の知ったかぶりです。スズキ科だというなら、間違いになります」

幼馴染「ほほう」

男「まずスズキ目としては、スズキ亜目に限定しても3000種を超える魚が含まれ、アジですらスズキの仲間という言い方になってしまいます」

幼馴染「アジもですか、それは大雑把すぎます」

男「スズキ科の話だとすれば、日本にはスズキ科の魚はスズキ・ヒラスズキなど数種しかおらず、見当外れです」

幼馴染「スズキの仲間…という言い方だといかにも食べられそうですが」

男「おそらく『ブラックバスは食べられるんだよ』という話題を膨らませるために併せて語られ、適当なままに認知されているのでしょう」

幼馴染「なるほど」

男「魚としての性質はご存知の通り他の魚を捕食するフィッシュイーターであり、虫などを食べる雑食性ももっています」

幼馴染「…思う以上に専門的な話で、あまり面白くありませんでした」

男「ギョギョー」



306 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 19:31:45 ID:cehwDkSo [6/7]


…高速道路走行中

男「ふわーりぃーハネのよーう、竿ーのーぎょぎょライートー揺れるぅー」

幼馴染「………」ソワソワ

男「スズーキとー呼べーるーサイズじゃなーい、60センチ以下ーだーかーらぁー」

幼馴染「………」モジモジ

男「…どうかしましたか、何か様子がおかしいです」

幼馴染「そ、そんな事はありゃません」

男(……噛んだ)

幼馴染(……久しぶりに幼友がいないと、何か緊張します)

男「まだまだ遠いので、寝てても構いません」

幼馴染「大丈夫れふ」

男「……今夜は安いけど、温泉旅館をとってあります」

幼馴染(温泉…旅館…二人きり…婚前旅行…)ブツブツ

男「もしかして緊張していますか?そこのサービスエリアのドッグランでも走っては」

幼馴染「犬じゃありません…」



307 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/18(月) 19:34:46 ID:cehwDkSo [7/7]


レス毎のオチをつけるネタが尽きてきた感に悩んでいるので
甘さ三割増しでお送りしております



308 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/18(月) 19:49:20 ID:uKcvb/6E


男の唄っている歌w



309 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/18(月) 20:26:24 ID:xx6.Lte.


お前らが替え歌なんかしたから>>1に感染ったじゃないか



310 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/18(月) 21:05:08 ID:4UQKz.5M [3/3]


そういえばこの替え歌、フッコサイズをハネって呼ぶ地方の人にしか通じないな



311 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/19(火) 04:55:13 ID:oX4Dw/Hs


とーう!とーう!



312 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 16:18:09 ID:MyrA0inI [1/3]


…サービスエリア


幼馴染「お待たせしました」

男「やはり女性のトイレは長いものです」

幼馴染「そういうのは思っても口に出すものではありません」

男「何か買い食いでもしますか」

幼馴染「頂きます」

男「奢るとは言っていません」

幼馴染「じゃあお言葉に甘えて、たこ焼きを」

男「…聞いちゃいねえ」



313 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 16:18:56 ID:MyrA0inI [2/3]


幼馴染「サービスエリアのファストフードにしてはふわとろで美味です」

男「………」

幼馴染「どうかしましたか」

男「…普通、この流れなら『はい、あーん』があるものではないでしょうか」

幼馴染「爪楊枝は二本あります」

男「…もういいです、自分で食べるから一個下さい」

幼馴染「ふっふっふっ…引っかかりましたね」チッチッ

男「はい?」

幼馴染「たこ焼きに爪楊枝が二本ついているのは、二人で食べるためではありません」

男「丸いたこ焼きが回らないように二本使うのでしょう」

幼馴染「………」

男「………」

幼馴染「てーいっ!」ガバッ、モグモグ

男「ああっ!全部いっぺんに食べないで下さい!」



314 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 16:19:28 ID:MyrA0inI [3/3]


…再び、高速道路走行中


幼馴染「…眠くなってきました」

男「緊張したり緩んだり忙しいことです」

幼馴染「リクライニングさせていいでしょうか」

男「おやすみなさい」

幼馴染「寝てる間にお尻とか触らないで下さい」

男「そう言われると触りたくなります」

幼馴染「じゃあ触って下さい」

男「解りました、必ず」

幼馴染「どうしろと」

男「冗談です、触りません」

幼馴染「…でも眠気覚ましにちょっとならいいです」

男「運転を誤りそうな事を言わないで下さい」



315 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/19(火) 16:34:19 ID:kpUnBav.


眠気覚ましにエロイこと考えるのはありです



316 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/19(火) 17:02:59 ID:blKD8j.E


( ̄▽ ̄) ニヤニヤ



317 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/19(火) 19:38:19 ID:qxNgYb6c


ニヤニヤ



318 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/19(火) 19:42:44 ID:qZlh4m4U


てーい



319 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/20(水) 01:29:21 ID:feJJJ.WA


(誰だよ俺の尻触った奴)



320 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/20(水) 07:27:33 ID:lCA5qVKw


やらないか?



321 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/20(水) 08:39:53 ID:fP1cjUNg


すごく。。。大きいです。。



322 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/20(水) 08:49:42 ID:UDbeskJE


>>321
(ブラックバスが)



331 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/23(土) 10:24:40 ID:Mj.LdtfA [1/3]


(はよ書かな…ホモが湧いとる…)

ハモォ…鱧ォ…



332 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/23(土) 10:50:07 ID:dtEhMkyw [1/4]


はよ はよ書いてくだされ。



333 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/23(土) 11:23:11 ID:75VyUgl6


幼馴染がどんどん凶暴になっていく



334 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/23(土) 12:27:59 ID:Mj.LdtfA [2/3]


男「おはようございます、着きました」

幼馴染「…おはようございます、今は何時ですか」

男「午後三時です。まだマズメ時には早いですが、ルアーに慣れて貰うためにも釣り始めましょう」

幼馴染「バスもやはりマズメ時がよく釣れるのですか」

男「海釣りと違って潮汐の影響はほぼ無いので、いつが釣れるか…といえばやはりマズメ時となります」

幼馴染「昼間は?」

男「春や秋なら昼でも釣果は期待できます。夏場はさすがに朝夕に集中して釣れますが。では、こちらをどうぞ」

幼馴染「これがバス竿ですか」

男「いえす、扱いやすい6フィートのスピニングを使って下さい」

幼馴染「短いけど硬い…男と一緒」ポッ

男「悪かったな」



335 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/23(土) 12:29:27 ID:Mj.LdtfA [3/3]


とりあえず1レスだけ
夜、できるだけてーいします



336 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/23(土) 12:32:38 ID:dtEhMkyw [2/4]


乙です
てーい、てーい。



337 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/23(土) 12:59:24 ID:t0CNwUyk


その間に幼友たんは貰っていきますね



338 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/23(土) 13:06:10 ID:DoANopAs


幼馴染にも幼友にも不治の病が感染しましたか



339 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/23(土) 13:46:16 ID:Sc2D6apA


さらっとひでぇ



344 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/23(土) 22:29:59 ID:GUJ4sunM [1/3]


男「まずはやはり、ただ巻き系のルアーを使って貰います」

幼馴染「ただ巻き?」

男「もちろん止めたり緩急をつけたりという技術もありますが、基本的には巻くだけという事です」

幼馴染「何だかずんぐりむっくりなルアーで可愛いです」

男「クランクベイトと言います。先のリップが長ければディープレンジを攻めるタイプ、短ければシャローレンジ用です」

幼馴染「リップと言う割には唇というより舌みたいです」

男「これは水深2.0m位を探る、比較的ディープクランク寄りなものになります。巻き抵抗は強く手が疲れるかもしれませんが、根気良く探ってみましょう」

幼馴染「ディープな感じに唇と舌で責めればいいのですね」

男「なぜわざとそういう言い回しにしますか」



345 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/23(土) 22:31:59 ID:GUJ4sunM [2/3]


男「ただ巻き系ルアーは広範囲を探るのに向いています。ここから一投ずつ放射状に探ってみて下さい」

幼馴染「てーい」

男「このクランクは巻かなければ浮くフローティングタイプなので、着水後に焦る必要はありません」

幼馴染「では巻いていきます」

男「ちょっと待った。人によって様々ですが、俺は探りでクランクを使う場合は、着水の波紋が落ち着いてからリーリングします」

幼馴染「ほほう、それによって何かが?」

男「なんとなくです」

幼馴染「…はい?」

男「なんとなくそれがいい気がするのです。釣りなんてそんなもんです」

幼馴染「あれこれ道具や仕掛けにこだわる割には、身も蓋もない言い方ですね」

男「たぶん釣り人は皆、自分はなんとなくこうするのが良い…というジンクスめいたものを持っています」

幼馴染「そんなものですか」

男「そんなものです」



346 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/23(土) 22:33:29 ID:GUJ4sunM [3/3]


幼馴染「おお…手にぶるぶる伝わります」

男「クランクという言葉には『がたがたする』『ぐらぐらする』という意味があり、まさにその通りの動きをします」

幼馴染「わ…!?アタッてる…!?」

男「いいえ、これは底のゴロタを叩いているだけです」

幼馴染「あんなに針がたくさん付いていたら、根がかりしそうです。無くしたらまた身体で払わなければならなくなります」

男「身体で払わせた覚えはありません、人聞きの悪い。ロングリップのクランクは前傾姿勢で泳ぐため、針より先にリップが底に着き意外と根がかりしません」

幼馴染「ほほう…しかし何事も予想外の事態というのは起こり得るものです」

男「まあ、そうですね。絶対ではありませんが…」

幼馴染「やはりそういった想定範囲外の出来事に対して寛容になれてこそ、器の大きな人間というものです」

男「ほほう、つまり現在の状態を解りやすく表すと?」

幼馴染「根がかりました」

男「身体で払え」



347 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/24(日) 15:33:14 ID:L0gVEPDI


続き楽しみだ



348 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/24(日) 20:37:11 ID:WaQWEA3Q


はよ てーい。



349 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:17:22 ID:8jm0N.Os [1/10]


男「では更に根がかる危険の少ないルアーを使って頂きます」

幼馴染「この奇妙な針金細工は何なのでしょう」

男「スピナーベイトというルアーです。見ての通り針先が上側を向いていて、ワイヤー部は横三角形になっているので、非常に根がかりにくいルアーになります」

幼馴染「これもただ巻きですか」

男「基本的にはそうです。小型な1/4オンスなので、スピニングでも投げられると思います」

幼馴染「てーい」

男「これは沈むルアーなので、着水後すぐに巻き始めます。ゆっくり巻けば深い層を、早く巻けば浅い層を攻めることになります」

幼馴染「ん…?ぐいっと重くなって…また軽くなりました」

男「おそらく沈み岩を乗り越えたのだと思います。よく、その岩の裏からバスが追ってきて…」

幼馴染「うわっ!…食った……!?」

男「上に引き過ぎてはいけません、水面に出すとエラ洗いと呼ばれるアクションで針を外される場合があります」

幼馴染「そんな事言われても、どうすればいいのか…!うわわ、水面に出ます!止まれー!てーい!てーい!」ジタバタ

男「竿を寝かすのです!」

幼馴染「はいっ!」ピッ

男「前にじゃなーい!」ブフォッ



350 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:30:22 ID:8jm0N.Os [2/10]


幼馴染「バラしました…」

男「竿は横に寝かして下さい。前に寝かすとルアーからラインと竿が一直線になってしまい、最悪ラインが切れます」

幼馴染「しかしこのスピナーベイトというのは、見掛けによらず釣れるのですね。いかにも上手い人向けなルアーに見えますが…」

男「略してスピナベは使い方の幅広いルアーです。針に着けるトレーラーの種類、更に攻める層や緩急をつけた引き方など初心者から上級者まで、様々な使い方で釣果を得られます」

幼馴染「スピナベですか、略すと一気に日本語っぽくなります」

男「更に略せば『ナベ』です」

幼馴染「ナベ…小学生の仇名みたいです」

男「さあ、スピナベが有効と判ったら後は手数勝負です。ガンガン行きましょう」

幼馴染「てーい!」



351 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:34:38 ID:8jm0N.Os [3/10]


幼馴染「ところで、男は釣らないのですか?」

男「貴女もペースが掴めてきたようなので、そろそろ始めようと思います。」シャキーン

幼馴染「またまたご冗談を。竿を持つ向きが裏表逆です」

男「これはベイトタイプのロッドなので、これで良いのです」

幼馴染「何か違いが?」

男「使いこなすには技術が必要ですが、飛距離の調整など精密なコントロールが可能です。また直接スプールに糸を巻き取ってゆくので、重いルアーや抵抗の強いルアーを使う事ができます」

幼馴染「よく解りませんが、私には使えないという事は解りました。ん…?何やら真剣な顔をしています」

男「実に二年ぶり程になるバス釣りです。少し…感慨深いものがあります」

幼馴染「男…」

男「この国においては、本来好ましくない釣りです。それでもこのような特別な場所だけで許された、バスとの勝負…」

幼馴染「今、BGMは『A Question of Honour』あたりですね」

男「宿敵よ、俺は帰ってきた…お前の潜む水辺に…!殺すためでも、喰らうためでもなく…少しでも大きなお前と出会うためにっ!…いくぞっ!」シュッ!

幼馴染「おお…!」

男「……バックラッシュしました…」



352 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:36:25 ID:8jm0N.Os [4/10]


幼馴染「男が投げているルアーはまた違うようですが、何なのでしょう」

男「バイブです」

幼馴染「はわ…はわわ…私は今夜どうなるのでしょう…」ドキドキ、プルプル…

男「全く違うものを想像していると思います。バイブレーションといい、リップの無い細身なルアーです」

幼馴染「その名の通り、振動するわけですね」

男「いかにも。基本的にはこれも沈むルアーです。巻き抵抗が弱いのでクランクより素早く広範囲を探れる、サーチベイトにも向いたルアーです」

幼馴染「さーちべいと…やはりバス釣りは横文字の用語が多数使われるのですね」

男「まあ、そもそもが北アメリカ大陸で盛んな釣りですので」

幼馴染「なんか格好つけた感じがして抵抗あります」

男「解らなくもありませんが、例えばサーチベイトを無理に日本語化すると『探り向けルアー』、バイブレーションなら『ぶるぶる』といった感じになりますが」

幼馴染「…やっぱり英語でいいです」



353 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:38:13 ID:8jm0N.Os [5/10]


幼馴染「ところでこのスピナベの針に着けているプニプニのピロピロは何ですか」

男「トレーラーとして着けているカーリーテールグラブと呼ばれるソフトルアーです」

幼馴染「芋虫に尻尾がついている感じですね」

男「基本中の基本、ゲーリーヤマモトの4インチシングルテールになります。釣れないわけが無いレベルの定番品です」

幼馴染「外国人なのか日本人なのか解らない名前です」

男「日系ハワイアンの方です。ちなみに高校時代の同級生の山本君はこのソフトルアーが好きで、いつも使っていました」

幼馴染「ヤマモトだけに」

男「結果『ゲリヤマ君』という、響きの悪いニックネームをつけられていた記憶があります」

幼馴染「可哀想…釣り仲間の内だけでですか」

男「まあ…そう呼んでいたのは、ほぼ俺ですが」

幼馴染「さては、呼び始めたのも男でしょう」

男「仰る通りです」



354 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:39:31 ID:8jm0N.Os [6/10]


幼馴染「てーい」

幼馴染(…男、岸沿いを歩いて行ってしまいました)

幼馴染(キャンプ場の時みたいに、私がナンパされたらどうするつもりなのでしょう)ムスー

幼馴染(…あの時は幼友がいたから、まだ気持ちに余裕がありましたが…)

幼馴染「てーい」

幼馴染(幼友…明日の午前中に合流との事でしたね)

幼馴染(外せない用事って、なんだったのでしょうか)

幼馴染(…今夜の内に、たくさん男に甘えておくとしましょう)

幼馴染(そろそろ夕方ですね…冷えてきました)フルフルッ



355 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:41:18 ID:8jm0N.Os [7/10]


……………
………


…地元、洋食居酒屋


幼友「こんばんはー」

同級女「あー!幼友ちゃん、こっちこっちー!」

チャラ男「うぇーい!巨乳ちゃんじゃねっすか…!」

ギャル男「いんじゃね、このコ?はい、お持ち帰り狙いましたー!」

幼友(うわ…人数合わせに呼ばれたけど、このコンパひどいな…)

同級女「幼友ちゃん、こんな可愛いけど彼氏いないからオススメよー?」

チャラ男「まじでー!?今夜は燃え上がっちゃいますわー!」

ギャル男「チャラ男の良いトコ見てみたいー、そーれ!」

幼友(はぁ、釣り…今日から行きたかったな…)



356 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/25(月) 00:44:33 ID:mZ.cSdHM [1/3]


はよ



357 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 02:01:09 ID:8jm0N.Os [8/10]


……………
………



男「さあ、夕まずめ…今日は軽く程度に攻めておきましょう」

幼馴染「せっかく来たのに軽くで良いのですか?」

男「せっかくというなら、旅館を予約したのもせっかくの話です」

幼馴染(……緊張が再発します…)ドキドキ

男「…夕まずめはバスの捕食活動が活発になります。水面直下の浅いレンジで食ってくる事も多く、面白い釣りが出来る時間帯です」

幼馴染「…面白い釣り?」

男「こちらをお使い下さい、ポッパーと呼ばれるルアーです。水には浮くタイプなので心置きなく投げて下さい」

幼馴染「てーい!」

男「クランクの時のように波紋が落ち着くまで待ちます。ラインのたるみだけ巻き取っておいて下さい」

幼馴染「らじゃー」

男「では竿を軽く一度、シャクって下さい」

幼馴染「てい」…ポワッ

幼馴染「何ですかこれ、音が可愛いです」



358 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 02:05:48 ID:8jm0N.Os [9/10]


あかん、眠い
てーい



359 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 05:31:11 ID:CI9A0wv2


てーい



360 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 05:48:52 ID:4zp45wbM


>>358
起きろ
てーい( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・;'



361 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/25(月) 06:39:24 ID:mZ.cSdHM [2/3]


てーい



362 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 06:44:08 ID:h4rXuVwY [1/2]


ぶるぶる



363 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 09:14:50 ID:bdER.cLc


ホッパーもなかなか動かすの難しいルアーだと思うんだけど
シャロークランクにしておいたら?

ホッパーは竿をしゃくる度にぷるんぷるんする幼友にとっておいて、てーいしたらいい



364 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 10:12:58 ID:BSf0zaHY [1/7]


>>360
ひでえや

>>363
すまねえ、既に使わせ始めてしまったからとりあえずポッパーでイかせてくれ
トゥイッチングとかシェイキングとか、幼友用メソッドは多々あるはず。揺らすぜ!



365 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 15:04:06 ID:BSf0zaHY [2/7]


男「いいからいいから…ラインを巻いて二発目と三発目を連続でいきましょう」

幼馴染「てい、てい」

ポワッ…ピシャッ…

…ユラリ

男「!!……次、一発どうぞ。もし食ったら、慌てずに」

幼馴染「ていっ」

ポワッ………ズバッ!

幼馴染「……!?」

男「ワンテンポ入れて…アワセて!」

幼馴染「てーい!」ビシィッ

男「バッチリです!今度は竿を寝かすのは横向きに…!」

幼馴染「なんかリールがチリチリ言います…!?」

男「ドラグを緩めに設定しているだけです!時間をかけていきましょう、まあまあのサイズです!」



366 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 15:04:47 ID:BSf0zaHY [3/7]


幼馴染「てーいっ!横倒しで浮いてきました!」

男「ランディングの際はルアーのフックに気をつけて下さい」

幼馴染「やった!バス釣りました!これは大きいのでしょうか?」

男「40cmは無さそうです…どれどれ、38cm…初めてのバスにしては充分良型です」

幼馴染「アレやってみたいです!男の部屋の雑誌で、よく表紙や広告でしてるポーズ!」

男「下顎のバス持ちですか。親指の皮膚がざらざらになるかもしれませんが、いいですか?」

幼馴染「…男がそんな手の女が嫌いなら、やめておきます」

男「くっそ可愛い事を言いますね。実にあざといです」

幼馴染「それほどでも」フフン

男「まあ、俺は寧ろそんな彼女の方が嬉しいです。どうぞ…写真、撮ります」

幼馴染「秋葉のオタクくらいローアングルなショットです」

男「その方が魚が大きく見えるので…はい、撮ります」

幼馴染「見せて下さい…うわ!これ詐欺です!…雑誌の表紙ってこんな撮り方で大きく見せていたのですね…」



367 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 15:05:39 ID:BSf0zaHY [4/7]


幼馴染「てい、ていていっ…ポッパーの釣り、やってるだけで楽しいです」

男「トップウォーターの釣りは視覚的な楽しみも大きいので、面白さも格別です」

幼馴染「てい……てい、ていっ」ポワッ…ピシャッ…

男「では俺も、バズベイトでトップを狙ってみたいと思います」

幼馴染「スピナベみたいです」

男「そうですね、ただブレード部分がペラになっています。これまた意外なほど良く釣れる、楽しいルアーです」

幼馴染「ほほう、拝見しましょう」

男「とーう」

幼馴染「!!」

男「桟橋際を引いて…ダメか。今度はこっちに、とーう…痛たたたっ?」

幼馴染「てーい!てーい!」ポカポカ

男「痛いです、何をしますか」

幼馴染「男は『とーう』はダメです!『てーい』です!」ポカポカ



368 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 15:24:35 ID:9GoAFVlE [1/2]


てーい( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・;'



369 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/25(月) 18:02:41 ID:mZ.cSdHM [3/3]


てーいてーい
支援



370 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 19:07:42 ID:h4rXuVwY [2/2]


とーうとーう
支援



371 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 19:10:22 ID:BSf0zaHY [5/7]


……………
………


…再び地元の居酒屋


チャラ男(へへ…幼友ちゃんをガンガン呑ませて、介抱&お持ち帰りコースっしょ!)

ギャル男「幼友ちゃん、何呑んじゃうー?」

幼友「…生」

チャラ男「サーセーン!生中ひとつ…」

幼友「はぁ…?私が生って言ったら、大ジョッキなんだけど」

同級女「ちょ…幼友ちゃんっ」

ギャル男「まじすか!?いくんだねー!」

チャラ男(こりゃ、勝手に潰れるかな…?あー、早くあの巨乳揉んでみてー!)

幼友(…うっざ……)



372 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/25(月) 19:11:15 ID:BSf0zaHY [6/7]


……………
………



男「さて、七時までに旅館にチェックインしないと、夕食の配膳とかで迷惑をかけてしまいます」

幼馴染「旅館はここから遠いのでしょうか」

男「車で三十分というところです。しかし、お腹が空きました」

幼馴染「…男と温泉旅館に二人で宿泊する日がくるとは」

男「思っていませんでしたか」

幼馴染「解りません、でも考えた事は…少なくとも最初、海釣りに誘われた日の夜まではありませんでした」

男「あの時は緊張しました」

幼馴染「親ももうすっかり、『男と釣りに出掛ける=泊りがけ』という認識になってしまいました」

男「怒られたりはしませんか?」

幼馴染「これで男が私を捨てたりしたら、ひどく怒ると思います…男を」

男「それは怖い事です」

幼馴染「…可能性は?」

男「幼馴染が俺を捨てる確率と同じです」



373 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 19:15:59 ID:BSf0zaHY [7/7]


旅館の夜のシーン要る?もち、エロは無しだけど。こいつらには釣りだけさせといた方が良いだろうか
要らなきゃ幼友のその後だけ書いて、サクッと翌朝に移す



374 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 19:24:21 ID:tHQGIcno


要ります!
要ります!!!
要ります!!!!!!


どうかお願いします



375 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 19:28:19 ID:fs25Dxes


いい雰囲気になったところで幼友が乱入するんだろ! ぜひ読みたいです!



376 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 20:44:01 ID:V2wCzmOY


男と幼馴染が「てーい」して「てーい」「てーい」しながら「ててーい」でもしかしたら「とーう」なんだろ?

是非とも読みたいです!!

僕の「てーい」も「てーい」「てーい」なんですお願いします!!



377 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 20:55:18 ID:8jm0N.Os [10/10]


わかった
ちょっと「ていてい」してから「てーい!」するから、少し「とーう!」しといてくれ
だがくれぐれもエロは無いからね



378 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 21:02:50 ID:o7HXk6iw


「とーう!」



379 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 22:33:23 ID:9GoAFVlE [2/2]


てーい



380 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/25(月) 22:37:33 ID:kMbVG3mU


ふんぬぉりぇぇゃぁぁぁ!!!(寝言)



381 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/25(月) 23:59:33 ID:x2TvpWq.


幼友ー早く来てくれー



382 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/26(火) 00:12:37 ID:GSCN9J1E


>>381
ガハハハ!呼んだか坊主?



385 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/26(火) 12:40:10 ID:XwIDfpMU [1/4]


中居「本日はようこそおいで下さいました」

男「いえいえ」

幼馴染「それほどでも」

中居「お若いご夫婦で、微笑ましい限りです。どうぞごゆっくり…じきにお料理をお持ちいたしますので」

幼馴染「ふっ…!!」

男「よろしくお願いします」

中居「では失礼いたします、ご用の際はお呼び下さいませね」ニッコリ

男「温泉は食事の後です、空腹に勝てません」

幼馴染(夫婦…)

男「料理、楽しみです」

幼馴染「お、お茶飲みましょう」

男「そうですね、じゃあアテの茶菓子も開けますか。熱ちち…」ズズー

幼馴染「…はいどうぞ、あなた」キャッ

男「!!」ブフォッ



386 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/26(火) 12:40:54 ID:XwIDfpMU [2/4]


幼馴染「おお…豪勢な料理です」

男「これでも割と安いプランなのですが」

幼馴染「山菜やお肉…山の幸中心で、お造りはちょびっとです」

男「わざとそうしました。正直、魚料理は自分で釣ったものには勝てません」

幼馴染「前に幼友の家で食べたお魚づくしは美味しかったです」

男「また今度は船の上で直ぐに捌いて活け造りを賞味頂きましょう」

幼馴染「楽しみにしてます」

男「地鶏の小鍋、お酒が進みます」

幼馴染「どど、どうぞ…」トクトク…

男「…幼馴染も飲みますか?」

幼馴染「じゃあ、ちょっとだけ」

男「こんな贅沢は滅多とできませんが、やはりいいものです」

幼馴染(明日、幼友に言ったら羨ましがるかな…)



387 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/26(火) 12:41:46 ID:XwIDfpMU [3/4]


……………
………


…居酒屋、店の外


チャラ男「うえぇっ……」エレエレエレ

ギャル男「苦し…うへぇ…」キュー

幼友「はっ…口程にも無い。そんなんで私をお持ち帰りできると思ったわけ?」

同級女「幼友ちゃんが強過ぎるんだよ…本当に大丈夫?」

幼友「余裕だよ。私、これから深夜バス乗るから」

同級女「え…!?し、深夜バスって酔ってたら断られるよ…!?」

幼友「酔ってないもん。ブレスケア噛んどけば大丈夫でしょ」

同級女「はぁ…幼友ちゃん、そんなんじゃ彼氏できないよ?」

幼友「別に、今は欲しくないから」

同級女「好きな人とか、いないの…?」

幼友「…いない…でもないけど」



388 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/26(火) 12:42:43 ID:XwIDfpMU [4/4]


同級女「そうなんだ、じゃあ今日は誘っちゃって悪かったね…」

幼友「いいの、気にしないで」

同級女「上手くいくといいね」

幼友「それは…無いかな」

同級女「え…」

幼友「私の好きな人はね」

幼友「もっとお酒が強くて」

幼友「あそこでのびてる人達みたいにチャラチャラしてなくて」

幼友「おっとりしてるけど、なよなよはしてなくて」

幼友「一緒にいたらすごく楽しくて」

幼友「私のおっぱいはガン見するくせに、彼女に一途で」

幼友「誘ってもきっと、靡かない人だから」

同級女「…そうなんだ」

幼友「じゃあ、行くよ。また遊ぼうね!」



389 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 13:28:13 ID:j8DcqRAc [1/2]


幼友ちゃんにもいい人が現れるといいね










俺みたいな( ・´ー・`)



390 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 14:58:17 ID:V4dJJWlM


>>389
てーい( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・;'



391 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 15:29:13 ID:OPflvinY


>>389
とーう(#゚Д゚)σ) Д ) ゚ ゚



392 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 18:13:33 ID:zdrPkxVQ


>>389
てててーい( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・;'

皆様、レスさんくす
ここらへんいつものこのSSっぽくない感じもするけど、またちょっとしたら釣りメインに戻しますんで



393 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 22:19:39 ID:j8DcqRAc [2/2]


照れるなよ(*´Д`)








もっとぶって(*´Д`)ハアハア



394 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/26(火) 22:38:52 ID:ccnUyBnI


てーい
 (゚∀゚)
 ノヽノ) =3'A`)ノ ←>>393
   くく へヘノ



395 名前:うにゃ[] 投稿日:2013/11/26(火) 23:46:54 ID:ThNpl.1k


男が女性二人を幸せにできるぐらいの甲斐性を持てれば、
みんな幸せになれるのに・・・www

4円します、てーい!てーい!とう!!



396 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 00:01:18 ID:C8azCveo


幼友のおならとかむしろご褒美



397 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 00:07:31 ID:H72AG1ZU


袋に詰めて家に持って帰りたいくらいだね!



398 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 03:22:38 ID:4MvjBSRE


支援支援とーう!



399 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 10:06:21 ID:lpk7Id7c


支援てーい!



400 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/27(水) 13:02:05 ID:v477hVsk


…深夜バス停留所


幼友(…ほんと、解ってるんだよ)

幼友(あの人は振り向かない)

幼友(そんな人だから…好きになっちゃったのかな)

幼友(…今の関係、楽しいし)

幼友(からかう事はあっても、本気で攻めるなんて…できないもの)

幼友(………)

幼友(…自分で言って自分で凹んじゃってるし)

幼友(バス…まだかな)

幼友(明日は、からかいまくってやるんだから)

幼友(幼馴染ちゃんに嫌われない程度に…)

幼友(………)

幼友(…自分の気持ちに、ブレーキが効かなくならない位に)



401 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 13:10:41 ID:I6utJjIw


可愛すぎてとーうした



402 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 16:23:08 ID:VQiH1RPg [1/2]


マスター、あちらのお嬢さんに「とーう」を頼む



403 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 16:54:58 ID:xO/pcq2g


とーう( ゚∀゚)ノ≡▽)`Д゚)<・;'←>>402



404 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/27(水) 19:17:34 ID:FpnHmaFM


てててーい



405 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 19:27:46 ID:VQiH1RPg [2/2]


マスター(>>403)、誰もが笑って誰もが望む最っ高に最っ高な幸福な結末ってヤツを下さい



406 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/27(水) 22:59:03 ID:wgSGedaY [1/2]


……………
………


…旅館、露天風呂


幼馴染(…少し酔ってしまいました)

幼馴染(温かい温泉と、肩を撫でる冷たい風…)

幼馴染(ごくらく、ごくらく…)

幼馴染(…そういえば、明日の夜の宿泊はどうするのでしょうか)

幼馴染(まあ車が大きいので、車中泊も可能ですね)

幼馴染(もしそうにしても、ここに温泉だけ浸かりに来られたらいいな…)

幼馴染(…幼友も温泉…好きですから)

幼馴染(………)

幼馴染(ちょっと差を思い知らされますが…)

幼馴染(………)モミッ

幼馴染(…ちょっとじゃないか)ハァ…



407 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/27(水) 22:59:46 ID:wgSGedaY [2/2]


…旅館の部屋


幼馴染「ふー、いい湯でした」

男「おかえりなさい」グビグビ

幼馴染「また飲んでいるのですか、際限の無い」ヤレヤレ

男「失敬な、これで最後です」

幼馴染「あまり飲み過ぎては身体が心配です」

男「そういう言い方をされると反論できなくて困ります」

幼馴染「そう思って言っているので」

男「しかし幼友ちゃんもよく飲みますね」

幼馴染「話を逸らさないで下さい、私は心配しています」

男「ほほう…さすが、できた嫁です」

幼馴染「て、てーい!そう言えば私が照れて、話が逸れると思っているでしょう!」

男「バレましたか」チッ

幼馴染「…で、でももう一回言ってみて下さい」ドキドキ



408 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 23:35:41 ID:K2VdSPVc


とぇーい!



409 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 03:05:54 ID:03MfKzJo


これ何で敬語なんだ?



410 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 03:13:16 ID:BXuCCgKM


それがいいんだろ



411 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 07:47:23 ID:Vx3D1BaA


最初は釣りのハウツー4コマ漫画みたいなノリで書き始めたつもりだった
敬語をやめさせるタイミングを逸して
いつの間にか定着してしまった



412 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 07:55:03 ID:FUAgDErE


最初の海釣り編の夜、ラブホに入った時
釣りと関係無いシーンでは敬語やめさせようかと書いてみたけど、違和感ハンパ無かった



413 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 08:21:37 ID:r5az2OZs


敬語のままでお願いします



414 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/28(木) 12:15:36 ID:MA9kRmsI [1/2]


金魚にね
適当なサイズの針を背掛けにしてね
泳がせるとね


バスがてーいする

なお、弟が祭りですくってきた金魚でやると
喧嘩の原因になる模様

敬語もいいと思うよ
時々口調が素に戻るところも

支援



415 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/28(木) 13:18:57 ID:L43kInAs [1/2]


………


…深夜バス、車内


幼友(ん…?ケータイ…メッセージ?)

《幼馴染:今、こっちに向かっているのですか?》

幼友(『そうだよー、夜行バスに乗ってるよ』っと…)

《幼馴染:今夜は温泉旅館に泊まっています。料理も美味しくて、幸せです》

幼友(『いいご身分ですね、こんちきしょー』)

《幼馴染:幼友がいないと、なんとなくものたりません》

幼友(『そんな事言って、二人でイチャイチャしてるくせに』)

《幼馴染:てーい》

幼友(『とーう』…くっそー、憎らしいのに嫌いになれないなぁ)クスッ

《幼馴染:では明日会いましょう。おやすみなさい、ホルスタイン

幼友(『おやすみ、前面絶壁』)

《幼馴染:てーーーい!!!》

幼友(『とーーーう!!!』)



416 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/28(木) 13:20:47 ID:L43kInAs [2/2]


………


…旅館の部屋


男「さて…そろそろ明日に備えましょうか」

幼馴染「お布団、もう敷いてあります」

男「ん?…ケータイにメッセージが…」

《幼友:明日はよろしくお願いしまーす》

男「幼友ちゃんからです。『こちらこそ、おやすみなさい』…と」

《幼友:では、良い夢を》

男「添付画像…?」

幼馴染「何でしょう」

男「ダウンロードしてみます。………おおおぉぉぉ!?」ブハーッ

幼馴染「ちょ…!?あの女狐、何で男に胸の谷間画像送りますか!」

男「保存保存、保護保護!」

幼馴染「消去消去!」バッ

男「嫌です!ケータイ返せー!」



417 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 15:12:12 ID:2U8IwQCI


エシュロンから例のメールを確保しろスーパーハカー!



418 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/28(木) 17:06:46 ID:VibMWVys


男「はあ…ケータイの奪い合いで一日の疲れが、どっと増しました」

幼馴染「抵抗するのが悪いのです」

男「まあ…明日はせっかく旅館の朝食もあるので、朝マズメの釣行はしません。後はゆっくり寝ましょう」

幼馴染「えっ、寝るのですか」

男「…嘘です、もう一つ大事な営みが残っています」

幼馴染「ひどいです。…では疲れにトドメを刺しますか」

男「変な言い方です。そうそう…それと、言い忘れていた事もありました」

幼馴染「何でしょう」

男「…旅館の浴衣、色っぽいです」

幼馴染「てーい!てーい!」

男「痛いです。もはや様式化したやりとりになっています」

幼馴染「じゃあ………たくさん、愛して下さい」ポッ

男「て、てーい!てーい!」

幼馴染「ふふふ…様式を崩してみました」ニヤリ



419 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/28(木) 17:32:51 ID:RFfat4bQ


てえぇーーい!



420 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/11/28(木) 17:33:32 ID:FziNth2Y


うほーい!



421 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 19:15:13 ID:CvezbyGw [1/2]


………


…翌朝、旅先の駅前


幼友(もう九時かぁ…まだかな。…お、メッセージ来た)

《幼馴染:もうすぐ着きます。どこですか?》

幼友(『駅前のマックだよ。朝の七時から入ってるから、もう限界。寂しくて死んじゃう、あと何分?』)

《幼馴染:男いわく、あと五分です》

幼友(『じゃあホットコーヒーのテイクアウトしとくからね』)

《幼馴染:アップルパイもぷりーず。それで昨夜のメッセージの事は許します》

幼友(あらあら、そんな簡単に許しちゃっていいのかな?…男さんは堅いけど、幼馴染ちゃんは隙だらけなんだから)


………


店員「お待たせしました。ホットコーヒー3つとホットアップルパイ2つでございます」

幼友(あ、あのサーフかな?…やっぱりそうだ)

幼友(…ちぇっ、仲良く揃って手を振っちゃって。妬けるわ…ったく)

幼友(よーし…いつもの自分に戻るぞー!)

幼友「…おっはよー!もーう、遅いってばー!」



422 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 19:16:24 ID:CvezbyGw [2/2]


らしくないシーン、おしまい

…とまで区切るわけじゃないけど、釣り再開するよー



423 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 19:30:16 ID:KiqWoFHI


幼友は私がもらっていきますね。



424 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 19:36:06 ID:MA9kRmsI [2/2]


>>423
とーう(#゚▽゚)=○) Д) 。 。



425 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 20:58:25 ID:uL8D2gWE


>>423
だから俺みたいな"いい男"じゃないとダメだって( ・´ー・`)



426 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 21:03:25 ID:TlOlqTlU


おう野郎共、やっちまえ



427 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 21:08:35 ID:Sb/qsUo6


>>426
もう1個のSSから、グリフォンライダー1個師団持ってきてよ



428 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/28(木) 21:09:39 ID:Kjgew5SU


>>425
とーう!( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン



433 名前:うにゃ[] 投稿日:2013/11/29(金) 02:17:56 ID:./btG1PQ


>>395です

幼馴染「(幼友を)嫌いになれない~、でも(だから!?)十分じゃない~」
ってな、心境なのかな

もう一著4円するぜ!!
てーい!てーい!てーい!とぉ!!

きょうもいい日だ!ばいちっ!



434 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/29(金) 08:35:09 ID:Em2qB7S2


幼友は私がもらいます、とーう!



435 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/29(金) 08:57:09 ID:Ws.MlJg.


>>434
幼友じゃないけどとーう( ゚∀゚)=○)゚Д゚);'.;'.・



441 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/29(金) 14:06:31 ID:OEdJnSTY


あんまり釣りには詳しくないんだけどこのスレは好きだな



448 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/30(土) 18:03:57 ID:nX0XzAHc


早くてーいしてとーうからのてーいでてーいしたいとーう!



449 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/30(土) 23:58:42 ID:wU22avDY [1/2]


………


…湖に移動中


幼馴染「そうですか、コンパの付き合いだったのですね」

幼友「ほんっと、時間の無駄だったわ」

幼馴染「まあまあ、次はいいオトコがいるかもしれません」

幼友「オトコよりサカナだー!ちきしょーめ!」

男「あと20分位で釣り場です、ちょっと峠道だから酔わないように遠くを見ておいて下さい」

幼友「はーい、遠い目をしてまーす」

幼馴染「見事に哀愁を漂わせています、役者ですね」



450 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/30(土) 23:59:46 ID:wU22avDY [2/2]


男「そうそう、釣り始める前に今夜の事を決めておきましょう」

幼馴染「宿泊についてですか」

幼友「二人は昨日、温泉でしょ?いいなー」

男「車が大きいので車中泊も可能ですし、昨夜の温泉地にもう一泊する事もできます」

幼友「ふんふん」

男「またキャンプ場も近いので、またバンガローを借りる事もできると思います」

幼馴染「旅館の場合、費用は大丈夫なのでしょうか」

男「さすがに二泊目は割り勘にさせて下さい。それなら、まあ大丈夫です」

幼友「どうする?私は通い湯で温泉に浸かれたら、あとはどこでもいいよ?」

幼馴染「そうですね…」


(車中泊・旅館・バンガローのいずれか、>>452



451 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 00:11:51 ID:dRrHo8R6


旅館



452 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 00:23:35 ID:P3uPGKhE


旅館


453 名前:うにゃ[] 投稿日:2013/12/01(日) 09:44:41 ID:G5nVHDmg


バンガローもいいよね^^

旅館なら是非3人1部屋で!!!



454 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 09:58:05 ID:AqfhILqo


>>452

女将「すいません、あいにく温泉付きの離れ一部屋しか空いてなくて……」

男「えっ」

幼「えっ」

幼友「YES!」(えっ)


こうですね、よーくわかります




455 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 17:33:16 ID:gyfqoU..


>>454
洩れてる洩れてる



456 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 18:23:19 ID:nDombjZs [1/3]


>>452、了解
>>454、もろた


457 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/01(日) 23:30:28 ID:nDombjZs [2/3]


男「さて、湖に帰ってきました」

幼友「私は初訪問ですけど」

幼馴染「ふふん、私は昨日もう釣っていますので」

幼友「どーせ小っちゃいんでしょ?」

幼馴染「失敬な、初めてにしては良型だと男に言われました」

男「それは間違い無いです。でも今回はせっかくですので、二人共に40cm超…間違い無いキロフィッシュを釣って頂こうと思っています」

幼馴染「キロフィッシュ…1kg超えという事ですか」

幼友「よーし、私が先にキロオーバー達成してやるんだから!」

男「では、二人には不公平が生じないように同じ系統のルアーを使って貰いましょう。それと幼馴染だけが使い慣れている、昨日のルアーは当面お預けとします」

幼友「じゃあ、勝負だね…幼馴染ちゃん」

幼馴染「上等です」ニヤリ

幼友「調子乗ってられるのも、今だけよ?」キラーン

男「ではまずは、ただ巻き系で…シャロークランクをお使い下さい。…スタート!」

幼馴染「てーい!」

幼友「とーう!」



458 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/01(日) 23:45:11 ID:nDombjZs [3/3]


男「幼友ちゃん、少し巻くのが早いです。シャロークランクは水面直下、それこそ引き波がたつ位で泳がせるのが良いと思います」

幼友「この位かな…?」

男「はい、いい感じです。あとはロッドを横に向けて下さい、前に延べていると竿の弾性を生かしきれません」

幼馴染「こんな感じですか?…よく解んない」

男「ちょっと失礼…身体をこの向きで、竿を…こう」スッ…

幼友(…後ろから抱かれてるみたいだなぁ)ドキドキ

男「アタリにアワセられるように、後ろに竿を引き過ぎて構えてもいけません」グイッ

幼友(いけない、男さんはそんなつもりはない…他意なんか、無いんだから)

男「…で、顔だけキャスト方向を見てて下さい。この位置からだと、ナイス谷間です」

幼友「今、他意ありましたね」

幼馴染「………」ジトー



459 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 00:04:56 ID:opqvbOxg


幼馴染(…ずるい、なんで男は幼友ばっかり)

幼馴染「…男、私もフォームがよく解りません。教えて下さい…」

男「なかなかサマになってます、さすがですね」ウンウン

幼馴染「…そいつぁありがとよ」チッ

幼友「男さん!何か引いてます!」

男「お!すぐ行きます!」ダッ

幼馴染「………」イライラ

幼友「釣れたー!何これー!?」

男「あー、残念…ブルーギルです」

幼馴染「…ん?」クイクイッ

男「幼馴染…それ、アタッて…」

幼馴染「てーい!」ビシィッ!

男「…やはりさすがです。幼馴染はもう放っといても大丈夫ですね」パチパチ

幼馴染(しまったああぁぁ!)



460 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 08:13:57 ID:JPYXsvkk


幼馴染「結局それで釣れたのはブルーギルでした」ピチピチ

男「バス釣りでのギルは税金のようなものです。必ずかかります」

幼友「よくこの小さな口で、三本針を喰ってきますよね」

男「時々トリプルフックが丸々口に入り上下の顎を縫い合わせた状態になっていて、外すのに手間どる事がある程です」

幼馴染「結構バカです」

男「結構どころじゃないかもしれません。酷い時は針だけとか、葉っぱを針につけておいても喰ってきます」

幼友「毒々しい色をしてるけど、食べられないんですか?」

男「小骨が非常に多いですが、味はバスより美味しいと思います」

幼馴染&幼友(食った事あるんだ…)



461 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 12:54:56 ID:C4yYTapo [1/2]


幼馴染「てーい」

幼友「とーう」

男「…あ、もしもし。昨日、泊まらせて頂いた者ですが……はい、そうです。ええ、今夜……いえ、今度は三人です」

幼馴染「ててーい!釣れましたー!」

男「…ええ、できれば二部屋。女性が二人なので………え?…そうですか…」

幼友「バスなのー?見に行こうかー?」

幼馴染「バ…バスです!立派な青いバスです!でも来なくていいです!」

幼友「青かったらギルじゃん、ざまーみろー」フフン

男「うーん、ちょっと検討します」

幼馴染「男ー!針が外れませんー!」

男「…あ、いえいえ…ちょっと検討させて下さい。え…?聞こえませんか」

幼馴染「男ー!男ー!」

男「また電話します、すみません後ろが騒がしくて」

幼馴染「おーとーこー!」



462 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 12:55:37 ID:C4yYTapo [2/2]


男「声が大きい!電話中です!」

幼馴染「………」ビクッ

男「貸して下さい……はい、外れました」

幼馴染「すみません…」グスッ

男「ギルを泳がせておけば、ちょっとくらい待てるはずです」

幼馴染「でも…」ジワッ

男「何か次のキャストを急ぐ理由でも?」

幼馴染「幼友より先に大きいバスを釣りたかったから…」

男「…実際のところ、どっちが先だろうと構わないと思いますが」

幼馴染「………」グスッ

男「すみません、言い過ぎました。…がんばって下さい」ヨシヨシ

幼馴染「私は男の彼女だから…」

男「ん?」

幼馴染「…幼友より釣りが上手くなければ、駄目でしょう?」

男「てーい!可愛い事を言いよってからに!」ナデナデナデナデ



463 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/02(月) 14:33:23 ID:SRDIeRMM


幼馴染嫉妬可愛い。
もし男に捨てられたら俺が引き受けよう。



464 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/02(月) 14:50:59 ID:tXhJUmNg


>>463
てーい!( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

幼馴染 貰い!!



465 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/02(月) 16:16:16 ID:49Gl/Vcw


もらうもらわないの前に、可愛い幼馴染を捨てた男に
てーい!( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン



466 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/02(月) 18:06:43 ID:7cmIFYuc


>>465
男「ありがとうございます!」


おとこは まぞに めざめた!



467 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/02(月) 18:18:20 ID:Tjg6PZSs


幼馴染「てーい…」バーン

男「もっと!もっと強く!!」

男は幼馴染に捨てられてかわりに幼友が男の彼女になり、代わりに俺が幼馴染をもらうのは目に見えている



468 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/02(月) 21:18:38 ID:izy2ynzw


>>467
てーい(#゚∀゚)=◯)`Д゚(○=(゚∀゚#)とーう



469 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 08:40:24 ID:GepRGqBo


男「浅場ではギルのアタックが激しいようなので、ポイントを変更しました」

幼友「ここは?」

男「切り立った崖肌で、岸際からドン深になっています。釣り用に整備された浮き桟橋から狙っていきます」

幼馴染「おおぅ…若干揺れます」

男「落ちないように気をつけて下さい。さすがに寒いです」

幼友「あの岸壁際を狙うんですか?」

幼馴染「なんだかルアーを壊してしまいそうです」

男「そこでこれを使います…ラバァージグゥー」ターッタラーッタタラララー

幼馴染「旧ドラえもんが何か出しました」

幼友「でも効果音が違ったような」

男「しまった、これはキテレツ大百科でした」

幼馴染「オゲレツ大百科?」

幼友「御下劣斎様の子孫、オゲレツが発明品で…!みよちゃん、逃げてー!」



470 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/03(火) 08:48:44 ID:Uv9g0qqk [1/2]


通りで効果音を歌ってみたら違ったわけだwwww
旧ドラはピャコ キコキコキコーンなイメージ



471 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 09:23:29 ID:N/bDEBLg


俺的にはピョン、キカカキーッなイメージ



472 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/03(火) 10:16:29 ID:hd7FEaNI


オゲレツぅ、ワガハイの刀で幼馴染と幼友を両方いただくナリよ
まずは如意光でおっきくして欲しいナリ(ゲス顔)



473 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/03(火) 12:45:21 ID:/TD3A1To


とーう!
 (゚∀゚)
 ノヽノ) =3'A`)ノ ←>>472
   くく へヘノ



474 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 12:47:59 ID:.Z2jgoWw [1/2]


男「岸壁に対面している場合は、水面ギリギリ上の岩に当てて…」シュッ

…コン、ポチャッ

幼友「うわ!本当に水面ギリギリ!」

男「…こうして出来るだけ静かに着水させて、暫くフォール…糸は張らずにたるみだけとって」スゥー

幼馴染「ほほう」

男「…不自然にフォールが止まったら」ピタッ

幼友「止まった…!」

男「アワセるっ!」ビシィッ

幼馴染&幼友「おおおぉぉぉ!」

男「…まあ大抵、岩の出っ張りに乗っただけなのですが」シーン

幼友「釣れてないんかい」



475 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 12:49:06 ID:.Z2jgoWw [2/2]


男「それから岸壁に対して並行に攻める事が可能な場合は、こうして出来るだけ岸壁沿いにキャストして…」シュピッ

幼馴染「おぉ、スレスレです」

男「今度は糸を張ってフォールするも良しです。数秒…イメージ的には2m程度沈めて、柔らかくシャクります」スイッ

幼馴染「ふむふむ」

男「シャクり上げた分だけフォールさせ、またシャクる…こんなっ…風にっ…繰り返してっ…で、たまに小さく刻みます」チョンチョンチョン…

幼友「揺らす気満点な動作ですね」

男「リフト&フォールといいます。是非、幼友ちゃんに実践して頂きたいメソッドですね………おっ!」ビシッ!

幼馴染「また岩の出っ張りでしょうか」

幼友「でも、横に走ってるよ」

…ザバッ、ズバババッ!

男「うーん、まずまずのバスです。これはとっておいてあげたかったですね…」

幼友「もう、私が投げるところのバス釣らないで下さいよー」

幼馴染(…よかった)ホッ



476 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 13:58:09 ID:T4jBlpJw


幼馴染「てーい」シュッ

…コン、ポチャッ

男「おお、なかなか上手いです」パチパチパチ

幼馴染「…スーッと落として」スーッ

男「そうそう」

幼馴染「…止まりません」

男「3m以上ほど落ちたと思ったら、回収していきます。せっかくなので、リフト&フォールを使って浮いたバスがいれば拾いましょう」

幼馴染「ていっ…ていっ…ていていていっ…ていっ」

男「……幼馴染も、すっかり釣り人になりましたね」シミジミ…

幼馴染「アナタ色に染められました…」ポッ

コーイツゥー、キャッキャウフフ…

幼友「とーう」シュッ

幼馴染「痛ぁっ!?」スコーン

幼友「失礼、ミスキャストしたわ」

幼馴染「う…後ろ向きに…ですか…?」ヒリヒリ



477 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/03(火) 17:30:21 ID:SAkYKB66


この幼友、出来るッ!
ルアーを人の頭に狙ってぶつけるなど……相当な技術ッ!
まさか男色に染められたのは……



478 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/03(火) 17:57:17 ID:p.ZNejDk


わ た し で す


479 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/03(火) 18:16:46 ID:gd2Z18U.


>>478
お前だったのか



480 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 20:17:31 ID:YnOCFNC6


幼友「とーう」シュピッ

…ポチョンッ

幼友「まずまずかな…数秒沈めて…」

男「はい、シャクります」

幼友「とーう…とーう…」スイッ…ポヨーン…スイッ…ポヨヨーン

男「いい揺れ…いや、いいリズムです。思わずバスもバストにむしゃぶりつきそうです」ハアハア

幼友(見てる見てる…こんなんどうかな?)ギュッ

男(なな…何故、ロッドのグリップを挟みますか!?)ブフォッ

幼友「とう、とう、とう…」フニフニフニ

男「じ…実に良いアクションです!ロッドになりたいです!」

ヤダーエッチー、イヤースミマセン…ツイ…

幼馴染「てーい」シュッ

男「痛いぃっ!ナイスフッキンッ!?」ビシッ!サクッ!

幼馴染「失礼、アワセの練習をしてしまいましたー」キャッ

男「…本っ当にバーブレスにしといて良かった…」



483 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/03(火) 22:34:17 ID:BEnuW/Ps


アニメ化希望



484 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 22:47:07 ID:E0/MeB/c


幼友「…きたっ!とーうっ!」ビシッ

幼馴染「何ィッ!?」

男「おっけー!アワセも揺れもバッチリです!」

幼友「おお…ギルとは明らかに引きが違う…!」グググッ

男「竿を寝かして、できるだけ水面に出さないように…!」

幼友「あっ…やぁ…だめっ、出ちゃうのっ…!?」

男「言い方がエロいです!…エラ洗い中はラインを張り過ぎずに凌いで下さい!」

…ズバババッ!

幼友「うわ!大きい…!」

幼馴染「さっきの後だから、それもエロく聞こえます!」

男「幼馴染、タモを!」

幼馴染「明日、来てくれるかなー?」

男「それ、もう番組終わります」

幼馴染「空耳ー、………誰も『アーワー』を言ってくれませんでした」チッ

幼友「海ではそのネタにノッたけど、自分がファイト中だと腹たつわー」



485 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 23:51:33 ID:8ETnIYsk [1/3]


幼馴染「もうちょい…ああ、まだ暴れます」

幼友「腕が疲れたよー」

男「がんばって、胸を支えましょうか」

幼馴染「それに何の意味が」

男「寄ってきました。幼馴染、もう一度タモを」

幼馴染「すたんばーい」

幼友「とーう…!」

男「…よし、タモに入りました」

幼馴染「おお…重い、これは先にやられてしまいました」

男「フィッシュスケールに吊るします。…1,062g…おめでとう、文句無しのキロフィッシュですね」

幼友「やったあぁぁー!」

幼馴染「負けてられません、がんばりますっ」フンス



486 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 23:52:27 ID:8ETnIYsk [2/3]


…夕方、五時半頃


男「…さて、そろそろ旅館に向かいましょう」

幼友「楽しかったー、あれからは小っちゃいのばっかだったけど」

男「初めてのバス釣りにしては、上等過ぎる釣果です。バス持ちの写真、さっきメールで送っときました」

幼友「やったあ、友達に送りまくっちゃお!…先に車行ってますねー」

男「幼馴染、じゃあ竿を片付けて…」

幼馴染「てーい!」シュッ

男「…下さい…?」

幼馴染「てーいっ…!」シュピッ

男「………」

幼馴染「ててーいっ!」シュンッ

男(…幼馴染…)

幼馴染「てーいっ…」シュッ…



487 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 23:58:28 ID:8ETnIYsk [3/3]


男「…幼馴染、今日はもうおしまいです」

幼馴染「………てない」

男「…はい?」

幼馴染「まだっ…大きいバス、釣ってない…!」グスッ

男「…明日もあります。夕方になって寒くなりました、早く車に行きましょう」

幼馴染「幼友より釣りが下手なのは嫌です…」ジワッ

男「釣りなんて、釣れる時も釣れない時もあるものです」

幼馴染「男を…とられるから…」ポロッ

男「そんな事にはなりません。釣れない事を悔しく思うのは、一人前の釣り人への第一歩…」

幼馴染「………」グスッ

男「…俺は自分の嫁になる娘が、そんな釣り好きで…嬉しいです」

幼馴染「…本当ですか」

男「もし嘘だったら、俺は釣りをやめます」

幼馴染「…男が釣りをやめるわけ、ありません」ニコッ

男「だから、本当です」ナデナデ



488 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/04(水) 00:06:25 ID:XEyFYZqg


泣いた



489 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/04(水) 00:15:50 ID:bY/EItN.


幼馴染はもうキロオーバーの男を釣り上げてんだぜ…



490 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/04(水) 01:38:30 ID:Tpw3PRsQ


これは泣ける



491 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/04(水) 03:58:08 ID:sF2oi0NI


この男には惚れるわ



492 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/04(水) 05:39:50 ID:.pWhq98o


幼友のロッドになりたい



493 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/04(水) 08:57:59 ID:0WD4oWkg


しかし幼馴染と幼友はよく友情が壊れないな
これが釣りとてーいの力か



496 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/04(水) 12:59:48 ID:8DCsslQQ


………


…旅館への移動中


幼友「それで、旅館の部屋はとれたんですか?」

男「それが…二部屋とろうと思ったのですが、本館の二人部屋と離れの四人部屋の一室ずつしか空いてないそうで…」

幼友「え?…じゃあ離れでいいんじゃないの?」

男「バンガローでは同室としましたが、あれはやはりキャンプのようなものかと」

幼馴染「まあ、確かに」

男「旅館…となると、女性二人との同室は気がひけます。二人で本館の部屋を使って下さい」

幼馴染「…男はどうするのでしょう」

男「俺は車中泊します。宿泊代は三分の一もたせてもらうので、ご心配なく」

幼友「………」チラッ

幼馴染「………」コクッ



497 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/04(水) 13:27:41 ID:SItjlTxE [1/2]


…旅館の受付


女将「いらっしゃいませ、ようこそお帰りなさい」

男「昨日はどうも」

女将「あの、お部屋は二人部屋おひとつと伺っておりますが…」

男「はい、俺は二人を送ってきただけなので」

女将「左様でございましたか、それでは本館のお部屋に…」

幼友「ちょっと待って」

幼馴染「まだ、離れの部屋は空いているでしょうか」

男「ちょ…!?」

女将「は、はあ…四人用の離れなら空いておりますが、そちらになさいますか?」

幼友「はい、それでお願いします」

男「あ、あの」

幼馴染「いいから」

女将「それではお部屋に案内させます、少々お待ち下さい」



498 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/04(水) 13:28:21 ID:SItjlTxE [2/2]


…離れ部屋


中居「お風呂は部屋に備えつけの露天風呂がございます。お食事もすぐにお持ち致します、ごゆっくりお寛ぎになってお待ち下さい」

幼友「どーもー」

幼馴染「お茶、淹れます」

幼友「おー!露天風呂、コンパクトだけど綺麗ー!」

幼馴染「…男、どうしましたか」

男「どうも、落ち着きません…」

幼友「何をいってるんですか、今さら。今夜は飲みますよー!」

幼馴染「昨日も飲んだくせに」ボソッ

幼友「うるさーい、あんなつまらん席の酒と一緒にするなー」

男「一人はお付き合いしている相手とはいえ、女性二人と同室で旅館って…なんだかすごい事です」

幼友「男さんがそんなにウブだとはねー。まーまー、私達の仲じゃないですか。今夜は寝かしませんぜ…?へっへっへっ」ハアハア

男「ああっ、いけません…私には心に決めた御方がっ…」

幼馴染「てーい」ベシッ



499 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/04(水) 13:46:43 ID:VXdrinY2


とーう! とーう!



500 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/04(水) 15:36:58 ID:VfJma40s [1/2]


男(食事の前に二人とも風呂に行ってしまいました…)

男(…どう考えても、この離れの庭先に出れば覗けてしまいますが…)

悪魔男『何強がってんだよ、片方は彼女だろ?覗いたって怒りゃしねえよ!』

天使男『いけません!それは幼友ちゃんに悪いだけでなく、幼馴染への裏切りです!』

悪魔男『昼間はさんざんあのパイオツカイデーを凝視したくせに、今更いい子ちゃんぶりやがって。馬鹿かっての!』

天使男『どうしても目がいくのと、故意に風呂を覗くのじゃ大違いです!』

悪魔男『ほら、目はいくんじゃねえの』

天使男『え!?…い、いや…それは言葉のあやで…!』

悪魔男『あーあ…露天風呂じゃ今、ささやかなてーいと豊かなとーうが並んでんだろーなー。両方楽しめる機会なんて、もう無いだろーなー?』

天使男『…両方……』ゴクッ

悪魔男『いやー、生きてる内に拝みたかったなー。見るだけなんだけどなー』

天使男(見るだけ…か…)

悪魔男『きっと心洗われるような眺めなんだろーなー』

天使男『こ、心を洗うためなら…仕方ない…かなっ?』テヘッ

男(……いざ、ゆかん!てーいととーうの真実を見届けに…!)



501 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/04(水) 16:01:57 ID:VfJma40s [2/2]


男(…いい具合に、庭先には灯りがありません)

男(砂利は踏まずに…そーっと、そーっと…)ジリジリ

…アイカワラズスレンダーデイイヨネー
ワタシハモット、オオキクナッテホシイデス…

ナニヨー、タクサンモンデモラッテルクセニー!
ソ、ソンナコトアリマセン!

ジャア、ワタシガモンデアゲヨウカー?
ヤッ…ヤメテクダサイ!アンッ…

ホレホレ、ヨイデハナイカ…ヨイデハナイカ…!
ダ…ダメッ…!

男(聞こえる…花園で天使達が戯れている…!この、竹垣の向こうに桃源郷がっ…)ソーッ

男(ナイスな隙間のある竹垣です…鉄砲垣ですね)ププッ

男(では、ご拝見…!)チラッ

幼馴染「てーい」ブスッ

男「ぎゃあああぁぁぁ!目が…!目がぁーっ!」ゴロゴロゴロ

幼友「容赦無い目潰しだねー」

幼馴染「見ろ、男がゴミのようだ」



502 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/04(水) 16:40:16 ID:qG79YjSk


バレテーラ



503 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/04(水) 20:24:01 ID:4lzLnhFQ


ワロス



504 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 20:27:01 ID:OTHSnlu6 [1/5]


…夕食、配膳後


幼友「おー、豪華ー!」

幼馴染「昨日は地鶏の小鍋がついていましたが、今日は牡丹鍋のようです」

男「目が痛いです」

幼友「ビール!ビール!」

男「今日はどうせたっぷり飲むと思って、氷桶に瓶ビールを何本も漬けて置いてもらいました、目が痛いです」シュポンッ

幼友「わ、先に注いで貰ってごめんなさい」トットットッ…

幼馴染「私も一杯だけ頂きます」

幼友「じゃあ今度は私が注ぎますよ、どーぞ」

男「ありがとうございます、目が痛いです」

幼馴染「自業自得です」

幼友「それじゃ、いつもの三人組で過ごす夜に…」

三人「…乾杯ー!」



505 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 20:27:51 ID:OTHSnlu6 [2/5]


幼馴染「それにしても幼友、昨日のコンパはそんなに酷かったのですか」モグモグ

幼友「そりゃそーよ、よりによって両隣りが、チャラい・キモい・ゲスいの三拍子って感じ?」グビグビ

幼馴染「それは災難でしたね」

男「コンパとか、よくするのでしょうか」グビグビ

幼友「んー、そんなでも。たまたま人数合わせにね…」

幼馴染「それなら尚更めんどくさいですね」チビチビ

男「…幼馴染は、出席の経験は?」

幼馴染「ありません…というべきなのでしょうが、一度だけあります」

男「ほほう、初耳です」

幼友「………」キラーン

幼馴染「でも、つまらな」
幼友「あー、あの時は楽しかったよねー。ね…幼馴染ちゃん?」メクバセ

男「…そうなんですか」

幼友(幼馴染ちゃん、話合わせて)ヒソヒソ

幼馴染(…何を企んでいるのでしょう)



506 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 20:29:04 ID:OTHSnlu6 [3/5]


幼友「そういえば、あの時に携帯番号交換したヒトとは、最近どーなの?」

幼馴染「え…?」

幼友「すごく馬が合ってたじゃない、何回か遊んだんじゃないのー?」ニヤニヤ

男「………」

幼友「けっこう格好良かったし、二人で二軒目に行ったんでしょ?」ニヤニヤ

幼馴染「は…はい、まあ…」

男「…それは聞いていません」ボソッ

幼友「そりゃ言う必要も無いもの、二人が付き合う前でしょ?」

男「うっ…」

幼友「あれあれー?男さんって、意外と束縛きつい感じですか?」ニヤニヤ

幼馴染「ちょ…幼友…」

男「べ、別にそんな事…気にしません」グビグビッ

幼友「私、携帯にその時の写真ありますよ?…たしか幼馴染ちゃんとその人が腕組んでる写真、いやキスしてたんだっけ…あれー?消しちゃったのかなー」

男「なっ…」ピクッ



507 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 20:32:59 ID:OTHSnlu6 [4/5]


幼友「あれ?やっぱり気になっちゃいます?」ニヤニヤ

男「………」ゴクゴク

幼友「まあ、幼馴染ちゃんだって子供じゃないし…ねえ?」

幼馴染「…いや、あの」ハラハラ

男「…幼馴染っ」ゴトンッ…

幼友(…きたーっ)ピッ

男「…俺は、他の女に目をくれた事はありません」

幼馴染「え…え…あの…」アセアセ

幼友「おっぱいにはあるけどね」

男「あの海釣りに行くより前から、昔からずっと幼馴染だけを想ってきました…」

幼馴染「………!」

男「それなのに幼馴染は、そんな浮ついた事をしていたのですか」

幼馴染「し、してな…」
男「言い訳はいいです、付き合う前なのだから…本当は口を出す権利はありません」

幼馴染「男…違います…」



508 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 20:34:05 ID:OTHSnlu6 [5/5]


男「お願いだから…もうしないで下さい。大事な幼馴染を誰かにとられるのは…我慢できません」

幼友「はい、頂きましたー」ピコッ

男&幼馴染「はい?」

幼友「HD画質で録画おっけーです。二人の結婚式で流そうね」

男「ちょ、何を」

幼友「もちろん全部ウッソーですよ。いつも男さん飄々としてるから、たまには余裕の無いとこ見てみたかっただけ」

男「え?…えっ?」

幼友「よかったねー、『大事な幼馴染』ちゃん?」

幼馴染「てーい!てーい!」ベシベシ

幼友「痛いってば…いいじゃん、嬉しかったでしょー?」

男「お、幼馴染…!その携帯を奪って、削除です!」アセアセ

幼馴染「……しません。幼友、後で送って下さい」エヘッ

幼友「よしきた」

男「やめて、まじで勘弁して。お願い、素に戻って頼むから」

幼馴染「昔から想われてたんですね…」キャッ



509 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/05(木) 20:58:59 ID:8Aw5aWUY


幼友の男気に感涙



510 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 22:49:42 ID:Rwtptj0Q [1/3]


男「うぃー、もっと酒だー」ベロベロ

幼馴染「飲み過ぎです」

男「飲まなきゃやってられません、あんな恥かかされて…穴があったらアナゴになりたいです」

幼友「まあまあ、そんな怒らなくてもいいじゃないですか。…ホッとしたでしょ?」トクトク…

男「…まあ」グビッ

幼馴染「それはそうと、幼友はどうなのでしょう」モグモグ

幼友「何が?」

幼馴染「好きな人とか、いないのでしょうか」

幼友「うっ」ブフォッ

男「おかわりー」

幼馴染「仕方がないです…どうぞ」トクトク

幼友「私の好きな人…かあ。そうだねえ…いるよ?」

幼馴染「ほほう」

幼友「…でも、教えない」



511 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/05(木) 23:01:54 ID:joH6zqyQ


まさか俺か?



512 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/05(木) 23:06:10 ID:iV/YNq9.


いや俺だろ



513 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/05(木) 23:09:21 ID:k.I8oo5w


チンアナゴかな



514 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 23:16:26 ID:Rwtptj0Q [2/3]


幼馴染「ずるいです、言いなさい」

幼友「嫌でーす」

幼馴染「どんな人かだけでも」

幼友「………」フイッ

幼馴染「………?」

男「熱い鍋に冷酒、堪りません…」

幼友「……いい人…だよ」

男「牛スジの佃煮、ナイスおつまみです」ゴキュゴキュ

幼友「楽しくて」

男「おお、茶碗蒸しの中に松茸が潜んでいました…!」

幼友「優しくてね」

男「んー、いい香りです」

幼友「…いい人過ぎて、意地悪したくなっちゃうくらい…いい人なんだ」チラッ

幼馴染「……ん?」

男「ふわぁ…酔った、酔ったよー」ケラケラ



515 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/05(木) 23:16:35 ID:w8Zae3Io


男が泥酔している今なら……!



516 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/05(木) 23:19:38 ID:Rwtptj0Q [3/3]


なんか今回、釣りから脱線した恋バナが多くてごめんねー



517 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/05(木) 23:22:09 ID:obxqTQbg


構わん
続けろ



518 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/05(木) 23:22:14 ID:dyqZYHLE


かまわんよ
これはこれで大いに面白いし可愛い



519 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/06(金) 01:09:03 ID:yztgRX..


おい幼友、俺の方見つめてどうしたんだ?



520 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/06(金) 06:06:19 ID:CAGXILDw


幼友「どうやったらそんなにきれいに禿げるのかなーって」



521 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/06(金) 06:27:24 ID:A.2.8g6c [1/3]


七竜のほうだって、男と姫様のいちゃいちゃシーンにも力入れてるのに今更何を
書きたいように書いてくれ

支援



522 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/06(金) 07:51:35 ID:A.2.8g6c [2/3]


連投で申し訳ないがひとつだけ聞かせてくれ




(*'ワ')ノ 浮き桟橋の上でお花摘みはどうしたんですかー?



523 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/06(金) 09:27:34 ID:lzR7ef9g


お前等まとめててーい!



524 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 11:06:28 ID:D1g61/aA


>>521
あ、あっちはスレタイの通りそれもメインのひとつだからね、ね?

>>522
この湖については有料の施設なので、岸の各所に設備もあるわけですよー
むしろ海の船釣りの時はどうしてたんだって、島ですよ島



525 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/06(金) 12:26:12 ID:A.2.8g6c [3/3]


>>524
くだらない質問につきあってくれてありがとう

いつも楽しみにしてます

そっか……海の時は島でか
つまり男は幼馴染や幼友のてーいやとーうがまぶされた魚を旨い旨いと言いながら…

おや、こんな時間に誰かきたようだ



526 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/06(金) 18:29:48 ID:PIVZgjrA


>>525
てーい( ゚∀゚)=○)`Д゚)<・;'



527 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/06(金) 20:11:59 ID:uh2tP9rA


もうひとつの方が佳境に入った
こっちの更新が少し空いても堪えてつかあさい



528 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/06(金) 21:11:59 ID:beJ.zMrk


>>527
てーい( T∀T)=○)`Д゚)<・;'



529 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/09(月) 11:36:45 ID:eS/vzAOQ


早くしないと俺のてーいがとーうされて大変てーいな事になるぞとーう!



530 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/09(月) 12:39:30 ID:iKkLuHME


今まさに向こうがイイトコだからな、のんびりてーいしてようぜ



562 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/11(水) 12:51:34 ID:boafqZ46 [1/4]


待たせた
とりあえずちょっとだけ投下する



563 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/11(水) 12:52:33 ID:boafqZ46 [2/4]


…翌朝


男「おはよおっぱい」

幼馴染「おはようございます」

幼友「おはよー」

男「最終日、昼過ぎには帰路につく事を思えば、チャンスは短いです」

幼馴染「凄まじく気が焦ります」

幼友「余裕しゃくしゃくでーす」

男「…と言っても、もう寒いので朝マズメの恩恵は薄いです。せっかくなので旅館の朝食を頂いてから、すぐに出ましょう」

幼馴染「ご飯に焼き魚、生卵、お味噌汁と味付け海苔とお漬物」

幼友「正しい日本の朝食だね、家じゃ滅多としないけど」

男「酒を浴びた次の日は、こういった朝食が格別に美味いものです」

幼友「未来の嫁、メモった?」

幼馴染「面倒そうなので聞こえなかった事にします」



565 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/11(水) 12:57:22 ID:L0qlDjSM


男「さて、釣り場に戻ってきました」

幼馴染「早く竿をてーいさせて下さい、大きなバスを釣らなくてはなりません」

幼友「ふっふっふ、無駄だよ幼馴染くん。私のキロフィッシュを超えられるとでも?」

男「俺は今日は基本的に幼馴染への個人レッスンに集中します」

幼馴染「そう言うと男は自らの竿を露出し、私の手を半ば無理矢理にそこへと誘う。それがこの個人レッスンの名を借りた、愛の調教の開講となった。私が恥じらいに目を背けようと、男はそれを気にする事もなく寧ろ下卑た笑いさえ浮かべt」

幼友「幼馴染ちゃん、実はちっとも焦ってなくない?」

男「幼友ちゃんも質問やトラブルなどあったらご遠慮なく。使いたいルアーがあったら言って下さい」

幼友「若干の依怙贔屓に不満を感じつつ、今日もまずはラバジで大物を狙います」

幼馴染「目指せ10キロ超え!」

男「それ、世界記録クラスです」



566 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/11(水) 16:38:05 ID:eGan35UE [2/2]


キテ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━イ !!!!!



567 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/11(水) 19:23:10 ID:boafqZ46 [3/4]


男「この辺りは水面下数十センチまで立ち上がった水草の密生地になっています。その中に潜むバスを狙いましょう」

幼馴染「なんだか難しそうです」

男「どんなルアーを使うか次第です。まずは昨日使って慣れているスピナベで攻めていきます」

幼馴染「なるほど、これなら水草にかかり難そうです」

男「ただしリーリング中は常に水草の抵抗を受けるので、ヒットした場合は強いアワセが必要となります」

幼馴染「それでラインが切れたりしないのでしょうか」

男「今日はスプールを予備で持ってきていたPEラインが巻かれたものに替えておきました。まず心配ありません」

幼馴染「ぴーーーライン?」

男「禁止用語じゃありません。伸ばす棒の間に『い』が入る『ぴーいー』ラインです」

幼馴染「どんなものなのでしょう」

男「複数の細い糸を編み込んだラインで、ナイロンやフロロカーボンのラインの数倍の強度があります」

幼馴染「昨日は何を使っていたのでしょうか」

男「フロロを使ってもらっていました。感度に優れた普通のラインです」

幼馴染「なぜ伏字なのでしょう」

男「いちいち禁止用語にしないで下さい。『□』じゃなくカタカナの『ロ』で、『ふろろ』です」



568 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/11(水) 19:24:56 ID:boafqZ46 [4/4]


幼馴染「てーい!」シュピッ

男「ナイスキャスト、次々休まず攻めていきましょう」

幼馴染「『ガンガンいこうぜ!』ですね」

男「ルアー釣りのスタイルはそれに尽きます」

幼友「『命を大事に』」ボソッ

男「…まあ、水際ですからそれも大切な事です」

幼馴染「今日の私には余裕がないので『ガンガンいこうぜ』のスタンスは変えません、てーい!」シュピッ

幼友「『じゅもんつかうな』」ボソッ

男「釣れる呪文があるなら知りたいです」

幼馴染「あくまでガンガンいきます、てーい!」シュピッ

幼友「『めいれいさせろ』」ボソッ

幼馴染「そこのマネマネ、うるさいです」



569 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/11(水) 19:58:36 ID:GLq8EbSc [1/2]


幼友「ひっとおおぉぉぉー!」ビシィッ

幼馴染「何という事でしょう」

男「大きそうですか?」

幼友「けっこう重い…!でもあんまり暴れない…!?」

幼馴染「フィッシュオフ!フィッシュオフ!」

幼友「ひどっ…やっぱ『じゅもんつかうな』だわ。とーう!…うわー!?何これー!」

男「ああ…ナマズでしたか」

幼友「地震クルー!?」

幼馴染「おめでとうございます」

幼友「外道だと分かった途端にそれか」



570 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/11(水) 19:59:22 ID:GLq8EbSc [2/2]


幼馴染「私もきました!…てーい!」ビシィッ

男「おお、忙しいです」

幼友「フィッシュオフぷりーず!」

幼馴染「でも、あんまり暴れません…てーい!うわ、蛇です!?」

男「カムルチーです。そう大きくないので抜き上げちゃって下さい」

幼友「かむるちー?なんか沖縄の魚みたいな名前ですね」

男「沖縄っぽいですが、朝鮮半島での呼び名です。いわゆる雷魚なので…」

幼馴染「てーい!…男、外して下さい」ヒョイッ

男「…噛まれないように気を」カプッ

幼友「雷、鳴るといいねー」

幼馴染「ねー」



571 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/11(水) 21:10:39 ID:WjOMxq5g


支援てーい



572 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/12(木) 07:36:17 ID:JCSxXAF6


ここで男が幼友のおっぱい揉む→幼馴染の雷が落ちる、って寸法よ、へへへ



578 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/14(土) 22:58:08 ID:s6F3iXqo [1/2]


幼友「男さーん、違うルアー使いたいですー」

男「では幼友ちゃんも、トップウォーターにチャレンジしてみましょう」

幼馴染「ポッパーでしょうか」

男「いいえ、お酒好きな幼友ちゃんにピッタリなルアーがあります」

幼友「そんな言い方したら、私がすっごく酒豪みたいじゃないですか」

幼馴染「…みたい……?」

男「こちらです…ビッグバドォー」トテトテンッ、ホワンホワァーン…

幼馴染「今のは確かに旧ドラえもんですが、何か違うような」

男「しまった、今度はタイトルコールでした」



579 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/14(土) 22:59:10 ID:s6F3iXqo [2/2]


幼友「だから旧ドラえもんが道具を出す時は『ピョン、キカカキーッ』ですってば」

幼馴染「いいえ、『ピャコ、キコキコキコーン』です」

男「自分が発端とはいえ、きのこ×たけのこ戦争くらいどうでもいいです」

幼馴染&幼友「……あぁ…?」ピキッ

男「え?」

幼友「…男さん、どっち派ですか……?」

幼馴染「男は私の彼氏なのですから、タケノコひと筋に決まっています」

男「いや…どうでも…」アセアセ

幼友「はあぁ…?あの甘いチョコと甘いクッキーの、しつこい組合せがいいっての?」

幼馴染「同じ系統の味覚を組合せるのがダメなら、何故おつまみではしょっぱいクラッカーとしょっぱいチーズを組み合わせるのでしょう」フッ…

幼友「違う食べ物の話にすり替えないでくれるかなあ…?」チッ

幼馴染「それで、男の意見はどうなのでしょうか」

男「俺はパイの実が好きです」

幼友「ぱいの実?」ムギュ



580 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 02:04:32 ID:x2rOgGH2 [1/3]


おっ…ぱいの実はいいよね



581 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 03:10:23 ID:BVfNVsNw


おっぱいはいいよね!



582 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 06:41:29 ID:bHsylMgw


おっぱいおっぱい!



583 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 08:10:28 ID:x2rOgGH2 [2/3]


お前らストレート過ぎるだろ…もっと紳士としてのたしなみをだな…



584 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 08:57:47 ID:yfljqQWg [1/2]


>>583
遠慮するなよ
ほれ( ゚∀゚)つおっぱい



585 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 21:06:36 ID:yfljqQWg [2/2]


なんだ、ちっぱいの方が好きなのか
ほれ( ゚∀゚)つ てーい



586 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 21:16:33 ID:8tL62mYc


責任をもって両方ありがたく頂戴します



587 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/15(日) 23:33:10 ID:x2rOgGH2 [3/3]


>>585
ロリ巨乳じゃないな…ごほん、なんでもございません



588 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 12:57:49 ID:ne8Q8NNY [1/2]


男「で、このビッグバドですが」

幼友「なんだか冗談みたいなルアーですね…釣れるのかなー」

幼馴染「さっきトップウォーターと言っていた割には、リップがついています」

男「その通り、このリップで水を受けてクランクに近い動きをします」

幼友「じゃあ潜るの?」

男「いいえ、ビール缶を模したこのボディの高すぎる浮力によって、潜る事はできません」

幼馴染「潜りたいのに潜れない…なんか可哀想です」

男「では代わりに幼友ちゃんの谷間にダイブしましょうか」

幼馴染「てーい」ボフッ、ムニュッ

幼友「あっ…や…幼馴染ちゃんっ」

男「くっそ…間に合わんか」

幼馴染「ふふふ…精神的ダメージを負いつつも、防いだぞ…ぐふっ」ガクッ



589 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 12:58:26 ID:ne8Q8NNY [2/2]


幼友「とーう」シュルルルル…タッパーン

幼馴染「ものすごい飛びようです」

男「そこからゆっくりと巻いていって下さい。テールのスプーンをカチャカチャ言わせるイメージです」

幼友「ゆーっくりねー」カチャコチョカチャコチョ

幼馴染「見た目も冗談なら、アクションも冗談みたいなルアーです」

男「これが意外とデカバスキラーなのです」

幼友「とーうとうとう…うわっ」カチャコチョ…バシャッ

幼馴染「今、何か食ってきました」

男「たぶん30cmにも満たない小バスでしょう。たまーに針掛かりしますが、まずバドは食えません」

幼友「てゆーか、食おうとするのがすごいわ」

男「過去に親鳥の後ろをついて泳ぐ水鳥のヒナが、バスのアタックを受けているのを見たことがあります」

幼馴染「食物連鎖の下克上です」

男「ちなみに俺は夜に川でシーバスを釣っていて、川鵜を釣った事があります」

幼友「川鵜って、黒い鳥ですよね」

男「アワセと同時に空に引っ張られたのは初めての経験でした」



590 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 14:05:13 ID:8sTrJ3O2 [1/2]


幼馴染「男、あとどの位の時間がありますか」

男「焦らないで、じっくり狙っていきましょう。気持ちが先走ってはここぞというチャンスを逃します」

幼馴染「そうはいっても焦ります」

幼友「ふははは、焦るだけ無駄というものだよ!幼馴染ちゃん!」

男「大丈夫、きっと釣れます」

幼馴染「…男を信じます、てーい!」シュピッ

幼友「…きたーっ!」ビシッ

幼馴染「!!」

男「おお、よく引いています。ドラグを出しながら、ゆっくりいきましょう」

幼馴染「き、きっとナマズです」

幼友「うわー、皿洗いしたー!」ドバドバッ

男「バスのようですね、ただ皿洗いではなくエラ洗いです」

幼馴染「……いいな…」



591 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 14:06:00 ID:8sTrJ3O2 [2/2]


幼馴染「…と思ってたら、こっちもヒットです!」ビシィッ

男「おお、ちょっとファイトしてて下さい」

幼馴染「大丈夫…残念ながら、あまり大きくなさそうです。でも、バスでありますように…」

幼友「男さん、タモー!」

男「おっけーい、ナイスサイズです。40cmまでは無さそうですが」

幼馴染「てーい!」バシャッ

幼友「ん?幼馴染ちゃんの、ナマズや雷魚じゃなさそうだけど…」

男「ああ、あれはハスです」

幼馴染「そのバスを狙ってる身としては、嫌がらせとしか思えないネーミングは何なのでしょう」

幼友「名前だけ惜しい!」

男「幼友ちゃんのバスは…重さは915gです。はい、リリースしてあげて下さい。幼馴染、すぐ行きます」

幼馴染「男、車にマジックは無いでしょうか」

男「点々を書いても、バスにはなりません」



592 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 14:27:03 ID:wcJf8Pdk


男「ポイントを変わります。おそらく時間的に、これが最後の移動になります」

幼馴染「気合い入れます」

幼友「余裕しゃくしゃくでーす」

男「ここからは、幼馴染には何としてもキロサイズを釣ってもらうために、ちょっとセコイかもしれないソフトルアーを使って頂きます」

幼友「私は引き続きビッグバドでデカイの狙いまーす」

幼馴染「この際、プライドは捨てて何でもします」

男「別にルール違反というわけではありません、堂々といきましょう」

幼馴染「このポイントはどういう所なのでしょう」

男「湖に川が流れ込む、瀬と深場の入り組んだポイントです。ベイトとなる小魚も多く、一発を狙うには適しています」

幼友「目指せ、記録更新!いくぞー!」ポヨヨーン

男「見てませんね…幼馴染、おまじないです…」チュッ

幼馴染「…がんばります」ニコッ



593 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 18:49:16 ID:jXY8kYIU [1/2]


男「それでは、このソフトルアーを使ってもらいます」

幼馴染「オモリがついていませんが」

男「ノーシンカーで、ストレートタイプのワームの重心部分にマス針をチョン掛けしています。軽くて難しいですが、まずはキャストしてみて下さい」

幼馴染「てーい」

男「瀬になったところに落とし、自然に流します。ノーシンカーなので流れがあるところではほとんど沈みません」

幼馴染「ほほう」

男「流れが弛んで沈み込んでゆくのを待ち、竿を横に寝かしたまま小さくツンツンとアクションを入れます」

幼馴染「…バカじゃないのっ…この鈍感男っ」ボソッ

男「ツンツンという言葉を使った俺が悪いのか」



594 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 18:49:50 ID:jXY8kYIU [2/2]


男「瀬に流されてきたミミズのイメージです。小さくアクションすると『く』の字にフニフニと動きます」

幼馴染「ミミズです、美味しいです、食べるといいです」ツンツンツン…

男「そうそう、あまり引き過ぎると浮き上がってしまうので、あくまで小さく…時には間をとりながら」

幼馴染「むう、だめでした」

男「ルアーが軽いので、スプールの糸に弛みができていないかは時々チェックして下さい」

幼馴染「てーい」シュピッ

男「さすが、渓流でスプーンを投げた経験があるだけにナイススナップ。軽いルアーでも上手く投げています」ウンウン

幼馴染「もっと褒めてもいいですよ」

男「幼馴染、格好いい!」

幼馴染「可愛いの方が嬉しいです」

男「幼馴染、可愛い!」

幼馴染「もうひと声!」

男「幼馴染、ロリ可愛い!」

幼馴染「喜んで良いのでしょうか」



595 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/16(月) 19:04:45 ID:TC.vK4Fo


幼馴染、エロ可愛い!



596 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/16(月) 19:20:38 ID:B.rY78N6


幼馴染、胸ぺったん可愛い!



597 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/16(月) 19:55:56 ID:wPW95p7w


幼馴染、てーい可愛い!


598 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/16(月) 19:57:50 ID:E/sv.vnM


幼友もバドガール可愛いとーぅ



599 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 20:04:14 ID:oXaZ9TtQ [1/2]


幼友(なーんか、イチャイチャやってるねえ…妬けるわ、全く)

幼友(…だからって略奪愛しようってんじゃないけど)

幼友(でも、意地悪はしたくなっても仕方ないよね…?)ニヤリ

幼友「男さーん、助けて下さーい」

男「どうしましたかー」

幼友「ルアーの針が服に刺さっちゃって…」

男「ふう…どこでしょう、針のカエシは潰しているのですぐ取れるはずですが」

幼友「それが、トリプルフックの内二本が刺さっちゃってて…ほら、ここ」ポヨーン

男「ちょ…胸ですかっ」ブフォッ

幼友「針先が怖くて上手くとれないです、お願いできますか?」

男「幼馴染に頼んで…」アセアセ

幼友「女の子に頼むんなら自分でやっても一緒じゃないですかー」

男「わ、解りました…とります」ソーッ

幼友「あれー、ブラの生地まで引っかかってるみたい…ちょっと緩めますね」プチッ、タユン…

男「はぅあ」ズキューン



600 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 20:05:04 ID:oXaZ9TtQ [2/2]


幼友「あれー?どうしたんです、変な声出して…もしかしてヤラシイ事、考えちゃいました…?」

男「めめめ滅相もない!」ドキドキ

幼友「だったらちょっとくらい当たっても構いませんから、服が破れないようにお願いします」グイッ…ムニュッ

男「はわわわわわ…」

幼友「…とれました?」フニフニ

男「もも…もうちょい……とれたっ!とれました!」

幼友「ふう、ありがとーでした」

男「どういたしまして…」

幼友「…男さん?」

男「は、はい」

幼友「……えっち」クスッ

男「はぅ」

幼馴染「お帰りなさい、幼友はどうかしたのですか?」

男「イイエ、ナンデモナカッタデス」

幼馴染「…怪しい」



601 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 21:37:39 ID:rz2y9LYA [1/2]


幼馴染「てーい!」ビシィッ

男「おお、引きはどうですか?」

幼馴染「いまいち」ダバダバダバ

男「それでもちゃんとバスです、30cmくらいでしょうか」

幼馴染「もっと大きいのを…」チャプン

男「幼馴染…気負い過ぎないようにしましょう」

幼馴染「でも」

幼友「きたーっ!大きいかもー!?」バシャアッ

男「…悪いですが」

幼馴染「いいです、行ってあげて下さい」

男「幼友ちゃん、すぐ行くので大事にファイトして下さい!」

幼友「うわー!ドラグ止まらないー!」

幼馴染「………」シュピッ



602 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/16(月) 21:40:04 ID:rz2y9LYA [2/2]


ダイジニ ダイジニー!
オモイデスー!ウデガー!
モウチョット…モウチョット…

幼馴染「………」シュピッ

ナガレノ キツイホウニ ハシラセナイヨウニ…!
ソンナコト イワレテモー!
ウマイウマイ…サカナ ツカレテルヨー

幼馴染「………」ツンツンツン

モウチョイ、ヨセテ…!
エ、ムネヲデスカ?
ソッチハ ヨセナクテモ ジュウブンデス!

幼馴染「………」シュッ

オッケー!キャッチ デス!
ヤッター!キロクコウシン…!?
チョット マッテ…ハカッテ ミマス

幼馴染「………」ツンツンツン

オオ、オミゴト デス!1200gオーバー!
ヤッタ…!
スゴイデス!40cmハ オオキク コエテマス!

幼馴染「………」ピシュッ



603 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/16(月) 22:08:47 ID:1nsQbWYI


あああああ・・・・



604 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/16(月) 22:40:32 ID:GY6XzM6g


幼馴染支援てーーい!



605 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/16(月) 23:00:08 ID:enS7YsWo


幼友支援とーーう!!



606 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/16(月) 23:14:52 ID:hqZP2ZXw


男支援アッーーー!!



607 名前:うにゃ[] 投稿日:2013/12/16(月) 23:45:50 ID:0uq90rnI


>>395 >>433です >>453もです

オレは幼馴染を4円するゼッーーーート!!

Love is Some All
今日もいい日だっ!!ばいちっ!!



608 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/16(月) 23:59:03 ID:WigYYKYs


>>592 の最後がすげーいい



611 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 06:06:57 ID:oDLyG4XY [1/3]



幼馴染「………」シュッ

男「いい感じに使えています」

幼馴染「………」ツンツンツン

男「でも…幼馴染、そろそろ」

幼馴染「………」シュピッ

男「今回は幼友ちゃんにツキがあっただけです」

幼馴染「………」ツンツンツン

男「…もしくは、今日の俺の判断が悪かったかもしれません」

幼馴染「………」ピシュッ

男「昨日も言ったように、幼友ちゃんに釣り負けたからといって俺が変な気を起こすような事は…」

幼馴染「………」ツンツンツン

男「幼馴染…」

幼馴染「…次を、最後の一投にします」

男「…見守っています」



612 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 06:09:20 ID:oDLyG4XY [2/3]


幼馴染「………」スーッ

男「…幼馴染」

幼馴染「……?」ピタッ

男「一緒に、言いましょう」

幼馴染「……男…」

男「振りかぶって、手首のスナップを意識して」

幼馴染「はい」

男「キャスト先をじっと睨んで」

幼馴染「はい」

男「その先にバスがいるとイメージして…!」

幼馴染「いきます…!」



男&幼馴染「てーーーい!!!」シュパァッ



613 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 06:24:34 ID:J8KBPN5g


俺&幼友「とーーーう!!」



614 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 06:41:10 ID:QbHIFjdI


>>613
とーう( ゚∀゚)=○)`Д゚)<・;'



615 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 08:40:18 ID:M2U/B3Kc


男「流して…待って…沈み始めてから、アクションを入れて」

幼馴染「ていていていっ」ツンツンツンッ

男「たまに止めて…」

幼馴染「………」ピタッ

男「ワンアクションだけ」

幼馴染「ていっ」ツンッ

男「……ん?」

幼馴染「…根掛かった……最後がこれですか…」シュン…

男「…いや」

幼馴染「?」

男「アワセろ!幼馴染っ!」

幼馴染「て、てーーいっ!!」ビシィッ



616 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 08:53:37 ID:7F2P2ktI [1/2]


きたか…!!

  ( ゚д゚) ガタッ
  /   ヾ
__L| / ̄ ̄ ̄/_
  \/   /



617 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 09:14:06 ID:XGhrOrDk [1/2]


幼馴染「う…わ…!?ドラグが…!」ジィーーーーッ

男「やっぱり…!この食い方はデカイです!」

幼馴染「すごく重い…!けど、あまり暴れません…ナマズ…!?」グググッ

男「いや、頭を振っています…」

幼馴染「エラ洗いしません…!」

男「本当に大きなサイズのバスはエラ洗いが少ないものです」

幼馴染「…水面に出ます!」ドバァッ

男「大きい…!」

幼友「どうしたの…!?うわ、デカいっ!」

男「大事に…時間をかけて!」

幼馴染「これを釣ったら…男が褒めてくれる…!」

幼友「幼馴染ちゃん…」



618 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 09:14:41 ID:XGhrOrDk [2/2]


幼馴染「あ…だめ…!暴れます…!」ダババッ

男「…がんば」
幼友「頑張れ!幼馴染ちゃん!男さんの彼女なら、釣れるよっ!絶対、釣れるからっ!!」

幼馴染「幼友…」

幼友「タモ、すたんばーい!!」シャキーーーン

男「いい感じです、魚が横になりかけています!」

幼友「あとちょっとー!いけーっ!」



幼馴染「……てーーーいっ!!」



619 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 09:30:10 ID:jChomqHs


神「私だ」



620 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 09:31:34 ID:R62HAbEY [1/2]


なんだお前だったのか



621 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 09:56:29 ID:F6rQVzRU


いいや俺だ



622 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 10:41:26 ID:SWlzmjVQ


>>619は神の仕業だと言いたいのか、神が釣れたという意味なのか



623 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 11:19:57 ID:iwIbvPuo


バスのリリースは犯罪です

2014.1.20追記:外来魚等のリリースを禁じる『リリース禁止条例』が適用される地域では違法との事です



624 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 11:40:01 ID:MWBKt9y6


すんません、今作内で表記してませんでした
一応この話の舞台は有料の管理釣り場という設定で、淡水編の>>265、>>267あたりで書いてます
違法放流は、ダメ絶対



625 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 12:08:43 ID:nKfA7W36


なんか追いつこうとして読んでたらナビのネタが紛れ込んでてニヤけた

てーい



626 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 12:41:35 ID:1.kZyjug [1/3]


…帰り道


幼友「男さん、運転に疲れたら交代しますからね?」

男「ありがとうございます、今のところ大丈夫」

幼馴染「………」

幼友「幼馴染ちゃん、元気出しなよ…」

男「…最後のファイト、本当に惜しかったです」

幼馴染「悔しいです…まさかキャッチ寸前でまた暴れだすとは」

幼友「もう完全にとったと思ったんだけどなー」

男「たぶん50cmオーバー、重さは2000g超えだったと思います」

幼馴染「ううう…」グスッ

幼友「手がすっぽり入りそうな口してたもんねー」



627 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 12:42:41 ID:1.kZyjug [2/3]


男「…でも、釣らなくて良かったのかもしれません」

幼馴染「…え」

男「初めてのバス釣りで、釣って良いサイズじゃありません」

幼友「そんな意地悪言っちゃだめですよう」

男「意地悪で言うんじゃないです。ランカークラスは長年狙って、憧れて…その末に手にする事に価値があるものです」

幼馴染「ランカークラス…」

男「最初の釣行からそれを果たしてしまったら、その後の目標を見失ってしまいます」

幼友「うーん、解らなくもない」

男「かくいう俺も、初めてのランカーサイズはバス釣り三年目にしてようやく手にしました。それはもう嬉しかったです」

幼馴染「…男でも、三年かかったのですか」

男「最初はなかなか40cmを超えない、次は45cmに壁があり、その後の5cmの壁はとてつもなく高い…48cmは出るのに、どうしても50cmを超えませんでした」



628 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 12:44:01 ID:1.kZyjug [3/3]


男「他の釣りでも同じです。シーバスの80cmオーバー、更には90cm、100cm…俺もまだメーターは超えられていません」

幼友「メーターって、すごい話ですよね」

男「マダイの80cm、チヌの60cm、アイナメの50cm、ヘラブナの尺七、岸からの一円玉メバル、渓流の尺半、イシダイイシガキダイサンバソウではなくクチジロクチグロサイズ…憧れを挙げればキリがありません」

幼馴染「…先は長いのですね」

男「おそらく一生かかっても、まだ見ぬ大物はたくさん残す事になるでしょう。…幸せな事です」

幼友「いい趣味ですよねー、釣り」

男「バス釣りの後で言うのもなんですが、誰かが殺した生き物を食べる事しか無い昨今、釣りは自らの手で相手の命と駆け引きをする数少ない機会だと思います」

幼馴染「魚は美味しいです」



629 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/17(火) 12:48:27 ID:faIY2DlE


男「…そんな趣味を気の置けない仲間と共に楽しめる、俺は幸せ者の極みです」

幼友(…仲間…か)

幼馴染「次はいつ釣行に臨みますか」

男「こんな遠出はなかなかできませんが、近場の釣りならいつでも。…最近は二人の掛け声が聞こえない釣り場を寂しく感じるようになってきました」

幼馴染「てーい」

幼友「とーう」

男「また、すぐに誘います。都合があえば来て下さい」

幼友「…男さんが寂しがったらいけないもんね」

幼馴染「仕方ないから付き合います」


(おしまい)



630 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 12:52:20 ID:R62HAbEY [2/2]


乙てーい!



631 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 12:52:36 ID:1TYXCNqA


しつこいようですが、この話は管理釣り場でのバス釣りを題材に書いたつもりです。
外来魚の放流はもとより、リリースを禁じる『リリース禁止条例』が適用される多くの場所ではブラックバスなど外来魚のリリースは違法なので絶対にしないで下さい。



633 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 13:18:16 ID:tOvvnwns


乙ー



634 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 13:42:18 ID:7F2P2ktI [2/2]


乙! これはブラックバス編が終わりってことでこの話が完結編ではないよな!?



635 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/17(火) 13:48:10 ID:HKG6t6ak


乙でした。楽しかったです。
また書いて下さい。



636 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 20:16:41 ID:VFhbE/JM


あざっす
このスレはこれからもゆったり続けます
短い魚種別のオムニバス形式とか、三人の日常とかをまったりと
…いつか、そんなやり方で2スレ目とかいったら怒られるだろうか



637 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 20:19:23 ID:bstF9gOU


最近は釣りssが多くて喜ばしいばかりだね(ニッコリ)



638 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 20:31:33 ID:rpA1ZaDg


>>636
2スレどころか20スレくらい続けてくれても良いのよ?



639 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 20:57:23 ID:mg.TWrnI






640 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 21:19:08 ID:DLO0H.MQ



幼友にはこの曲



641 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/12/17(火) 22:52:29 ID:oDLyG4XY [3/3]


>>640
泣かすない、コンチキショー
歌詞ググっちゃったじゃん

さて、早速だがまだ書きためきってないけど閑話をひとつ投下予定



642 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/12/18(水) 00:46:15 ID:XgngNnHk


>>640
イントロとジャケ画だけで…


.

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/12/18(水) 15:43:11|
  2. 釣りSS
  3. | コメント:2

Santa Claus is Comin' to 町内 (原題/男「サンタが町にやってくる」後輩「町内会の圧力で」)

1 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/12(木) 15:44:00 ID:1UI3rjWM [1/2]


後輩「先輩ー!」

男「おう…お前も今、帰りか」

後輩「そうです、一緒でもいいですか?」

男「でもお前、さっき友達と一緒にいたような気がすんだけど」

後輩「あの娘は反対方向だから、ちょうどこの交差点までなんです」

男「そっか、じゃあ一緒に帰ろう」

後輩「やっほーい、どっか寄ります?」

男「うん、レンタル屋だけ寄るつもりだった」

後輩「オカズのDVD探しですか」

男「馬鹿やろ、制服着てそんなんできるかよ」

後輩(制服じゃなかったら、するのかな…でも学生会員だろうから無理か)

男「お気に入りの洋楽アーティストのアルバム、ようやく発売後一年経つんだよなー」

後輩「あー、洋楽ってだいたい一年経たないとレンタル解禁されませんよね」

男「なんでなのかねー。買おうにも、高校生の財布じゃCD一枚に三千円近く出すのはキツイからな…」



2 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/12(木) 15:45:02 ID:1UI3rjWM [2/2]


…レンタル屋から出て


男「…もうすっかり普通に歩いてるのな、良かったじゃん」

後輩「ああ、何となーく不安ではあるんですけど」

男「お前もツイてないよな、たかが体育の授業で大怪我してさ」

後輩「ホントですよ、前十字靭帯…思いっきり『ブチッ』ていいましたもん」

男「まあ、体育会系の部活やってるんじゃないのが、不幸中の幸い…と言っていいのかな」

後輩「自分でも、これからもハードなスポーツとかはしないような気がしますしね」

男「絵なら足使わなくても描けるもんな」

後輩「うん、脚立使うような大型のキャンパスじゃなかったら」

男「そんなのあるの?」

後輩「無くはないですよ。一回そんなサイズも描いてみたいな…脚立くらい上がれますし」

男「スカートで上がるんなら、下から眺めとくよ」

後輩「いやー、ヘンターイ」

男「変態じゃねえ、寧ろ正常だ」



3 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/12(木) 16:17:16 ID:8wZksoAE


後輩「…もうすぐ、クリスマスですね」

男「町にはとっくに来てるけどな」

後輩「ホントに、どこを見ても赤と白と緑のディスプレイばっかり」

男「最近はハロウィンも定着してきたけど、やっぱりクリスマスは盛り上がりようが違うね」

後輩「日本じゃどっちもただのお祭りイベントですけどね」

男「全くだな…でもお祭り好きな日本人らしいんじゃね?」

後輩「…先輩、イブはどうしてるんですか?」

男「忙しいんだな、これが」

後輩「またまたー、彼女いないくせに見栄張らなくていいですってば」

男「うっせ…でも、予定があるのは本当なんだ」

後輩「え…」



4 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/12(木) 17:53:58 ID:NOcQAFnY [1/2]


……………
………


…後輩宅


後輩「…ただいま」

後輩母「おかえり。寒かったでしょ、先にお風呂行ってらっしゃい」

後輩「ん…着替えとってくる」

後輩母(あら、元気無いわね…)

後輩「…あの、こないだの話」

後輩母「え?…ああ、予定の事?」

後輩「うん…その日でいいから」

後輩母「…そうなの?…まあ、いいんだけど」

後輩「ん…いいの」



5 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/12(木) 17:55:48 ID:NOcQAFnY [2/2]


………



後輩(お風呂…あったかい、けど心が寒いってば)チャプン

後輩(…先輩、来年は卒業だもんなあ)

後輩(最後のクリスマス、一緒にいたかったな…)ブクブク

後輩(……彼女は、いないんだよね)

後輩(でも、クリスマスの予定はある…か、誰かに告白…?)

後輩(それとも、誰かが先に先輩に約束をとりつけてて…告白される側とか)

後輩(……どっちも、やだよぅ)

後輩(…顔、洗おう…水で)ジャーッ…キュッ

バシャッ、ゴシゴシ…バシャッ

後輩(冷たあっ…けど、ちょっとスッキリ)

後輩(…仕方ないじゃん、自分が攻めようとするのが遅かったんだから)

後輩(うん、仕方ない……)



後輩「…………やだよぅ……先輩…」ボソッ



6 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/12(木) 18:10:11 ID:uDoqmlZc


……………
………


…男の部屋


男(えーと、これがM下さんのとこで…順番的に次がA坂さん家だわな)

男(地図…ルート的には、こう回って…)

男(…二回くらい家に戻って、三便に分けなきゃ持ち切れねえな)

………


男母『もうOKしといたからー』

男『アホか!俺だってクリスマスの予定入れようと思ってたんだぞ!』

男母『見栄張りなさんなって』

男『ババア…てめえ、それが息子に言う台詞か』

男母『もう十件以上依頼が入ってるのよ。断れないし、それにどちら様もお心付けの封筒を下さってるわよ?』

男『何…だと…?』ピクッ

男母『そうねえ…十件で一万円には届かないけど、五千円は超えてるわ。まだあと二十件以上は依頼があるでしょうね』

男『やります、町内サンタ。やらせて下さい』キラーン



8 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 11:50:07 ID:9J2zEHS6 [1/3]


……………
………



男(…金に釣られて町内サンタ請け負ったけど)

男(高校生活最後のイブの夜に、それでいいのか…俺)

男(…今さら断れないけどさ)


『…先輩、イブはどうしてるんですか?』


男(女に縁も無く、金のために赤い服着て町内を徘徊してます)

男(…なんて、言えるかよ)

男(漠然とだけど、後輩を誘ってみようかと思ってたんだけどなー)

男(やっぱ、なんだかんだ言っても…俺、アイツ好きなんだよな…ちきしょーめ)



9 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 11:50:56 ID:9J2zEHS6 [2/3]


……………
………


…12月23日、公園


スポ刈「…後輩ちゃん!見っけー!」ユビサシッ

後輩「うああ!まだ『もういいよ』言ってから10秒しか経ってないんだけど!?」

ポニテ「あはは、やっぱり後輩ちゃんは身体大きいから、この公園じゃ隠れにくいねー」

後輩「私は大っきくないよ…クラスの女の子の中では三番目にチビだもの」

メガネ「でも、小学生二年のボク達よりはずっと大きいもん。かくれんぼには不利だよね」

スポ刈「ふははは!俺様の野性のカンから逃れられると思ったかー!」



10 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 11:51:50 ID:9J2zEHS6 [3/3]


ポニテ「明日はクリスマスだねー」

後輩「イブだけどね」

メガネ「ボク、サンタさんには『ポケモンが欲しい』って手紙書いたよ」

スポ刈「俺はキックボード!踏んで進むやつ!」

ポニテ「私は水でくっつけてビーズのアクセサリー作るセット貰うんだー」

後輩(可愛いなー、みんなサンタ信じてるんだ)

スポ刈「俺、去年サンタ見たんだぜ!」

後輩「え?」

ポニテ「私も見たよ。家のチャイムが鳴って、お母さんが『出てごらん』っていうから玄関を開けたらプレゼントが置いてあって…」

メガネ「そうそう。それでちょっと離れたところにサンタがいて、手を振って次の家に行っちゃったんだよね」

スポ刈「俺もそうだったなー。追いかけてつかまえようと思ったんだけど、母ちゃんが『そんな事したら来年来てくれないよ』って言うからさ」

後輩(なんだそれ…誰かがサンタ役をやってるのかな)

ポニテ「後輩ちゃんは?プレゼント、何もらうの?」

後輩「私?…うん、えっとね…」



11 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 12:29:22 ID:prdhCiCQ [1/2]


……………
………


…12月24日、午後七時


男(十二件目、Y山さん家は…これだな。携帯で、お宅に電話の合図を…)

…プルルルル、ピッ

男(すぐにワン切りして、プレゼントを置いて…チャイムをポチッと)

…ピーンポーン

男(…で、逃げる!)シュタタタタッ

男(ふう…20mばかり離れて、子供が出てきたら)

…ガチャッ

アッ!サンタサンダ!
プレゼントガアルー!

男(手だけ振って、さようなら)フリフリフリ

ママー!サンタサンガイタヨー!
ホントニイター!

ガチャッ…バタンッ



12 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 12:30:29 ID:prdhCiCQ [2/2]


男(…やっぱ、親は子供の夢を大事にしてあげたいもんなんだろうな)

男(文句も言ったけど、子供を喜ばせるのは楽しいかも)テクテク

女子中学生「あ!サンタだ!」

男子中学生「うお!まじだ!何やってんすかー」

男「子供の夢を守りにな、町内のバイトだよ」

女子中学生「うけるー、ちょっと一緒に写真いいですか」

男「いいよー」

男子中学生「撮るぞ、めりくりー」ピピッ…カシャッ

女子中学生「ありがとー、サンタさん頑張って」バイバーイ

男「あいよー」バイバーイ

男(…今日だけだよな、こんな事してても不審者に思われないのは)

男(やっぱ、結構楽しいな…町内会のじいさまが毎年やってたわけだ)

男(でもあのじいさんも、腰悪くしたもんなー)

男(よっしゃ、二代目町内サンタ…がんばるか)



13 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 12:40:37 ID:O1Jo0N8E


男(次は…げげ、ポニテちゃんの家か)

男(あの娘はごく近所だし、俺の顔をよく知ってるからな…サンタ帽を目深にしとこう)

ピンポーン…シュタタタタッ

…ガチャッ

…ア!サンタサンダー!コトシモキター!
アリガトー!

男(よかった、気付いてはないかな…?)フリフリフリ

男(よし、次は…O田さん家だな)テクテク





…アレー?
サッキノサンタサンッテ…
ナンカ、ミタコトアルヨウナ…?



14 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 12:57:08 ID:liprfRXk [1/2]


……………
………



後輩(今日は、疲れたな…)

後輩(…先輩、誰といるんだろ)

…ピッ


*****

件名…メリークリスマス
本文…寒いですね。先輩、どうしてますか?

*****


後輩(…送信…っと)

後輩(今日、会いたかったな…)


…キラキラリーン、ピコーン


後輩(あ、返信…すぐに来た)



15 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 12:58:00 ID:liprfRXk [2/2]


*****

件名…Re:メリークリスマス
本文…ホント寒いな。ただいま絶賛、サンタ中だよ。

*****


後輩(サンタ中…か)

後輩(誰にとってのサンタなんだろ…)

後輩(……もし女の人なら、サンタ役をしてるって事は…)

後輩(…うまくいっちゃった…って事だよね)

後輩(……へこむなあ…)

後輩(先輩…好きなんですってば)

後輩(言えてないけど…)

後輩(…私のサンタに…なって欲しかった…なあ…)



16 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 14:31:27 ID:w5XwY4Co [1/2]


……………
………


…翌朝、男の家


男(よーし、ご近所さんからの心付けも貰ったし…ちょっくら後輩にプレゼントでも買って、ビシッと告白すっか)

男(今日が本当のクリスマスなんだから、遅かないだろ)

…ピーンポーン

男(誰だ?朝から…)

男「はいはーい、今開けますよーっと」ガチャッ

ポニテ「おはよう、サンタのお兄ちゃん!昨日はプレゼントありがとう!」

男「………何の事かな?」ダラダラ

ポニテ「誤魔化さなくていーよ、お兄ちゃんがこの町のサンタだったんだね」

男「はっはっは、訳のわからない事を」ダラダラ



17 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 14:32:22 ID:w5XwY4Co [2/2]


ポニテ「大丈夫、お兄ちゃんがサンタな事は秘密なんでしょ…誰にも言わないよ?」

男「………」

ポニテ「サンタさんって、普段は学校行ったりしてるんだね…知らなかったよ」

男(……ん?)

ポニテ「サンタさんも年に一回の仕事だけじゃダメだもんね」

男(これは…バレてるけど、夢は壊れてないな…)

ポニテ「他の大人のサンタさんも普段は違うお仕事してるんでしょ?」

男「…バレちゃったかー、そうなんだよ…サンタも普段は大変なんだ。北欧の元祖サンタさんも、普段はトナカイの牧畜とかしてるからねー」

ポニテ「やっぱりそうなんだー」

男「でも、本当に内緒にしといてね?」

ポニテ「うん、約束するよ。…でも、その代わりにひとつお願いがあるの…あと一人だけ、サンタさんの正体を教える人がいても…いい?」



18 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 14:47:24 ID:VgNE8uGM [1/3]


……………
………


…近くの病院


男「…ここにお友達がいるの?」

ポニテ「うん、ケンサニューインしてるの」

男「正体がバレちゃいけないから赤い服は着れなかったけど、いいのかな…」

ポニテ「大丈夫、私が本当のサンタさんだよって説明するから」

男「それで信じてくれるといいけど」

ポニテ「それにその人は高校生だから、サンタさんが本当の事を話したらきっと解ってくれるよ」

男「え、高校生なの?」

ポニテ「うん…『すとーかー』なんだって」

男(ストーカーって…意味解ってんのかな…ヤバイ人なのか?)

ポニテ「ねえ、行こうよ」



19 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 14:48:39 ID:VgNE8uGM [2/3]


…総合案内


男「まずはその人の病室を訊かなきゃね」

ポニテ「そこはお兄ちゃんにお願いします」

男「えーと、すみません…見舞いに来たんですけど、検査入院されてる……あ、名前は…?」

ポニテ「後輩ちゃん」

男「え…!?」

受付「検査入院の後輩さんですね。…北病棟の512号個室にいらっしゃいます。あちらのエレベーターからどうぞー」

男(後輩…同じ名前なだけか…?)

ポニテ「お兄ちゃん、早くー」

男「あ、ああ…」



20 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 14:50:02 ID:VgNE8uGM [3/3]


………



ポニテ『後輩ちゃんは?プレゼント、何もらうの?』

後輩『私?…うん、えっとね…実は私、明日から入院なんだー』

ポニテ『ええっ、どこか悪いの!?』

後輩『ううん、もう悪いところが治ったから…その検査入院なの』

ポニテ『ケンサニューイン…でも、明日は家にいなきゃサンタさんが来ないよ…?』

後輩『そうだね…サンタさん、会いたかったなあ』

ポニテ『後輩ちゃん…』

後輩『ごめんね、ありがとう。今日はじめて会ったのに、私を心配してくれるなんて…ポニテちゃんは優しいね』

ポニテ『後輩ちゃん、いい人だもん。たくさん遊んでくれたから…』

後輩『いい人じゃないよ…本当はストーカーみたいなものだもん。近くまで来たけど、会う勇気が無いんだ…』

ポニテ『すとーかーって…何?』

後輩『あ、変な言葉教えちゃったね。知らなくていいよー』



22 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 16:33:42 ID:A7vYxd2E [1/6]


……………
………


…512号室


ポニテ「お邪魔しまーす」

後輩「え…ポニテちゃん、なんで…」

男「まさか…本当にお前だったか」

後輩「先輩っ…!?うそ…!え…えっ…!?」

ポニテ「あれ?知り合い…?」

後輩「うわ…!どうしよう、髪も梳かしてないのにっ!」

男「…お気遣いなく」



23 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 16:35:38 ID:A7vYxd2E [2/6]


ポニテ「知り合いなんだったら余計にびっくりするよね?えへへ…実は、このお兄ちゃんはサンタさんなんだよ!」

後輩「…サンタ…さん?」

ポニテ「こないだ後輩ちゃん、サンタさんに会いたかったって言ってたから…連れてきたの!」

後輩「よく解らないけど…先輩がサンタさん…」

ポニテ「うん!」

後輩「そっか…ありがとう、でもね…先輩は私のサンタさんじゃないんだ」

ポニテ「……え?」

後輩(先輩は、違うヒトの…)

男「いや、俺はお前のサンタになりにきたんだ」

後輩「………私…の…?」

ポニテ「そ、そうだよ!お兄ちゃんが町のみんなのサンタさんだったのは昨日だもん、今日は後輩ちゃんのサンタさんだよ!」

後輩「町のみんなの…サンタさん…」

男「うん…ちょっと、この娘の前じゃ言えないんだけど」



24 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 16:36:20 ID:A7vYxd2E [3/6]


……………
………


…その日の夕方、退院後


男「…たかが一泊二日の入院だったとはな」

後輩「だって足が完治してるかどうかの検査入院ってだけですもん」

男「だからって何も24、25日にしなくても…」

後輩「…それは……先輩がイブの予定があるって言うから…」

男「俺のせい…?」

後輩「………そう、です」

男「…それは、深読みできてしまうけど…それでいいのか」

後輩「………」

男「いや…答えさせるのも、男らしくないか。…後輩」

後輩「はい…?」

男「俺、お前の事…好きなんだ」

後輩「……え…」



25 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 16:36:59 ID:A7vYxd2E [4/6]


男「今年のイブは逃したけど毎年来るんだし。…そんでさ」

後輩「あの…!え…えと…その…!」

男「よかったら、来年のイブは一緒にいたいんだ。だから…」

後輩「ちょ…!えぇ…っと…あの…!」

男「俺と、付き合ってくれたらな…って」

後輩「…は…はい…っ」



26 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 16:38:13 ID:A7vYxd2E [5/6]


男「ごめんな、プレゼント…何も用意できてなくて」

後輩「いいです…充分ですから」

男「よかったよ、卒業までにいいきっかけができて」

後輩「先輩が行く大学、隣の市なんですよね…?」

男「うん、でも電車で二十分ほどだよ……あっ」

後輩「あ?」

男「…プレゼントできるもの、あった」ゴソゴソ

後輩「………?」

男「これ…やるから、持っといてくれよ」チャラッ

後輩「これって…」

男「大学の近くで叔母さんが大家やってるアパート、ゆっくり引っ越しすればいいからって…もうカギ貰ってたんだ。それ、合鍵だから」

後輩「…嬉しいです、ありがとう…先輩」

男「ラッピングも何もしてなくて悪いな。せめてこれから、それをつけるキーケースでも買おうか」

後輩「サンタのバイト代、使っちゃうんですか」

男「おう、それとメシくらい奢ってやるよ」



27 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 16:38:54 ID:A7vYxd2E [6/6]


後輩「ねえ、先輩…来年のイブに一緒に過ごす話ですけど」

男「…うん?」

後輩「私もサンタ、なれませんか?」

男「ああ…そりゃいいな。来年はお前と過ごしたいけど、そっちも気がかりではあったんだ」

後輩「ミニスカサンタやりますよ!」

男「じゃあ、後ろで屈んで見とく」

後輩「いやー、ヘンターイ」

男「はは…でも、さすがにミニスカートは寒いだろ」

後輩「厚手のタイツ履いたら、大丈夫ですよ」

男「…タイツは黒、指定な」

後輩「いやー、ホントにヘンターイ」

男「うっせ、寧ろ正常だよ」



(おしまい)


.

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/12/13(金) 16:58:39|
  2. 男・後輩SS
  3. | コメント:2

農夫と皇女と紅き瞳の七竜『最終部』(原題/同じ)

最終部

『農夫と妻と黄金色の大地』



672 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:42:26 ID:w.v1Ew.. [2/16]


……………
………



小隊長『…と、ついに真竜の二度目のブレスが滅竜を捉えたわけよぉ』


新米兵『ちょっと小隊長…飲み過ぎですって、その話ならもう百回くらい聞きましたし、今夜だけでも三回目ですよ』


小隊長『あー?そうかぁ?』


新米兵『しっかりして下さいよ…明日は総司令殿に会うんですから』


小隊長『いいんだ、いーんだよぉ…総司令殿もどーせ毎晩飲んでらぁ』


新米兵『もう…頼みますよ、ほんと…僕は総司令殿には会った事無いんですから』


小隊長『大丈夫、だいじょーぶって…おいバーボンがもう空いてるぞぉ』



673 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:43:15 ID:w.v1Ew.. [3/16]


………



新米兵(…大丈夫って言ってたくせに、結局二日酔いで来られないって…なんて体たらくだよ)

新米兵(ああ…やだなぁ、総司令ともあろう方が、怖くないわけがない)

新米兵(…そもそも、なんでこんな片田舎に駐留してるんだろ。都にデンと構えてりゃ、苦労もしないのに)

新米兵(小さな村だから、すぐに会えそうだけど…それっぽい建物…大きな建物自体が無いぞ)

新米兵(うわぁ…麦畑が黄金色だ、広いなぁ)

新米兵(誰かいたら、訊いてみるかなあ…でも誰も…)

新米兵(あ、女の人がいる。この畑の人かな?)



674 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:44:21 ID:w.v1Ew.. [4/16]


新米兵「…あ、ちょっとすまない。訊いてもいいかね?」


農女「はい」


新米兵(うわ…綺麗なヒトだなあ、こんな田舎にも美人っているもんだ)

新米兵「この村に連合軍の総司令殿がいるはずなんだが、もちろん知っているのだろうな。案内してくれないか」


農女「…わかりました、おいで下さい」


新米兵(ついでにこのヒトの部屋にも案内してくれないかな…うへへ)



675 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:45:23 ID:w.v1Ew.. [5/16]


新米兵(しかし、珍しいよな…左の瞳は綺麗な青色なのに、右の瞳は紫がかってる)

新米兵(なんか神秘的で、余計に色っぽいな…)

新米兵(そういえば、小隊長のしつこい話に出てくる姫様も、真竜の力を引き継いだ時は右瞳だけが紅くなったんだっけ)

新米兵(…その後…えーと、滅竜に二度目のブレス攻撃をした後って…どうなったんだったかな)

新米兵(…何回も聞いたはずなんだけどな、いつも右から左だったから)

新米兵(…えーと、あれ?)

新米兵(………あ、そうだ…確か)

新米兵(そうそう、続きは…)



676 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:46:51 ID:w.v1Ew.. [6/16]


……………
………



男(……滅竜が…真竜が、消えていく)


不思議な感覚で、俺はその様を見ていた。


何故、俺の意識は消えないのだろう。

あの凄まじいブレスをまともに受けたはずなのに。

もう既に死んでいて、魂だけの存在になっているという事なのか。


それならば何故、俺はこうも疲れているんだ。

無理やりに剣を充填して、竜の瞳を割った…それは解っている。

しかし、疲労というのは死んでまで残るものなのか。


それに今、何故俺は宙に浮いている…真紅のブレスは止んでいるのに、どうして視界が紅いんだ。


…違う、これは…紅い球体に包まれて…ゆっくり降りている。

もうすぐ地面だ、一体どういう…



677 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:47:46 ID:w.v1Ew.. [7/16]


不意に、視界の紅色が消える。

地面に着くと同時に、俺を包んでいた球体が弾けたのだ。


幼馴染「男…!生きてる…!?」

時魔女「嘘…!?なんで…よかった、でも早く!女ちゃんが…!」


声を掛けられた事にひどく驚いた。

しかも『生きてる』とは、どういう事だ。

まさか本当に俺は生きているのか、でもそう考えればこの疲労に納得もいく。


時魔女は確かに今、女の名を口にした。

明らかに何か危機的な状況を示唆する言いぶりで、俺を呼んだ。


駆け寄りたいのは山々だ、でも…もう…身体を起こしてすら…



678 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:48:43 ID:w.v1Ew.. [8/16]


地面に倒れ込んだ俺は、情けなくも騎士長に抱えられて女の元へと運ばれた。

元の真竜の巫女と並んで寝かされた女は、目を閉じて動かない。


男「…女……」


俺だけが生き残り、女を失ったというのか。

そんな、最も望まない結末を見るくらいなら、いっそ俺も死んだ方がましだった。


男「女…嘘だろ…おい、女…」


真っ直ぐに下ろされた彼女の手を握る。

俺の掌の中、冷たい指輪の感触が伝わった。


…そうだ。


俺は結局、一度もこの指輪を正しく身に着けていない。

せめて、今…彼女を弔うためにも。


俺は右手だけを女の掌から放し、自分の胸元のペンダントを引き千切った。

そして、そのトップに提げていた対の指輪を…



679 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:49:48 ID:w.v1Ew.. [9/16]


男「これ…は…?」


指輪の台座、その石に色が無い。

あの、サラマンダーの瞳を切り出した紅い宝玉の欠片が、まるで金剛石のような透明な輝きに変わっている。


男(…まさか……)


あとの片手で握っていた、女の掌を放す。

その薬指に通された彼女の指輪、その石もまた透明になっている。


咄嗟に女の胸の間に耳を当てた。

微かに伝わる、定間隔の愛しい心音。



男「生きてる…!」



680 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:50:50 ID:w.v1Ew.. [10/16]


時魔女「本当に!?…ちょ、男!キスして、キス!」

幼馴染「そうだよ!王子様のキスで目が覚めるかも!」


…そうか。


きっと俺を包んでいた紅い球体は、同じ紅き瞳の力から守ってくれた結界。

女は真紅のブレスによって片瞳分の生命力を全て使い、死ぬはずだった。

しかし彼女もまた、片瞳分の他に小さな欠片を持っていたから。


幼馴染「騎士長様、無理矢理キスさせてやって下さい!」

男「馬鹿言え、生きてりゃその内…」

時魔女「大丈夫!今の男はヘロヘロで抵抗出来ないから!」

騎士長「承知した」


冗談かと思っていたのに、騎士長は本当に俺を押さえつけ始める。

確かに力が入らず、何の抵抗もできない。


女の眼前まで顔を運ばれた、その時。


女「……あ…れ…?私…生きて…?」

男「…女!」



681 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:52:20 ID:w.v1Ew.. [11/16]


目を開けた女、その右瞳はほのかに紫に染まっている。


女「男さん…!貴方も…生きてるんですか…!」


彼女の表情を最初に支配したのは、驚きの感情。

そしてすぐに喜びを経て、安堵の泣き顔に変わる。

それを見られたく無かったのか、女は俺の首に腕を回すと、半ば無理矢理に口づけた。


幼馴染&時魔女「……!!」


その腕が震えているのは、きっと嗚咽を堪えているからなのだろう。


少しして唇を離した彼女は、周囲にニヤついた面々がいる事に改めて気付く事になる。

そしていつものように、頬を真っ赤に染めて俺の胸に顔を埋めた。


その時、不意に女の温もりとは違う暖かさが背中を覆う。

外輪山の高さを超え、このクレーターの中央を照らす朝日だ。


騎士長「…終わったのだな」

幼馴染「そう…ですね」





時魔女「……チッ、寂しいぜ」





682 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:53:25 ID:w.v1Ew.. [12/16]


巫女は俺がグリフォンの背に乗って間も無い頃、息をひきとったという。


女に真竜の力を託し巫女としての役割を終えた彼女は、ようやく涙を零したそうだ。

穏やかに微笑んで、最後に『やっと、あの人を許して差しあげられる』と言い残して。

そのままの表情で、彼女は眠った。


幼馴染「…落ち着いたら、埋葬してあげないとね」

時魔女「翼竜と一緒にしてあげるのが、いいと思うんだ」

男「ああ…この場所でな」



683 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:54:34 ID:w.v1Ew.. [13/16]


月の副隊長「…隊長殿、よくぞ…滅竜を討たれましたな…」


俺の元を訪れた副官は似合わない涙に目を潤ませて、座り込んだままの俺の前に膝をついた。


月の副隊長「元よりの軍人ではない隊長殿が、あの時強い心を失った…それは仕方の無い事」

男「…情け無いところを見せたな」

月の副隊長「何を言うのです…貴方は我々が誇るべき、素晴らしい指揮官でありました」


彼がその右手を延べる。

力無く、それを握り返す。


男「だが、すまない…最高の副官は二人いる事にさせてくれ」

月の副隊長「ほう、妬けますな。その強者とは、一体…?」

男「俺を…命を救ってくれた者がいる」


俺は青い空を見上げて、でもそこに彼の者の姿を想う事はしなかった。

あいつはこんな青空の背景が似合うような人間ではない。


男「…なに、ただのゴロツキではあるのだが」



684 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:55:55 ID:w.v1Ew.. [14/16]


時魔女は星の副官に抱きついて、子供のように泣いている。


まだ二十歳にも満たない彼女だ。

数ヶ月もの間、この異国の地で慣れ親しんだ者もいない環境に耐えてきた。

まして命すら危機に晒しながらの事、辛く無かったわけがない。


ただ、少しでもその寂しさを紛らわせてくれる存在があったとしたら。

それは今、白夜新王に労いの言葉を掛けられている騎士長…ではなく、その程近いところで彼を見ている女性だったに違いない。


彼女は先刻、再会を果たした恩師に肩を抱かれて涙を零していた。

その後には共に修練に励んだのであろう門下生の仲間と、顔をぐしゃぐしゃにして抱き合っていた。

だからきっと、瞼が腫れてしまっているに違いない。

水に濡らした拭き布を目に当てる彼女には、そんな顔を見せたくない相手がいるのだろう。


まだ戦いが終わって一時間と経たない。

たったそれだけの間でも、騎士長と幼馴染の距離感が微妙に変わった事は察せられた。


…僅かに、ほんの少しだけ、でも確かに。

五年前と同じ、ぐっ…と締め付けるような痛みが俺の胸を責める。



685 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:56:45 ID:w.v1Ew.. [15/16]


男「…なんとも壮観な事だな」

騎士長「まさかこのような日が来るとは」

時魔女「ドラゴンキラー集結!なんかキメのポーズでも考える?」

大魔導士「なんだ…儂と旭日の老いぼれ以外は小童に小娘…優男、拍子抜けするな」

幼師匠「なに、落日の…儂から見ればお主も小童よ。ほっほっ…!」


五人の戦士が集う。

中には争いの歴史を持つ国もある、それがこうして共闘する事など誰が予想できたろうか。

まだ芽生えたばかりではあるが、この絆こそが真竜が人間に託した希望となり得るのかもしれない。


大魔導士「全てのドラゴンキラーが揃ったのだ、勝利して当たり前というものよ」

時魔女「滅竜を倒したのは真竜だけどね」

騎士長「違いない。だが落日や旭日が力を貸してくれなければ、勝利は無かった」

男「そうだな…でも、ドラゴンキラーと呼ぶに相応しい者は、もう一人いるんだ」

幼師匠「…ほう、どのような者かな?小童か小娘か、優男か老いぼれか…」


その者は身体を失ってなお、あの巨大な竜に抗った。


男「強いて言えば優男が近い…でも騎士ではなく、偉大な魔導士だ」



686 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 19:58:25 ID:w.v1Ew.. [16/16]


後に『竜の聖戦』と呼ばれるようになるこの戦い。

最後の一日だけを数えて、戦死者は月影軍二十四名、落日軍八名、白夜軍十四名、旭日軍十名の計五十六名に上った。


外輪山上からの砲撃に徹した星の軍に犠牲は無かったが、瞳を集めようとする翼竜に襲撃された際に最も大きな被害を被ったのは星の国。

どの国が最も栄光や損害を大きく分けたという事も無いと言える。

それ故にどこか一国が崩壊した月の国の所有権を主張する事も出来ないのは不幸中の幸いだった。


落日、白夜、旭日の三カ国はそれぞれの王の命を受けての派兵だったが、他国間との摩擦を恐れて通告はしなかったらしい。

星の国については、星と月それぞれの副隊長が中心となって組織された非公式の派兵だったらしく、漏洩を恐れて時魔女に伝える事も出来なかったそうだ。

それでもその派兵があったからこそ他国に対して面目を保つ事ができたと思えば、副隊長らに処分が科されるとは考え難い。

第一、世界の危機を救った英雄達に処分など科そうものなら、自国の世論が黙っていまい。


とにかく幸いにも各国間には摩擦などが生じる事は無く、以前と変わらない国交が続く事となった。


いや…少しだけ、変わった事がある。

落日も共同の通信網に参加した事と、月の国が無くなったため事実上の終戦となった事だ。


人間の世界は一歩だけ、真竜が望んだ成熟したものに近づいていた。



689 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:18:39 ID:gQV2gQgQ [2/17]


……………
………


…三年後


納屋の中で草刈り用の大鎌を研いでいると、がたん…といつもの建て付けの悪い音と共に扉が開いた。

天窓の明かりだけだった少し薄暗い室内に、外の眩しい光が差し込む。

その光を背景とするように姿を現したのは、美しき我が妻。


女「男さん、お客様がいらっしゃってます」

男「女…お前、また畑に行っていたのか。大人しくしてろと言っただろう…」

女「だって、退屈ですもの」


彼女は少し拗ねたような顔をして、自らの腹を手で撫でた。

それは俺がいつも『大人しくしていろ』と彼女を咎める、その理由が宿るところ。

まだ目に見えて判る程ではない、俗に安定期と呼ばれる時期には達していない。

だからつい、俺は口うるさくしてしまうのだ。



690 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:26:44 ID:gQV2gQgQ [3/17]


新米兵「あのー、ここは…私は総司令殿のところへ案内しろと頼んだのだが…」


彼女の向こうから客人が顔を覗かせる。

まだ若い、入隊したての兵士なのだろう。

…知らないのも無理は無いな。


男「ああ…よくきた、疲れたろう。女、茶を淹れてくれ…家に入ろう」

女「はい、今日はお隣に貰ったジャスミン茶にしますね」

新米兵「いや、私は総司令殿をだな…」

男「…まあ、知らないのだからな。こんな格好をしている俺が悪いのだし…構わん」


彼は首を傾げ、暫く言葉の意味を考えたようだった。

やがて少しずつ理解がいったのか、その顔を青くしてゆく。


新米兵「ままま、まさか…貴方様が…」

男「ああ…連合軍総司令なんて柄じゃないんだが、一応そういう事になっている」


泣きそうな表情をしながら、慌てて敬礼の姿勢をとる兵士。

俺はその肩を叩いて「気にするな」と笑っておいた。



691 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:28:08 ID:gQV2gQgQ [4/17]


あれから一年近くは元・月の国がどうなるかは定まらなかった。


結局、どの国からも不満が出ないよう共同統治という形をとる事となり、その大陸には連合軍が置かれる事となる。

それぞれの国力に応じ、基本的には保つ軍備の半分を出し合った、総合的に見れば世界最大にして最強の軍という事だ。

星、白夜、旭日、落日それぞれから四将軍という位置づけの大幹部を置き、属する国を持たないという理由でなし崩し的に俺が総司令に据えられてしまった。


とはいえ、連合軍には普段の仕事は無い。

未だ無いが、国際的な有事やどの国の領地でもない地域での争いにだけ干渉する事となる。

それ以外では、せいぜい公海や砂漠に現れる魔物を征伐する事があるくらいだ。


そして今回、この新米兵が俺を訪ねてきた理由はその後者にあたるものだった。



692 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:28:51 ID:gQV2gQgQ [5/17]


男「…で、その砂漠に現れるサンドワームを連合軍で何とかしろと」

新米兵「はっ!そのように伝令を受けております!」

男「サンドワーム…しかも複数か、なるほど砂漠の民の手には負えんだろうな」


やはりヴリトラがいなくなると、そういう魔物が幅を利かせるようになるんだな。


男「やむを得んか…でも砂漠は気が乗らんなあ」

女「何をだらしない事を、困っている人がおられるのですから行ってあげなきゃダメです」

男「でも、二ヶ月以上かかるからな…」

女「そんなに早く産まれませんよ、心配しないで…子育ての先輩も近くにいるんですから」


だめだろ、あいつは。

だって腹に子供がいる時にグリフォン乗り回してたんだぞ。


…そうだ、砂漠までグリフォンを使えば期間を相当短縮できないだろうか。


男「よし、新米兵…白夜将軍のところへ行くぞ」

新米兵「はっ!すぐに馬を引いて参ります!」

男「馬鹿言え、なんで三軒隣に行くのに馬がいるんだ…」



693 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:29:53 ID:gQV2gQgQ [6/17]


白夜将軍の住まう家には、子供達が群れていた。


子供「グリフォン乗せてー!」

子供「ちょっ!順番守れよー!」

子供「赤ちゃん見せてー」

幼馴染「はいはい…今日はお終い、グリフォン疲れちゃうもの。赤ちゃんオモチャにしないでねー」


不満を垂れる子供達を宥めながら、彼女はグリフォンの毛を梳かしていた。

すぐ隣に置かれたラタンのクーハンには、もうすぐ十ヶ月になる彼女の愛娘が指を咥えて眠っている。


男「おう、いい天気だな」

幼馴染「あらあら、総司令サマ…今日はどしたの?…兵士さんなんか連れて」

男「ん…仕事の話だ。白夜将軍サマはいるか?」

幼馴染「今、畑にカボチャ採りに行って貰ってるの。すぐ帰ると思うよ」



694 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:31:31 ID:gQV2gQgQ [7/17]


彼女の言う通りじきに戻った白夜将軍…騎士長は、俺と新米兵を自宅に招いた。

そこでさっきの話を聞かせ、グリフォン使用の可否を問うが、彼は少しばかり顔を曇らせる。


騎士長「…そうだな、海を渡るところまでは良いのだが」

男「そこからは?」

騎士長「グリフォンは暑さに弱い、砂漠までは行かせられんな…」


…どうやら、あの厳しい徒歩による砂漠の行軍は避けられないらしい。

過去の経験を思い返し、なおさら憂鬱になってしまった。


騎士長「まあまあ…仕方がありますまい」

男「騎士長、それは砂漠を歩いてないから言えるんだ…」


まあいい、海を越えるためにグリフォンを使うなら、どうせそこから彼も砂漠を歩く事になるだろう。

北国、白夜育ちの優男…耐えられるかな?



695 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:32:15 ID:gQV2gQgQ [8/17]


二日後、俺達は騎士長のグリフォンに揺られて都へと飛ぶ。

かつては月の王都と呼ばれていた、この大陸の中央に位置する連合軍本部が置かれた都市だ。


結局、女と幼馴染もここまでは見送りに来ると言い、グリフォンの籠に乗り込んだ。

僅か数時間とはいえ、悪阻と揺れの両方に苛まれた女は相当に顔を青くしていたけれど。


軍本部の演習場にグリフォンを着陸させると、そこには既に星の将軍が待ち構えていた。


男「ちょっと久しぶりだな、星の将軍殿…」

時魔女「ちょっとじゃないっ!週に一回は来なさいよね!」

幼馴染「久しぶりー、可愛い妹よー!」

時魔女「お姉さまー!赤ちゃん、大っきくなったねー!」


相変わらず、仲の良い事だ。

この三年間で、見かけは随分大人の女性に近付いたが、中身は変わっていない。

もう少し将軍としての威厳が…いや、それは総司令たる俺にも無いなから言うまい。



696 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:33:08 ID:gQV2gQgQ [9/17]


義足少将「お久しゅうございますな、総司令殿」


また久しい顔が見えた。


「おお…元気そうだな」


互いに歩み寄る道の表面は石畳になっている。

そのため、義足の彼が歩く度に金属音が鳴るのは仕方ない。

まだ少し、彼の足を斬り落とした感触を思い返し、辛くなってしまうけれど。


男「副隊長…じゃなかった少将、義足の調子はどうだ?」

義足少将「…先日、試験的に仕込刀を盛り込まれ申した…」


しゃきん…という音と共に、いつ使う機会があるんだという感が否めない刃が飛び出す。


男「お、おう…」

義足少将「次は車輪を格納してみるつもりらしく…現在、夜は暗さを感知して無意味に光りまする…」


がっくりと肩を落とす少将。

ただ、不幸せそうには思えない。


男「なんか、大変だな。ま…好きで貰った嫁さんだろ、付き合ってやれよ…」



697 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:38:29 ID:gQV2gQgQ [10/17]


男「大魔導士殿、幼師匠殿…暫く軍を頼む。…悪く思わないで欲しい」


さすがに総司令と四将軍の全てが留守にするわけにはいかない。

今回の遠征には俺と騎士長、時魔女だけが向かう事となっている。


大魔導士「何を言っておられるのだ、小童司令官殿。別に砂漠になど行きたくもない」

幼師匠「そうじゃて、こんな老いぼれが砂漠など…行くというより迎えが来てしまうわ」


本来なら年の功を考慮し、この二人のどちらかに総司令の椅子に座って貰ってもよかったはずだ。

しかしどうも二人共、後ろで目を光らせている方が性に合うらしい。

…と言っても、普段は特に口出しもせず、二人でチェスや将棋に打ち込んでいるのだが。


前に訪れた時はどこか異国の遊戯だという象牙のピースを入れ替えて役を作るゲームに誘われ、ひどく巻き上げられた。

こちとらルールすら解らず、ひたすら『ちーといつ』とやらを揃えるしか無いのだから、勝てる訳が無い。



698 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:40:14 ID:gQV2gQgQ [11/17]


………



その夜はかつての月の王城を宿とし、ささやかにも宴が催された。


相変わらず交替で俺に酒で挑んでくる奴らがいたが、今の俺は深酒はしない事にしている。

一応この軍の総司令として、酒に飲まれておかしな命令を出すわけにはいかない。

それと、夜中に身重の妻に何かあった時に動けなくてはならないから。

…まあ、たまには羽目を外す事も無くはないが。


既に砂漠へ派兵する部隊は整っているらしく、明日には出発する事となる。

宴の後、俺と女は早い時間から、あてがわれた部屋へ入った。


男「…懐かしいな」


ベッドに座り、冷たい石壁にもたれると酒に火照る背中が心地良い。


ここは、女と初めて出会った部屋。

そして二人が形式上の夫婦となったところ。


女「…あの時も、あなたがそうしてベッドに座ってて」

男「お前が、そうやって…ドアから現れたんだよな。…覚悟決めた顔してさ」



699 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:41:11 ID:gQV2gQgQ [12/17]


女「ちょっと…照れ臭いです」

男「何を今さら…よせよ、俺まで照れる」


女が歩み、俺の隣に腰を降ろした。

あの時の俺は、不安げな女を少しでも安心させようと精一杯余裕の表情をつくっていた。

でもその内心は酷く緊張して、浴びるほど酒を飲んでいたのに喉がからからだったように思う。


女「あの日、私を受け入れてくれて…ありがとう」

男「何を礼など言う必要がある…こんな田舎農夫の妻になるつもりなんか、無かっただろうに」

女「それは否定できません。…あの時は…ですけど」


柔らかく口づけを交わす。

その後、今も彼女は俺の胸に顔を埋める。

もちろん、もうその表情を隠すため…という意図は薄い。

ただ、それを互いに気に入っているだけだ。



700 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:41:52 ID:gQV2gQgQ [13/17]


紅き瞳の欠片の力で命を繋ぐ事ができた、彼女。

最初は巫女と同じ、不老の命を授かったのかとも考えた。

しかしどうやらこの三年間を見るに、普通に歳を重ねているようではある。

ついこの間も幼馴染と一緒に井戸端で、二十代も半ばになると肌の張りが気になる…なんて言っていたから、多分そうなんだろう。

肌がどうこうというのは、俺にはピンとこないけど。

いつまでも若い妻というのも魅力的ではあるが、やはり共に歳を重ね老いていきたいものだ。


男「女…あの日、この部屋へ…俺のところへ来てくれて、ありがとうな」

女「仕方なかったんです」

男「そりゃ酷いな」

女「…そういう、運命でしたから」


あの日と同じ部屋、同じベッドで眠る。

あの日とは大きく違う感情と、距離をもって。

同じなのは、手を出せない…欲求不満を感じる事だな。



701 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:43:04 ID:gQV2gQgQ [14/17]


…翌朝


既に門の前に兵達が整列している。

少し準備に時間を食った、いい加減に出ないと今日の内に中継拠点まで辿り着けない。


男「…女、行ってくる」

女「はい、気をつけて下さい」


俺は彼女の腹に手を当てて、心の中でもう一度『行ってくるぞ』と声をかけた。

ほんの軽いキスを交わすけど、今は胸を貸す事はしない…それはさすがに照れ臭い。


騎士長「では、留守を頼む」

幼馴染「うん…行ってらっしゃい。ほら、こっちも…してよ」


彼もまた優しいキスを落とす…ただ、それは妻にではなく。


騎士長「よちよち、行ってきまちゅからねー」

幼馴染「てーい!」


将軍ともあろう者が妻に頭を小突かれる姿を見せるのもどうか。


時魔女「でも、今のは騎士長が悪いね」

男「…そうだな」



702 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/10(火) 21:44:12 ID:gQV2gQgQ [15/17]


さあ…行き先が砂漠だというのは気が重いが、もう文句は言うまい。

号令を今かと待つのは、槍兵十名、盾兵十名、弓兵二十名、魔法隊十五名と、海を越えるためのグリフォン十二騎。

幸い、暫く雨は降らなさそうだ。


食料も、野営設備も、当面の充分量を積んだ。

…せっかく妻から解放されるのだから、酒もちゃんと積ませておいた。


魔物を討ち、全ての兵を無事に連れ帰る…それが今回の目標だ。

それ以外の戦果は望まない。

命を賭すつもりはあるけれど、無理はしないでいこう。

七竜を相手にするわけでもあるまいし、そこまで難しい話ではない。

兵達にも、俺にも、生きて戻らなければならない場所がある。



義足少将「…総員、整列!」



ざんっ…と、足を鳴らして兵が姿勢を正した。



fin.






(これ以下は2013.12.24に、まだスレが残っていたため思い付きで投下したクリスマスモチーフの後日談閑話になります)

725: ◆M7hSLIKnTI 2013/12/24(火) 01:28:26ID:jG.vJNd6


幼馴染「お邪魔しまーす」

女「ふふっ…小声にならなくったって、この家には私しかいないですよ?」

幼馴染「あ、そだね…。夜も九時を回ると大きな声を出さないってのが、癖になっちゃってるんだ」

女「娘さんは?」

幼馴染「もう、ぐっすり。…夜泣きはするだろうけどね」

女「今夜はどうしたんです?急にウチで食事をしようなんて」

幼馴染「うん、ちょっとね…。ごめんなさい、準備とか全部させちゃって」

女「どうせ退屈でしたもの、それは全く構いませんよ」

幼馴染「女さん、夕食は食べた?」

女「ほんの軽く、この予定に備えてパン一切れだけにしました」

幼馴染「私も、シチューを小皿に一杯食べただけ。もうお腹ぺこぺこだよ」

女「テーブルのセットはできてますよ。温かい内に食べましょ」


726: ◆M7hSLIKnTI 2013/12/24(火) 01:29:31ID:jG.vJNd6


幼馴染「さっすが、料理上手だね。王室仕込だけあるわー」

女「そんな…ほとんどはこの村に来てから作るようになったメニューばかりですよ」

幼馴染「あ、ちゃんと鶏モモのローストあるね!」

女「ええ、それがいいって幼馴染さんが言ったから」

幼馴染「私も詳しくは知らないんだけどね、欠かせないんだって」

女「そうなんですか?」

幼馴染「うん…じゃあまずは、乾杯だね!」

女「お酒は飲めませんけど」

幼馴染「それはお互い様、もう母乳はあげてないけど…なんとなくまだお酒を飲む気にはなれないんだ」

女「では、健全にハチミツ入りのアップルジンジャージュースで…」

幼馴染「かんぱーい」

女「たまにはいいですね、女同士で夜の密会っていうのも」

幼馴染「そうだね、じゃあ料理いただきます」

女「どうぞ召し上がれ…お口に合いますように」



727: ◆M7hSLIKnTI 2013/12/24(火) 01:30:16ID:jG.vJNd6


幼馴染「どんな教えなのかも知らない異教のハナシなんだけどね」

女「はい?」

幼馴染「白夜の国ではそこそこ知られてる、宗教があるの。今日はその教えでは盟主である神様の誕生日なんだって」

女「へえ…そうなんですか」

幼馴染「夜は静かにその神様の生誕を見守るのが本当らしいんだけど、すっかりパーティーをするのが習慣になってるただのお祭りだそうよ」

女「それでこんな食事会を提案したんですか」

幼馴染「えへへ、楽しい事だけは乗っかっておかないとね」

女「ふふっ…名前も知らない神様の誕生祝いなんて、ただの口実だけですね」

幼馴染「うん、しかも一緒にパーティーを過ごす人にプレゼントをするんだって。神様にじゃないってのが可笑しいよね」

女「何だか神様が拗ねちゃいそうですね」

幼馴染「うん、それでね…これ…私から女さんへの、プレゼントなんだ」

女「えっ!…わ、私…何も用意できてない…」

幼馴染「いいの!いいの…これだけの料理を振舞ってくれるんだから、充分なの」



728: ◆M7hSLIKnTI 2013/12/24(火) 01:30:57ID:jG.vJNd6


女「ありがとうございます…開けてみてもいいですか?」

幼馴染「うん、ちょっと恥ずかしいけど」

女「あ…可愛い、刺繍入りのスタイ…!」

幼馴染「えへへ…慣れない刺繍、がんばってみたんだ。産まれるのがもうちょっと早い時期なら、毛糸のケープとかも考えたんだけど」

女「予定では春ですからね、嬉しい…この刺繍の模様って」

幼馴染「女さんの赤ちゃんが産まれる頃、この村の山にたくさん咲くセージの花をあしらったつもり」

女「ありがとう…大事にしますね」

幼馴染「や、やだな…スタイなんて大事にするもんじゃないよ!実用品だもの!」

女「ううん…大事にします。きっとこの子のお気に入りになるわ」



729: ◆M7hSLIKnTI 2013/12/24(火) 01:32:37ID:jG.vJNd6


幼馴染「…あはは、なんだか本当に照れ臭いや。えっと…い、今は箱のまま外に置いて冷やしてるんだけど、ケーキ焼いたんだ!」

女「ケーキ、すごい!そっちも嬉しいです!」

幼馴染「うん、この日のパーティーはケーキを食べるものなんだって。ワンホール作っちゃったから、二人じゃ食べきれないけど…」

女「あはは…ワンホールなんてすごいですね」

幼馴染「取ってくるね!」

女「はい、じゃあ温かいお茶を淹れます」

幼馴染「………あっ…」

女「…どうかしましたか?」

幼馴染「うん…ドア、開けたら…ほら」

女「あ…雪、うっすら積もってる…」



730: ◆M7hSLIKnTI 2013/12/24(火) 01:33:14ID:jG.vJNd6


幼馴染「こういうのって、ええと…ホワイト…ええと…何てお祭りだったけ」

女「今夜のお祭りの名前ですか?」

幼馴染「うん、そう……クリスタル…じゃなくって……」

女「…月が出てるのに雪が降ってるなんて、ちょっと不思議…でもすごく綺麗」

幼馴染「ああ、だめだ…思い出せないや。うん、ちょっと不思議な景色だね」

女「雪が青く染まってて、幻想的です」

幼馴染「この夜には奇跡を呼ぶ魔法の力があるんだって。そのおかげかもね…」

女(奇跡…魔法……)

幼馴染「来年は、二家族でパーティーできたらいいね」

女「そうですね…その頃も私はお酒飲めないかもしれませんけど」

幼馴染「男とウチの旦那が一緒に飲み始めたら、お互い釘を刺す側にならなきゃいけないしね」

女「あははっ…そうですね」

幼馴染「さあ、女さんは身体を冷やしちゃだめだから…早く入ってケーキ食べよ!」

女(……そんな都合のいい奇跡、起こらない…か)



731: ◆M7hSLIKnTI 2013/12/24(火) 01:34:26ID:jG.vJNd6


男「…騎士長、もう指先の感覚が無いんだが」

騎士長「これ以上、グリフォンの速度を上げたら、それはそれで凍える事になるぞ」

男「あと何分で村に着く…?」

騎士長「もう五分とかかりますまい」

男「暑い砂漠帰りでこの雪に見舞われるとは…身体がついてゆかんな」

騎士長「だから明日、昼間に帰るよう提案したのだ…」

男「そうは言っても、妻の顔が早く見たいのはお互い様だろう」

騎士長「ならば、文句を言いなさるな……ほら、灯りが見えたぞ!もう妻達は夢の中かも知れぬが…」

男「そうであって欲しくはないな、できれば妻の手料理でも頬張って一杯浴びたいところだ!」

騎士長「この時間になって、そんな都合の良い事は無かろう…どうしても奇跡を望むなら、魔法に頼ってみるか」

男「ほう…どんなだ?」

騎士長「奇跡を呼ぶ魔法、今宵だけは願いも通ずるかもしれぬ。妻にあったら唱えてみるといい、その魔法の詠唱は……」



Fin.

.

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/12/11(水) 16:08:01|
  2. ファンタジー
  3. | コメント:20

農夫と皇女と紅き瞳の七竜『第三部』(原題/同じ)

第三部

『真竜の巫女と眼の魔導士』



408 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 13:55:05 ID:qfNwpSHM [2/13]


関所から離れた険しい山を越え、グリフォンの編隊は西の台地を目指す。

星明かりにうっすらと浮かぶ山岳の尾根、彼方に横たわり三日月の光を縦長な帯として映す海。

初めて空から眺める大地は、例え夜の景色であっても目を奪った。


男「…降下してるな」

時魔女「もうそろそろ飛び立って20分経つだろうから、いったん降りて休憩かな」

幼馴染「真下は真っ暗に見えるから、森なのかな…?降りられるところ無さそうだけど」


開けた場所を探して旋回するグリフォン。

少しして針路をとった先には、漆黒に沈む森の中にあってそこだけ星明かりを反射する部分がある。

最初小さな池だと思えたその場所は、近付いてみれば直径半マイルはあろうかという湖だった。

やはり上空から、しかも夜間では大きく感覚が狂うものだ。

湖畔にはなだらかな砂利の浜辺があり、グリフォンの編隊は静かにそこへ降り立つ。



409 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 13:55:38 ID:qfNwpSHM [3/13]


暫し翼を休めるグリフォン達は、湖面に嘴を浸け水を飲んでいる。

その湖の背景、森の彼方に仄かに見える一定の高さで水平に続く稜線こそ、西の台地に違いない。


男「…ついに禁足地に入ったのだな」


果たして翼竜が潜むのは台地の上か、この裾野か…


幼馴染「まだ関所の向こうってだけで、禁足地なのは台地の上じゃないの?」

男「揚げ足とるなよ…入っちゃいけねえんだから、禁足地の内だろうが」

時魔女「『ついに禁足地に入ったのだな…』だって、間違ってんのに格好つけてたよー」


どうも幼馴染と時魔女にかかると緊張感が薄れる。

飛び立つ前の話、ちゃんと聞いてくれていたのだろうか。


男「はいはい、俺が間違ってました…」


だがここでそれを咎めたりすると、決まって屁理屈に丸め込まれるのだ。

俺はあえて気にせず、探索に向けての話をしようと騎士長の元へ向かった。


男「騎士長、ちょっといいか。今後の事だが…」



410 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 13:56:15 ID:qfNwpSHM [4/13]


男「グリフォンは負荷状態で一度に20分の飛行をして、次の飛行までどの位の休息が必要だ?」

騎士長「同じだけも休めば飛べるが…あまり多く繰り返せば次第に飛べる時間は短くなるな」

男「まだ遥かに見える台地の稜線だが、今夜中にあの裾までは飛べるだろうか」


暗くてよく判らないながらも、見渡す裾野に翼竜が潜めるような地形は少ないと思われた。

ならば可能性が濃いのは、台地周囲の起伏に富んだ範囲だろう。


騎士長「それは問題ない。山岳を越える際はかなりの高度を飛んだが、これからは低空を飛ぶ方が安全でもある」

男「飛ぶ高度によって何か変わると…?」

騎士長「高高度では空気が薄くなる故、グリフォンの体力消耗も早くなる。これからの低空飛行では倍も速度が出せましょう」


僅か二十分で山岳を越えたあの速さの倍とは、恐れいった。

さっきは景色を見る事に気を奪われ忘れていたが、今度こそ船酔いの状態を覚悟しなければならないかもしれない。


男「できれば暗い内に裾まで進み、夜明けの薄明かりで一度台地の上を見ておきたい。どこに腰を据えるかは、そこで決めよう」

騎士長「それで良いでしょう。地形を把握した上で、どこで翼竜を迎え討つか定める…賢明ですな」



411 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 13:56:56 ID:qfNwpSHM [5/13]


男「じゃあ、そういう手筈で行こう。グリフォンの休息が充分になったら、教えてくれ」

騎士長「承知した」

男「…では、騎士長も出来るだけ休んでくれ。ただ乗せてもらっているだけの俺達よりは神経をつかう分、疲れるだろう」

騎士長「何、どうという事はない…。それより、男殿…ひとつよろしいか」


既に振り返り、女達の元へ歩もうとしていた俺を騎士長が呼び止める。


男「…何だ?」

騎士長「本来なら大切な戦いを控えた今、話すような事ではないかもしれないが…」


少し言い難そうな話し方、まだ付き合いは浅くとも彼らしくないと思った。



412 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 13:57:27 ID:qfNwpSHM [6/13]


男「幼馴染の事…か」

騎士長「…聞いておられたか、お恥ずかしい」

男「聞いているのは掻い摘んだところだけさ」

騎士長「知っておられるなら単刀直入に言おう。私は翼竜を討った暁には、再度…幼馴染殿に求婚をするつもりだ」

男「…なるほど、随分と惚れたものだな。だがその事は俺に断る必要は無いよ」

騎士長「…男殿に妻があると聞いた時は驚き申した。本当は一度、貴殿と決闘をする覚悟であったのだが」

男「はは…怖い事を。俺は翼竜を倒した後は、妻の為にも死ぬわけにはいかん。だが、模擬戦ならばいつでも受けよう」

騎士長「翼竜を倒した後は…か。相当な覚悟をもって竜に挑むおつもりなのだな」

男「…命を賭して、そう言うと妻に怒られてしまうけどな」



413 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 13:58:00 ID:qfNwpSHM [7/13]


男「…まあ、この話は後だ。戦いが終われば存分に聞くさ。出来る事なら、俺もあいつには幸せになって欲しい」


全ては翼竜を討った後の話だ。

俺が女を本当に妻とするのも、騎士長と幼馴染がどんな道を歩むのかも。

逆賊となった俺達が、どこに身を寄せるか…それも今考えたところで仕方の無い事。

死地を目指そうとするなら、その先の未来を想い過ぎる事は枷にしかなるまい。


騎士長「もう、休息は足り申した。いつでも飛びましょう」

命を賭して挑む。

でもそれは死ぬ事を望むわけではない。

俺にその先を想う権利はあるのか、それを知るために。


男「…行こう。未来を想うのは生き残ってからで、遅くはあるまい」



414 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 13:59:36 ID:qfNwpSHM [8/13]


………



それから数度の休息を経て、遂に台地の麓へと降りる。

夜空の星が巡る位置を考えれば、思う以上に早い時間に着けたようだ。

まだ夜明けまでは三時間ほどもあるだろう。

少し森から距離をとった平原、見通しの効く場所を仮の陣地と選び、幾つかの控えめな焚き火を起こした。

毛布などの荷物は持ってきていないから、各自その火の周りで待機する。


男「夜明けまで交代で見張りだ。グリフォン隊は夜間飛行で疲れた事だろう…残りの者を二手に分けろ」

傭兵長「解り申した、では…」



415 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 14:00:59 ID:qfNwpSHM [9/13]


昨日は日中これといって動いてはいないが、さすがに深夜も過ぎれば眠たくなるのも無理はない。

隊員達は焚き火の周りで、座ったままうつらうつらとしている。

しかし俺は翼竜戦に向けて気が張っているのか、なかなか寝つく事はできずにいた。


男(でも、少しでも寝て万全を期さなきゃな…)


隣で目を閉じ、時折舟を漕ぐようにしている女。

不思議なものだ、こうして彼女の穏やかな横顔を見ているだけで、張り詰めた気分が和らいでゆく。

次第に俺の意識も、眠りの淵へと落ちていった。



416 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 14:04:23 ID:qfNwpSHM [10/13]


………



男(…ここは…?…暗い…空が暗いのか)


『……大丈夫です……』


男(…この声は…女……?)


『私は男さんの妻…でも』


男《…女、どこにいる。何を…》


『…それは形式上の事ですので』


男《…女……どうした、誰と話しているんだ》


『ごめんなさい…男さん』


男《聞こえないのか?…女、何を言っている…》


『貴方の妻となれない事…お許し下さい…』


男《おい、女…!》


『私は……………の妻となります』


男《…待て…どういう事だ…!?…女……女っ…!》



417 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/15(金) 14:05:36 ID:qfNwpSHM [11/13]


……………
………



女「…さん!…男さん!」

男「女…!う…ぅ…ん?…あれ?」

女「どうされたのです?…すごくうなされていましたけど。もう夜明けですよ」


目を覚ますと女の顔が目の前にあった。

冷えた明け方だというのに、俺は額に汗をかいている。


男(…なんだよ、今の夢は)


戦いに備えるつもりだったのに、妙な夢のせいでちっともすっきりとしない目覚めになってしまった。


男(女が俺を捨てて、違う者と結ばれる…か)


もし俺がこの戦いで死ぬのならば、当たり前の話かもしれない。

そうでなければあり得ない…と、信じたいが。



428 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 11:14:33 ID:cehwDkSo [1/17]


グリフォン隊は既に整列し、来るべき決戦に向けて待機している。

他の隊員達も言葉少なく、その闘志を研ぎ澄ましているようだ。


男「騎士長、予定通り薄暗い内に一度台地の上を見ておきたい」

騎士長「ああ、私のグリフォンの鞍を複座としてある。すぐに乗って頂こう」

男「傭兵長、すぐに戻る。暫く指揮を引き継いでくれ」

傭兵長「承知した。何かあったら、幼馴染殿の炸裂の矢を上空に射って頂きましょう」


台地の上、定められた本当の禁足地。

足を下ろす訳でなくとも、そこを見た者など今の世に存在するのだろうか。

俺は騎士長と共にグリフォンの背に乗り、薄っすらと青みを帯び始めた空へ舞った。



429 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 11:15:06 ID:cehwDkSo [2/17]


男「何だ…これは」


台地の上を見た最初の感想は、予想外という表現しかつけられないものだった。


騎士長「なんという…このような地形があり得るのか」

男「あまりに異様だな…自然の摂理によって、こんな形状になるとは思えん」


何も無い、それが最も相応しい表し方だろう。

まるで山を巨大な刃で削ぎ落としたかのような、真っ平らな地形。

高さは500フィート、直径は5マイルほどだろうか…比較できる構造物が何も無いからそれもあやふやではあるが。

これだけの面積が受ける雨も馬鹿になるまいに、何故か台地上には湖はおろか小川すら無い。

それどころか木々の姿も目立った岩も、窪みや丘のひとつさえも無く、まるでテーブルの様な人工的な平坦さ。

しかしこのような真似を人間が出来るとも思えなかった。


男「少なくとも翼竜を迎え討つに相応しい地形ではないな…」

騎士長「身を隠す場所すら無いのでは、有利とは言えますまい」

男「ただ、見張りを置くには優れているな。ここにグリフォンを数体配置すれば四方全て……」


その時、視界の端の空に閃光が映った。



430 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 11:16:01 ID:cehwDkSo [3/17]


男「幼馴染の矢だ…!何かあったか!」

騎士長「男殿、手綱をしっかりと持ってくれ!飛ばすぞ…!」


ものの十数秒、全速のグリフォンが戻った先に見えたのは、夥しい魔物と交戦する隊の姿だった。


騎士長「馬鹿な…!こんなに竜が…!」


その魔物の全てが、竜族。

翼を持つ飛翔竜、地を這う脚竜など幾種もの竜が隊を囲んでいる。

これらの雑多な竜は、個々のつよさとしては七竜には遠く及ばない。

しかしそれでも竜族は強大な魔物として怖れられる存在。

それがこんな数で群れをなすとは、信じ難い光景だった。



431 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 11:17:07 ID:cehwDkSo [4/17]


騎士長は飛翔竜の間を掻い潜り、俺を地に降ろすと長槍を構えて再び空へ飛んだ。


幼馴染「男…!時魔女ちゃんと女さんのところへ…!」

男「解った…!」


女達は台地の崖を背に、赤い肌の竜と対峙している。

俺はそこへ駆けながら、間を阻む蛇の様な竜に切りかかった。


男「女…!少し凌げ…すぐに行く!」

女「はい…!」


彼女の凍結魔法が赤竜の身体を捉える。

威力を思えばやけに詠唱が早いのは、時魔女が時間加速を彼女に施しているからだろう。

本当なら翼竜戦まで魔力や弓兵の矢はできるだけ温存しておきたいところだが、この状況では止むを得ない。


男(くそ…トリガーを引く訳にはいかん!)


しかし七竜の鱗を裂けるこの剣の特殊効果は、肝心の一戦までとっておくべきだろう。



432 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 11:17:39 ID:cehwDkSo [5/17]


男「くたばれ…!!」


数度の斬撃により動きの鈍った竜の首を狙い、渾身の一撃を浴びせる。

喉元を大きく裂かれた蛇の竜が青い血を吹きながら地に崩れた。


男「女!大丈夫か…!?」


彼女らの方を向き直ると、赤竜が力無くその胴を地に擦っている。


女「終わりです…!」


瞬時に現れる雷雲、青白い稲妻。

俺が向かうまでもなく、彼女達は赤竜を仕留めた。



433 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 11:18:10 ID:cehwDkSo [6/17]


男「さすがだな…!だが出来るだけ魔力は温存してくれ!」

女「この程度、何と言う事はありません」

時魔女「女ちゃん、かっくいい!」


息があるかは知れないが、数名の隊員達が地に伏せている。

飛翔竜はグリフォン隊が引きつけてくれているらしく、地上を襲ってはこない。


男(これ以上、兵は減らさせん…!)

傭兵長「隊長殿!一体、行きましたぞ…!」


鰐のような体躯をした脚竜が、似合わぬ速さで俺に迫る。


男「来い…!切り伏せてやる!」



434 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 11:19:01 ID:cehwDkSo [7/17]


少しずつ視界が鮮明になってゆく、太陽が地平から覗き始めたのだ。

そして不意に戦場に射すその白い光線が揺れる。

それと同時に歩みを止め、その身を竦ませる脚竜。


男(何だ…?)


その竜だけで無く、空に舞う飛翔竜も含めた全ての竜が身体の向きを変え森へ、あるいは空の彼方へと散ってゆく。


幼馴染「どうしたの…急に」


また、太陽の光が陰り揺れた。


男(何かに怯えていた…まさか…)


上空から騎士長の声が響く。


騎士長「男殿…!東だ、朝日を背に…!」


眩い旭日に浮かぶシルエット、悪魔のような蝙蝠の翼。

竜達が怖れ、道を開けた主の姿がそこにあった。


男「来たか…翼竜…!!」



435 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 12:27:19 ID:cehwDkSo [8/17]


数名でも兵は失われた。

多少なりとも魔力や矢を消費してはいる。

迎え討つと呼べるほど体制が整っているわけではない。


男「…多くは言わん!」


それでも背後にする台地の崖には身を潜められるところは幾らかある。

あのまま雑多な竜に人員を削られる事を思えば、今挑む事は不利ではない。


男「総員…!健闘を祈る!…そして」


瞬く間に翼竜が接近する。

先ほどまでの乱戦に気付いていたのか、真っ直ぐにこちらを目指している。


男「…生き残れ!竜を堕とし、互いの肩を抱こうぞ!」

隊員「おおおおぉぉっ!!」


グリフォン隊がV字編隊を組み、翼竜を迎える。

速度を落とし、咆哮を上げる翼竜。

その瞳は、敵意と紅き光を湛えていた。



436 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:26:12 ID:cehwDkSo [9/17]


グリフォンが翼竜を取り囲むように散開する。

翼竜の高度のやや上、翼の周囲でその動きを阻害するように。

数体はわざと視界に入りその注意を引き、死角から別のグリフォンが翼の付け根や喉元を狙って突入を繰り返す。


男「上手い…既に高度が少しずつ落ちている」


二体のグリフォンが交差するように翼竜の喉元を目指した。

弓や魔法の射程に捉えるには、まだ幾らか高度を落とさせなければならない。

竜の死角、頭上から急降下する一体。

他のグリフォンにも増して動きが鋭い、おそらく騎士長の駆るものだろう。

そのまま速度を槍撃に乗せて、頭の付け根に刃をたてる。

硬い鱗の隙間を突いたか、青みの強くなった空に赤い鮮血の飛沫が舞った。



437 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:28:15 ID:cehwDkSo [10/17]


がくん…と、竜が高度を落とす。

身を捩り、斜め下方に逃れようとしたかに見えた。

しかし数体のグリフォンがそれを追ったその時、一瞬身を竦めた翼竜は身体を捻り、驚くべき速さで反対に向き直る。

予想外の動き、即座に散開するも一体のグリフォンがその眼前に取り残された。


時魔女「あ…!」

幼馴染「だめ…回避が間に合わない!」


延べられる翼竜の首、避ける事が叶わず顎に囚われるグリフォン。

鷲の羽根が空に散り、その胴体が千切られる。


騎士「は…ははっ!これは…亡き先王からの…預かり物だっ…!」


虜の騎士が力を振り絞り槍を突く。

顎の中へその切っ先を抉り込むと、翼竜は小さく呻くような鳴声をあげた。

また空に霧の様に吹いた鮮血は竜のものか、勇ましき騎士のものか。

力を失ったグリフォンと引き裂かれた騎士の身体が木の葉のように舞い落ちる。



438 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:29:05 ID:cehwDkSo [11/17]


男「…見事だ、白夜の騎士!弓兵、掃射準備!彼の者に報いるぞ!」

弓兵「はっ…!!」


痛みに動きを鈍らせた翼竜、その背後からまた二体のグリフォンが翼の付け根に突入した。

翼竜の高度が更に落ちる。


幼馴染「炸矢ならもうダメージは与えられるわ!」

男「一時グリフォンを退避させなければならん!合図として少し離したところを射て!」

幼馴染「解った…!いけっ!」


翼竜、そしてグリフォン隊から50ヤードばかり離れた空中で矢が炸裂する。

高度的には充分に届いているようだ。


男「すぐに次を射るんだ!今度は喰らわせろ!それから時魔女…!」

時魔女「もう始めてるよ!…時間停止モード、コンバート完了…目標ロックオン!」

幼馴染「炸矢…複式!」


グリフォンが少し距離をとった、その隙に翼竜は空域を逃れようと大きく翼を広げる。

その翼下、数本の矢が閃光と轟音をもって炸裂した。

羽ばたきを阻害され、バランスを崩す翼竜の巨体。



439 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:30:04 ID:cehwDkSo [12/17]


男「弓兵!掃射はじめっ!…女!雷撃魔法を準備しろ!」

女「はいっ!」


矢の弾幕が翼を襲う。

しかしバランスを失いかけた竜は、空中に踏みとどまるために翼を閉じる事ができない。

蝙蝠のそれに似た翼が、矢に射られ穴を穿けられてゆく。


女「詠唱終わりました…!放ちます!」


翼竜の頭上、覆い被さるような雷雲が現れる。


女「堕ちなさいっ!翼竜…!」


自然の稲妻にも遜色の無い、目も眩むほどの落雷。

翼竜は長い首を反らせ、その体躯を痙攣させている。

それでも堕ちまいと更に大きく、三対の翼を全て重ならないように広げきった。

まさに今、この時、この機を逃すわけにはいかない。


時魔女「時間停止…発動っ!!」


俺の指示を待つまでもなく、時魔女がその能力を解放する。

刹那、翼竜は空に縛られた。



440 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:30:46 ID:cehwDkSo [13/17]


グリフォン隊が再び一斉突撃をかける。

槍によって切り裂かれてゆく翼、動けない翼竜。

一度の突入で一対の翼は既に風を受けられないであろう程に破れている。


時魔女「もう堕ちるかな…!?今、時間停止を解けばまたすぐにチャージできるよ!」


まだ時間停止を発動して数秒。

地上に堕ちた翼竜の動きを縛る事が可能なら、勝利は見えたも同然だろう。

空中で止まった竜の体勢は著しくバランスを失ったものに見える。

おそらくもう、竜は堕ちる。


男「…解除しろ!」

時魔女「了解っ!」


動きを取り戻した竜が、傾き、失速する。


散る血飛沫、翼の破片。


大空を我が物と君臨した、あの翼竜ワイバーンが堕ちてゆく。



441 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:32:41 ID:cehwDkSo [14/17]


逆さを向いた翼竜は、鈍く鳴いた。

空を司る七竜が、たかが小さな人間に堕とされる…さぞ屈辱的だろう。

その右瞳は、怒りに満ちた色をしているに違いない。

大地を震わせる轟音。

砂煙を巻き上げ、遂に地についた竜。

翼と脚を使い、必死で体勢を起こそうともがいている。


男「時魔女!いけるか…!?」

時魔女「もうちょい…!コンバート…完了っ!」


俺はごくりと唾を飲み、剣のトリガーを引く。

真っ直ぐに竜の目を見据えて、駆け出した。

傭兵長をはじめ、地上部隊の総員がそれに続いている。



442 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:33:35 ID:cehwDkSo [15/17]


《充填開始》


この時が、来たのだ。


《…10%…》


男「女!凍結魔法の詠唱を始めておけ!」

女「はいっ!」


《…30%…》


両親の、そして仲間達にとって大切な人々の仇を。


傭兵長「いいザマだ…翼竜め!」


《…50%…》



443 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:34:14 ID:cehwDkSo [16/17]


時魔女「目標ロックオン…!」

幼馴染「父様の仇…!今こそっ!」


《…70%…》


翼竜を討ち、復讐を誓う日々を終わらせる。

新たな明日を、今を生きる大切な者と共に想えるように。


《…90%…》


時魔女「時間停止、発動っ!」


再び翼竜を時間停止の呪縛が襲う。


《…100%…》


…しかし。



444 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:35:49 ID:cehwDkSo [17/17]


翼竜の周囲に突如、青い魔方陣が現れる。


男「何っ…!?」


聞いた事はある、あれは高位の魔導士が使うという拒絶魔法に違いない。


時魔女「アンチスペル…!まさか!さっきの一度で時間停止を解析したの…!?」


一度受けた魔法を拒絶する、守護魔法の最上級術のひとつ。

そのような魔法を竜が使うなど、あり得ないはずだ。


男「ふざけるなっ…!!」


しかし現実に目の前で時間停止は翼竜に拒絶された。

既に竜はその身を起こし、怒りの咆哮をあげている。


男「くそ…そのまま首を落としてやるっ!!」

女「男さん…!戻って下さいっ!」


呼び戻そうとする女の声、しかし止まるわけにはいかない。

時間停止を二度使うために、翼は最低限の破壊にとどめた。

一度はバランスを崩し地に堕ちた竜も、このままでは再び空へ昇るに違いない。

果たして、間に合うか。



445 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/18(月) 20:37:33 ID:NRBvqXbA


しかし次に翼竜がとったのは再度の飛翔でも、直接の攻撃でも無かった。

竜の周りにまた現れる、今度は黒い魔方陣。


女「いけない!それはっ…!」


翼竜を中心に、黒い波動が円形に広がる。

それは俺を含む接近していた兵の全てを飲み込んでいた。

そして続いて円の中心から広がるように、地面の草が一瞬で枯れ朽ちてゆく。


男(即死魔法…!)

幼馴染「男!逃げて!」


ぎりぎりで効果範囲の外にいる幼馴染が叫ぶ。


男(畜生…!剣の闘気充填は完了してるのに!)


僅かな迷いは俺に引き返すタイミングを失わせていた。



446 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2013/11/18(月) 22:33:33 ID:4UQKz.5M


傭兵長「隊長殿…!!」


目の前に駆け寄った傭兵長が俺を思い切り突き飛ばす。

転がるように即死魔法の効果範囲を脱した俺が、もう一度前を向いた時。

そこには膝をつき、いつもの憎らしい笑みを浮かべた傭兵長の姿があった。



傭兵長「ああ、実に善き死に場所を見つけ申した…」



男「傭兵長っ!」


既に彼は枯死した草の中にいる。

地に突いた剣で上体を支え、それでもゆっくりと目を閉じてゆく。


傭兵長「…おさらばです…隊長…殿…」


にたり…と、笑んだまま彼が崩れ落ちる。



449 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 11:15:26 ID:MyrA0inI


男「傭兵長…」


まただ、あの時と同じ。

俺は自らの不甲斐なさ故に副官を失った、しかし。


男「翼竜っ…!」


まだ剣の充填は生きている。

副官の死を無為にしないためにも、俺はこの剣を振るわなければならない。


男(仕留める…必ず!)


羽ばたこうとする翼竜に駆け、俺はその胸を渾身の力で突いた。

刃は鱗を貫き、その刀身の全てを竜に抉り込んでいる。


男「おおおおぉぉぉっ!!」


トリガーを解放し、そのまま竜の体内であの光の刃を放つ。

翼竜が大きく咆哮をあげた。

その背中の鱗が幾らか吹き飛び、そこから斬撃の青白い閃光が洩れている。

竜の身体はその内側から切り裂かれたはずだ。



450 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 11:16:16 ID:MyrA0inI


剣を抜き、俺は後ろのめりに倒れ込んだ。

翼竜は目の前で、翼を広げたまま悶え苦しんでいる。


男「く…なぜ…死なんっ!?」


手応えはあった、あれで生きていられるわけがない。

なのに何故、翼竜はまだ力を失わないのか。

その傷口から赤い血と共に黒い霧のようなものが吹き出している。

そして翼竜はぎこちなくも翼を羽ばたかせ、その身体を浮かせた。

グリフォン隊が再び攻撃を仕掛けようとする。

しかしその時、翼竜とグリフォン隊との間に火柱が立ち昇り、それを阻害した。

一体のグリフォンがそれに呑まれ、墜落してゆく。


幼馴染「まだ魔法が使えるの…!?」


ぐらつきながらも飛び去る翼竜。

それを見ながら、誰もなす術が無かった。



451 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 11:16:49 ID:MyrA0inI [4/16]


だが翼竜は遥かな空に消える事は無かった。

太陽が昇り視認できるようになった台地の崖、そこに口を開けた大きな洞窟へと逃げ込んでゆく。

まさか目の前だったとは、あれが翼竜の巣に違いない。


騎士長「追いましょうぞ!洞窟の中では翼竜も身動きがとれぬはず…!」


魔法を使う相手に洞窟で戦いを挑めば危険も伴うだろう。

しかし翼竜の飛翔能力は殺せる。

これは最後のチャンスだ。


男「女…!肩を貸してくれ…追うぞ!」

女「はいっ!」



452 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 11:17:22 ID:MyrA0inI [5/16]


洞窟へと足を踏み込む。

入口付近に竜の姿は無い、更に奥か。


時魔女「すごい大きい洞窟…ランタンの灯りが天井まで届かない」


しかし少し進んで違和感を覚える。


男「…何故だ、所々が人工的に加工されている」

女「………」


階段状になったところ、側壁が石積みの様相を呈している部分。

古代の遺跡に竜が住み着いたと考えるべきか…それとも。



453 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 11:17:54 ID:MyrA0inI [6/16]


女「……嫌な、予感がします」

男「…どういう事だ?」

女「拒絶魔法…即死魔法、いずれも…」


女は酷く不安そうな顔をしている。

その先を言うのを躊躇い、それでも迷いを払うように小さく頭を横に振って。


女「…私の兄が、得意とした魔法なのです……」


何故、あの砂漠での翼竜の瞳は紫色に染まっていたのか。

紅いはずの竜の右瞳、その紅を紫に染めるために必要な色は。


女「…あの翼竜は」


俺を見つめる彼女の瞳のような、美しい青色…



454 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 11:18:31 ID:MyrA0inI [7/16]


???「動くな…!」


その時、不意に視界が照らされ何者かの声が洞窟に響き渡った。

声は頭上から聞こえている。

そして辺りを照らす松明の灯りもまた、上からのものだ。

翼竜が巣とする洞窟で、人間の声を聞く事になるとは。


男「何者だ…?」

???「ようこそ…男殿。いや、反逆のドラゴンキラーと呼ぶべきか…?」


松明の灯りが逆光となり、その姿がはっきりと判らない。

しかし聞き覚えのある声だと思った。


女「あれは…!」


先に女が気付く、それはその声と姿を俺より長く見ていたからだろう。


女「大臣…貴方なの…!?」

月の大臣「逆賊の妻などと、辛い役回りをさせましたな…皇女。もう暫くの辛抱でございますぞ」



459 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 13:45:10 ID:MyrA0inI [10/16]


石積みの壁の上にはどう見ても人工的な広い祭壇がある。

大臣と十数名の兵は、そこから俺達を見下ろしていた。


男「何故…あんたがここにいる」

月の大臣「ふん…それはこちらが訊く事だ。どうやって関所を掻い潜った…」

男「…さあな、答える義理は無い」


祭壇へと上がる道は無い。

そこへ上がるには別の入り口があるのだろう。

洞窟は更に奥へと続いている、この先の暗がりに翼竜はいるのか。


月の大臣「自分の立場が解っていないようだな」


大臣が手を上げる。


隊員「ぐっ……!」

男「おい…!?」


俺の隣にいた隊員が身を屈する。

その胸には深々と矢がたっていた。



460 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 13:46:38 ID:MyrA0inI


暗がりで判らなかったが、大臣の横に列ぶ兵は弓を構えていたのだ。


男「…どういうつもりだ!」

月の大臣「武器を捨てろ、話はそれからだ」

男「……くっ…」


俺達が武器を地面に置くのを確認して、大臣は語り始めた。


月の大臣「…我々はここに何人たりとも近付けるわけにはいかなかった。ここは我が国の最重要軍事機密である施設だからだ」

男「軍事機密…だと。まさか、翼竜を…」

月の大臣「そのまさか…だ。我々は翼竜を制御する事に成功した。ある優秀な魔導士の命と引き換えにな…」

女「まさか…兄上…」

月の大臣「はっはっ…察しが良い。その通り…女兄殿の事だ。奴は魔物の意志を支配する術を習得し、竜に喰われる事でそれを発動させた」



461 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 13:47:10 ID:MyrA0inI [12/16]


時魔女「魔物を支配するって…それは落日の国が開発した禁呪のはずだよ!」

月の大臣「おや…まさか貴女は星の国の時魔女殿か。その隣にいるのは白夜の騎士、なんと…旭日の兵までいるではないか」


表情は窺えなくとも、大臣が卑屈に笑っている事は判る。

この場に他国の彼らがいる事を、政治的に利用しようと考えているのだろう。


月の大臣「なるほど、関所はグリフォンで越えたか…これは白夜による重大な侵犯行為に違いない」

騎士長「ふざけるな!貴様らが操る翼竜に我が王都は襲撃を受けたのだぞ!」

月の大臣「ふん、何を訳の解らない事を。そのような事があったとしても、それは翼竜が無制御下で行った事だ。…我々の知るところではない」


再び大臣が手を上げる。


男「よせっ!」

白夜の騎士「うぐっ……!!」


また一人、今度は白夜の甲冑を身につけた隊員が地に伏せた。


月の大臣「何も貴様らを生かしておく必要は無い。白夜の甲冑を着た、騎士の死体…それで充分なのだからな」



462 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 13:48:00 ID:MyrA0inI [13/16]


女「やめなさい…!」

月の大臣「皇女、もう良いのですぞ。そのままその下賤の者から離れ、待っておりなされ」

女「ふざけないで!私は男さんの妻…この方達は私の仲間です!」

月の大臣「なんと嘆かわしい…本当にそのような者に情を移しておられるとは」


女が小さな声で詠唱を始める。

しかし事も無げに大臣は「無駄だ」と言い放った。


月の大臣「この祭壇上はあらゆる魔法を拒絶する。それと、さっき貴様らが通ってきた間にも同じ祭壇は複数存在し、そこにも兵を配してある。…逃げようなどとは思わぬ事だ」


状況は絶望的だった。

どうせ大臣は我々を全員殺すつもりなのだろう。

女にしても生かしておくか解ったものではない。

死人に口無し、そう考えたのだろう大臣は饒舌に真相を語った。



463 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/19(火) 13:48:36 ID:MyrA0inI [14/16]


七年前、女の兄は討伐隊を装いこの台地に赴いた。

そして竜に喰われ、その意志を内面から支配したという。

それを彼が了承したのは、妹である女を護るためだった。

彼がその命に従わなければ、その時まだ15歳だった女を落日の国へ政略結婚に送る…そう脅したというのだ。


翼竜を支配する理由は、もちろん強力な兵器として利用するため。

しかし優秀な魔導士であった女兄の力をもってしても、その制御は難しいものだった。

しかも時間を追うごとにその支配力は薄れていき、今ではこの巣穴で翼竜が眠る内に兄の意識を呼び出すしか命令を伝える方法は無いという。


翼竜はおよそその命令に従うが、予測範囲を超えた行動をとる事もある。

次第に兵器としての利用価値は薄れていき、他国を攻める際の実用には至らないまま既に捨て置かれた存在となっているらしい。


しかしこの事が明るみになるのは月の国にとって都合が悪い。

特に翼竜を実用化できなかった代わりの戦略として、砂漠開発による国力増強を狙う今だから尚更の事だった。

他国につけいる隙を与えたくなかったのだ。



464 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/19(火) 14:02:50 ID:MyrA0inI [15/16]


月の大臣「疑問は解けたか?…冥土の土産くらいにしかならんだろうがな」

男「…この人で無しめ、自分の国が強くなるためなら何をしてもいいのか!?」

月の大臣「その通りだ、解り切った事を訊くな。よし、やれ…ただし皇女だけは殺すな」

月の兵「はっ…!」

月の大臣「オンナ共は上手く手足を射るのだぞ。くっくっ…死体とまぐわってもつまらん」


頭上の兵が弓を絞る。

逃げる術も、反撃の術もない。


月の大臣「まずは用済みのドラゴンキラー殿を黙らせろ」


俺を目掛けて、矢が放たれる。


女「男さんっ…!」


咄嗟にそこへ、割り込んだ者は。


男「女…!」


俺を庇い、女が矢に倒れる。

彼女の背中、白いローブに鮮血が滲んでいた。



472 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 11:52:18 ID:5rCufxKI [1/14]


男「女っ!…くそっ、しっかりしてくれ!」

女「…男さん、逃げ…て…」


何故だ、どうして傭兵長も女も俺を庇って倒れなければならない。

俺に、翼竜を討つという想いを果たさせるためか。

でもそれは大切な人を失ってまで果たす価値があるのだろうか。


『殺すな』と命じられた女を射ってしまった事に怯んだか、矢を射る手は暫し止まっている。


男「…死ぬな…女…!頼むから…!」

女「……早く…男…さん…」


急所は僅かに外れている、まだ女に息はある。

すぐにでもこの窮地を脱せば時間逆行で女を救えるかもしれない。

そのためには時魔女を護らなければ、女にこれ以上の深手を負わせないよう努めなければ。


男「時魔女!祭壇の真下…矢の死角へ逃げろ!」

時魔女「うん…!」

男「幼馴染お前もそこへ…女を頼む」

幼馴染「男…どうするつもりなの!?」



473 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 11:52:51 ID:5rCufxKI


翼竜への剣撃の余韻でまだ足はおぼつかない、この状態では矢から逃れる事はできまい。

それでもいい、俺はここから動かない。


男「残りの者は洞窟の奥へ…!松明の灯りの外へ身を隠すんだ!」


大臣が必ず俺達を呼び止めるつもりだったなら、更に奥には兵を配置してはいないはずだ。

ここからは翼竜の息遣いなどは聞こえない。

松明の灯りから逃れる程度奥へ進んだところで、まだ遭遇はしないと思われた。


月の大臣「馬鹿め、しょせん時間稼ぎにしかならぬものを…竜と我らの挟み撃ちにあいたいか!」


動き始める隊員に向かって次々と矢が射られる。

しかし残る全員が無事とはいかなくとも、全滅もあるまい。

時魔女達は祭壇の真下に達し、僅かな壁の窪みに身を隠している。

幼馴染が女から矢を抜き、時魔女は既に魔力の変換を開始しているようだ。


俺は足元の剣を拾った。


男(騎士長、幼馴染…翼竜を討つ事は任せるぞ)


命を賭すべきは復讐ではない、そう俺は気付いたんだ。



474 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 11:54:10 ID:5rCufxKI [3/14]


《充填開始…5%…10%…15%…》


まだ体力は戻りきっていないらしく、充填の速度は遅い。

それでも砂漠での再充填時に比べれば、一度目との間が幾分か開いているだけにマシなペースだ。


《25%…30%…》


隊員達は数名が矢に倒れたが、残りの者は一旦暗闇に脱する事が叶ったようだった。

故に、祭壇上の兵の注視は残る俺に向く事となる。


《40%…45%…》


月の大臣「貴様っ!何をしようとしている!」


俺はできるだけ身を縮め、的を小さくするよう体勢をとった。

剣を頭上に渡し、少しでも頭部を庇いながら。



475 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 11:54:41 ID:5rCufxKI [4/14]


《50%…55%…》


矢が雨のように注ぐ。

肩にたち、太腿にたち、激痛が俺を襲う。

怯むものか、剣の充填が達した時にそれを薙ぐ力さえ残っていればいい。

祭壇を切り崩し、奴らをここに引きずり降ろす事さえ出来れば、あとは闇に潜む隊員が何とかしてくれる。


《60%…65%…》


頭上の剣に矢が当り、鋭い金属音がたつ。

続いて左の肩口に強い衝撃と熱いような感触を覚えた。

口から血が吹く、肺に達したか。


幼馴染「男…!」

男「来る…な…!」



476 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 11:55:20 ID:5rCufxKI


《70%…72%…74%…》


充填のペースが落ちる、負傷により闘気が落ちたのだろう。


男(くそ…間に合わんのか…!)


同時に二本の矢が左足にたち、体勢が崩れる。


《…75%…………闘気低下…充填中止…》


そして剣から発せられる無情な宣告。

それと同時に、俺は地面に倒れ込んだ。

身を潜めた隊員達が闇から駆け寄ってくるのが見えた。


男(いけない…それでは全滅してしまう!)


しかし彼らが暗闇を脱したのは、止むを得ない理由があっての事だったのだ。

絶望という名の理由が。


隊員「竜が…!翼竜が出ます!」


隊員達の背後から咆哮が響く。

その闇に浮かぶ紫の瞳を見ながら、俺は意識を手放していった。



477 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 12:20:06 ID:5rCufxKI


……………
………



『憐れなものだ…竜に喰われ、竜として生きるとは』

『しかし我らの命令は絶対、そこは心得ておろうな…翼竜…いや、碧眼の魔道士よ』

『くっくっ…そう睨むな。我らに盾突けば貴様の妹の身がどうなるか』

『そうだ、それでよい…。では、そうだな…まずは忌まわしい落日の国を荒らして来るのだ』

『くれぐれも餌の家畜を食いにきたかのように、今はまだ軍事施設などは襲うな』



『どうした、なぜ命令外の事をしたのだ』

『そうか…竜を支配する力が弱まっているのだな』

『この役立たずめ…まだ軍事利用の一度も出来ておらぬというのに』

『せいぜい飼い慣らす事だな、貴様が用無しになる時は妹も我が国に居られなくなると思え!』



478 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 12:21:08 ID:5rCufxKI


『ふん…とうとう竜が眠る間にしか意識を現せなくなったか』

『まあいい、貴様の妹も国のために嫁がせたのだからな』

『なにも落日の国に売ったわけではない、我が国のドラゴンキラーに与えたまでだ』

『まあ農夫の出…下賎の者ではあるがな。くっくっ…そう怒るな、妾の娘には似合いであろう』

『さあ、また砂漠へ赴くのだ。そのドラゴンキラーがヴリトラを討てるかは怪しい…砂漠を手中とするためにも、確実にあの竜は潰さねばならん』

『くれぐれも貴様が手を出すのはドラゴンキラーが敗れた時だけだ。本来ならその者自身が渇竜を討つのが望ましいのだからな…』



『大臣…翼竜に命令は』

『もう無駄だ。あの者の意識など既にありはしない…あれはもうただのゴミだ』

『既に砂漠開発の手筈は整っている。もうあんな危険な竜に用は無い』

『そうだな…もしまだ少しでも制御が効くなら、再度砂漠へ飛ばしそこで砂漠開発部隊の守護を命じたドラゴンキラーに討たせるとしよう』

『砂漠で二頭の竜を葬ったとあれば、なお他国に口出しをされる心配は無くなろうからな』

『仮にも妹の夫だ、身内に討たれるなら本望であろうよ』



479 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 12:33:20 ID:5rCufxKI [8/14]


『なんと…ドラゴンキラーが裏切り、台地を目指しているだと…!』

『くそ…翼竜はどこへ行っているのだ。全く命令が届かん…』

『関所を越えることはできまいが…万一ここに達されたら必ず息の根を止めるのだ』

『何処をふらついているとも知れん翼竜などあてにするな。もともとこの洞窟は翼竜の巣穴、本能だけでも勝手に帰ってくる』

『うまく皇女を捕らえられたら、自らの兄に喰わせるのも一興というものよ…くっくっ…』



『良いタイミングで戻ったと思えば随分と傷ついていたな…』

『翼竜は巣穴の奥へ逃げ込んだ模様です』

『ふん、頼りにならん…既にあの魔導士の意識など塵も残っておらんようだな』

『まあ…翼竜に野性が戻ったとしても、この祭壇に居る限り奴に手出しができん事は解っている…危険は無かろう』

『…魔導士が再び意識を支配でもせぬ限りはな』

『間も無くドラゴンキラーの一団がここに来る、途中の祭壇の兵には手を出すなと伝えておけ』

『さあ来い…逆賊め。この祭壇から狙いうたれ、手も足も出ぬままに死ぬが良いわ』



480 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 15:29:55 ID:5rCufxKI [9/14]


……………
………



男(何だ…ここは…やけに眩しい)


男(…白い世界…俺は死んだのか?)


男(今朝の夢の続き…にしては雰囲気が違うが)


???『…男殿』


男《誰だ…!?》


???『翼竜に喰われた魔導士…女兄と言えば解るか』


男《女兄…?じゃあ…やはりここはあの世か》


女兄『いや、心配するな…貴方は死んではいない。もうじきに目が覚めるだろう』


男《…そうか》



481 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 15:30:28 ID:5rCufxKI [10/14]


女兄『すまない…今の私には翼竜を制御できるのは、ほんの一時にすぎないんだ。本当ならもっと早く手助けがしたかったが…』


男《つまり、あんたが翼竜を操って俺達を救ったという事か》


女兄『救ったなどとおこがましい事を言うつもりは無い…ただ女が矢に射られるのを見て、黙っていられなかっただけだ』


男《砂漠でも翼竜の瞳は紫に染まっていた。あの時、俺達を殺さなかったのはあんたの意志だったんだな》


女兄『…詳しくは後で話そう。洞窟の最奥、竜の主祭壇の壁を破壊してくれ…そこに道がある』


男《…あんたはそこにいるのか?》


女兄『私は翼竜の中にいる。…だがその道の先にある場所にだけは意識のみの存在として姿を現す事ができる』


男《…解った、必ず行こう》


女兄『さあ、目を覚まして…女を安心させてやってくれ』


男《女…あいつは無事なんだな?》


女兄『ああ、そのはずだ』


男(白い世界が…薄れて…)



482 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 15:31:14 ID:5rCufxKI [11/14]


……………
………



男「……ぅ…」


酷く身体が痛む。

肩、そして太腿の辺りだろうか。

痛みがあるという事は、やはり俺は生きているらしい。


目を開けても今度は黒しか見えない。

しかし段々と視界が定まり、黒く見えていたのは星の無い夜空だった事に気付いた。


身体の右側面が暖かく感じられる。

肩の痛みを堪えながら少し首を動かしその方を見ると、小さな焚火が起こされていた。

そしてその隣には、不安そうな顔で火を見つめる女の姿。



483 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 15:32:16 ID:5rCufxKI [12/14]


男「……女…」

女「!!」


声を受け、女は慌てたように俺の傍に寄る。


女「男さん…目が覚めたんですか…!?」

男「ああ…生きているんだな…俺も、お前も…」

女「良かった…!私…だめかと…」


それだけを言って女は両手で自らの顔を覆った。

肩を震わせ、時折嗚咽を漏らしながら泣いているようだった。

怪我が無ければ今すぐにでも、きつく抱き締めてやりたい。

それが出来ない事がもどかしかった。



484 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/20(水) 15:32:47 ID:5rCufxKI [13/14]


あれから翼竜は我々を襲う事無く、祭壇を破壊し大臣達を攻撃したという。

そしてやがて瞳の色が紫から紅に変わり、洞窟を飛び出して行った。

混乱に乗じて武器を取り戻した後は、騎士長が指揮をとり祭壇から落ちた大臣達を一掃したらしい。


女が矢に射られてから時魔女が時間逆行を施すまでは、ものの一分ほどしか経っていなかった。

故に時魔女が魔力を再ロードするにはさほどの時間を要さず、完璧とはいかないまでも俺の致命傷は癒やす事ができたという事だ。


洞窟から出た後は傭兵長達の亡骸を埋葬し、今いる洞窟の目の前に仮の陣地を構えた。

翼竜の巣である洞窟の前なら、他の竜が襲ってくる可能性が低いと考えての事らしい。


傭兵長をはじめ幾人もの隊員を失いながら、自分は生き残ってしまった事は複雑に思える。

しかし身を呈して俺を救ってくれた彼や女の事を思えば、死ぬわけにはいかなかったとも言えるだろう。


男「隊長だってのに、俺は護られてばかりだな」

女「…また怒られたいのですか?」

男「そうだな、お前に怒られるのは…嫌いじゃない」


彼女は涙目のまま呆れたように笑い、説教の代わりに優しい口づけを落とした。



488 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 14:50:01 ID:iakRd6B2 [1/4]


男「…女、大丈夫か」

女「私の傷は完全に癒して頂きましたので」

男「そうじゃなくて…さ」


勇敢に竜に立ち向かい、その上で敗れた…彼女は自分の兄の死をそう認識していたはずだ。

しかし実際は国に利用され、望まぬ暴虐を働かされていた。

しかもそれは他ならぬ女自身を庇うために。


女「…大臣の話を聞いた時は、目の前が真っ暗になりました」

男「そう…だろうな」

女「兄の事を思うと、悲しくて…国が憎くて。いっそ自分が他国に売られてでも、それを防げるならそうしたかったと思いました」


ぽつりぽつりと心情を語る女。

しかしその瞳は負の感情にだけ染まっているようには見えなかった。



489 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 14:50:58 ID:iakRd6B2 [2/4]


女「でもね、男さん…あなたが矢に射られようとした時、私…身体が勝手に動いたんです」

男「すまなかった…俺のせいで」

女「謝らないで下さい、私は……」


彼女は少し言葉を詰まらせる。

沈黙の中、小さく耳に届く焚き火にくべられた枯枝が弾ける音。

俺は黙って彼女の言葉の続きを待った。


女「…大臣が憎くて、怒鳴りつけて復讐がしたかった。例え祭壇に拒絶されても、全力の攻撃魔法を唱えようかと思った」


瞳に涙を湛えながら、辛い胸中を言葉にして晒しながら、それでも柔らかく笑う彼女。

その表情からは、悲しみを振り切った強い意志が滲んでいる。


女「だけど今の私にとって、復讐よりも大切なのは…男さん…あなただった。私は、それが嬉しかったんです」

男「…そうか」

女「冷たい妹です…あなたが目を覚ますまで、この焚き火の傍で私は兄の事じゃなく、男さんの無事ばかりを考えてました」



490 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 14:51:32 ID:iakRd6B2 [3/4]


彼女の掌が、身を横たえたままの俺の頬に触れる。

その指先は冷たい、火の傍にいながら手を暖める事もしなかったのだろう。

ただ俺の意識が戻る事、それだけを祈りながら。


女「私のために犠牲になった兄は、きっと喜んでくれると思います。私が今、こんなに幸せでいる事を」


恥ずかしい…と思った。

彼女の台詞が照れ臭いだけじゃなく、己の復讐心にかられ彼女の気持ちを後回しにしてきた自分を。


女「兄の気持ちに報いるには、私…もっと幸せにならなきゃいけません。…だから、ね」

男「…言うな、照れ臭くて傷口が開く。星にも願ってたじゃねえか」


小さく声を漏らして女が笑う。

その様にはもう悲しみや憤りは感じられない。


女「いいえ、言います。…早く、本当のお嫁さんにして下さい」

男「…善処する」



494 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 21:23:58 ID:Jm0IYgtE [1/11]


俺も女も生きている。

どうやら女の気持ちも既に心配は要らないようだ。


それなら俺は先へ進まなければ。

まだ翼竜を討ったわけではないのだ。

例えその竜に彼女の兄が宿ろうとも、ほぼ制御の効かない存在だというなら見逃す事はできない。

もし女兄の意識が竜に介在するとしたら、きっと竜が人々を苦しめる事で彼は心を傷めている。

竜を討つ事は彼を救う事であるはずだ。


だけどその前に、俺は自分の心に刺さった棘を抜かなくてはならないと思った。

所詮、それは自己満足に過ぎないかもしれない。

それでも俺が、もう一度あの竜に挑むなら。

そのためにまたこの隊を率いようとするなら、俺には許しを乞わなければならない事がある。



495 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 21:26:23 ID:Jm0IYgtE [2/11]


男「…痛てえな…くそ」


負傷していない右腕を使い、何とかその場に上体を起こす。


女「いけません!寝ていなくては…!」

男「そうはいかん…このまま怪我が癒えるまで、何日とここで寝て過ごす事はできんだろう」

女「でも…せめて夜明けまで」


彼女の意見を無言で否定し、俺は無理矢理に立ち上がった。


男「…すまん、肩を貸してくれ。騎士長の元へ」

女「それなら呼んで参ります!だからせめて座って…」

男「だめだ、俺が…行かなきゃいけない」


仕方なさそうに女は俺に肩を貸し、騎士長の元へと連れて行った。

騎士長はそれに気付くなり驚いた顔で駆け寄る。


騎士長「男殿!何を無茶な…呼んで頂けばこちらから…!」

男「それじゃ駄目なんだ…騎士長、俺はあんたに詫びなければならん」



496 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 21:28:14 ID:Jm0IYgtE [3/11]


騎士長「何を言うのだ、詫びられる覚えなど無い」


本当なら膝をついて言うべき事だ。

俺は女に肩を離すよう願ったが、彼女はそれを許さなかった。


男「…先の戦いでは幾人もの犠牲が出た。即死した者は止むを得なかったかもしれないが…洞窟で矢に射られた者の中には息のある者もいたかもしれない」

騎士長「男殿…それ以上は言うな」

男「いや、詫びねばならん。白夜の騎士に限るわけではないが…時魔女の力で命を取り留めるのは、必ずしも女である必要は無かったはずだ」


それでも俺は身勝手にも時魔女に女を託した。

他の兵達を差し置いて、自分の大切な者を優先したのだ。


男「まして俺自身まで…何人の犠牲の上にこの命があるかと思うと、詫びずに…うっ!?」


突然、騎士長は俺の頬を殴った。

負傷した足には力が入らず転びそうになるも、なんとか女が抱き支える。


女「騎士長様!何をなさるのです…!」

騎士長「…それは我々への、そして亡き者への侮辱だ!」


声を荒げる騎士長。

周囲の隊員達が驚き、俺達を見てどよめいている。



497 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 21:29:07 ID:Jm0IYgtE [4/11]


そして彼は俺の肩に手を置き、幾分かその表情を和らげて言った。


騎士長「女殿は戦場に散るべき兵ではない、まして男殿はこの部隊の指揮官。どこの世に指揮官の命より一兵卒を優先する隊があるというのだ」

男「しかし…」

騎士長「…私も詫びねばならん。あの時、男殿の真意が解らず護るべき指揮官を一人で矢の的としてしまった事…」

男「あれは…ああするしかなかった。斬撃で祭壇を崩そうとしたんだ…その後で敵を討つには他の隊員を温存しなければ」

騎士長「私も判断に苦しんだ…それは騎士としての尊厳を曲げるほどの事だ。男殿…二度とあのような事はしないと誓ってくれ」


彼の口調は重く、悔しさを滲ませていた。

騎士たる者、誰かを盾として己が逃げるという事は恥ずべき行為なのだろう…それは解る。

解っていたから、あの時の俺は真意を告げなかったのだ。

その俺の判断は彼にとって卑怯と思えるものだったに違いない。


男「……解った、すまない…騎士長。この頬の痛み、忘れまい」

騎士長「私もまだ青い、怪我人を殴る事も騎士の誇りに反するはずなのだが。…どうか許されよ」

男「いいんだ、騎士長。…救われたよ」



498 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/21(木) 21:31:52 ID:Jm0IYgtE [5/11]


俺は女を含めて人払いを願い、騎士長だけに夢の話をする。

何の信憑性も無い話だが、翼竜の意志を操る女兄だ、俺の意識に干渉しても不思議ではない。

とはいえ確証が得られない以上、女に兄との再会を期待させるべきではないと思った。


騎士長も洞窟の最奥を調査する事に同意し、俺達は再び竜の巣穴へと足を踏み入れる。

ランタンに照らされる幾つもの崩れた祭壇。

そこに捨ておかれた大臣の亡骸は、権力のために他者を利用し続けてきた者の憐れな末路の姿。

それを横目に過ぎ、更に200ヤード程も進んだ先には一際広い空間が存在していた。

ここが翼竜が寝床としていた場所なのだろう。


突き当たりの壁面には、他のものより一段と凝った装飾が施された主祭壇が設けられている。

そしてその中央は、そこだけが彫刻を施されていない不自然に平らな壁となっていた。

ただ、その違和感は予備知識があれば目につくとしても、何も知らなければ意識する程のものでは無い。



499 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 21:33:02 ID:Jm0IYgtE [6/11]


男「幼馴染…炸裂の矢で、この壁を壊せないか」

幼馴染「解った、やってみる…もう少し離れてて」


騎士長に肩を貸されながら、俺は彼女の後ろに退がる。


女「何があるのです…?」

男「必ず何かがあると断言はできん…見ていてくれ」


幼馴染が矢を放つ、轟音と共に壁が崩れてゆく。

目を開けていられないほどの砂埃。

それが次第に薄らいだ、その向こう。


男「…だが、どうやら何も無くはなさそうだな」


そこには暗闇へと続く、石積みの登り階段が現れていた。



500 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 23:06:40 ID:Jm0IYgtE [7/11]


兵を主祭壇に待機させ、俺と女、騎士長、幼馴染、時魔女の五人だけで階段を登る。


時魔女「…はぁ…今ので百段、けっこう長いね…」

幼馴染「騎士長様、ずっと肩を貸してるけど大丈夫ですか?」

騎士長「私は大丈夫だが…男殿、傷は痛むか」

男「くっ…痛くないと言えば嘘になるが、止まる気にはならんな」


その後さらに五十段ほどを登って、ようやく視界が開けた。


男「…馬鹿な……」


俺達は台地の崖に口を開けた洞窟へ入り、その最深部から階段を登ったはずだ。

およそ百数十段、たぶん高低差にして100フィート強。

グリフォンの背から見た台地の高さは500フィートほどもあった。

つまり位置的には現在、どう考えても台地の土中にいる。


…それなのに。


騎士長「どういう事だ…これは」


そこは見渡す限りの荒野だった。



501 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 23:07:59 ID:Jm0IYgtE [8/11]


およそ円形に広がったその空間は、周囲を低い山に囲まれている。


男「まさか…ここは台地の中か」

騎士長「しかし、台地の天蓋は何も無い平野だった」

男「確かに…だが中に空間があると言われても信じられるほど、不自然な地形でもあったな」


不思議な事に頭上には覆うものが無い。

まるであの台地の頂の平原を透かして見ているかのような、外で見たのと同じ星の無い夜空が広がっている。

しかし星の明かりが無いのに、何故この地形が判るのか。

あまり光と影のコントラストが感じられない、不思議な景観に思える。

そしてその荒野の中央にあるのは、岩山というにはあまりに造形的な構造物だった。


それは七竜をも凌ぐ、巨大な竜の石像。


よく見渡せば荒野の周囲には他にも少し小さな竜の石像が六体、中央の巨像を囲む湖に一体存在する。

その七体の像は大きさも形も、明らかにあの七竜だ。



502 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 23:08:52 ID:Jm0IYgtE [9/11]


時魔女「あの湖の一体は…サーペントだよ…!」

幼馴染「周り六体…おそらく右奥がオロチね」

騎士長「左の一体がクエレブレだとすれば、その手前…歪に枝分かれした頭をもつものがハイドラだろう」

男「左奥がヴリトラ、右がサラマンダーなら、一番近い右手前がワイバーン…確かに姿も符合するな」

女「では…中央の巨像は…?」


女の問いに答えられる者はいないはずだった。

しかし回答は五人のいずれでもなく、背後から不意に返される。


???「あれは…滅竜です」


肩の傷を庇いながら、それでも俺は出来るだけ素早く振り返った。

いつの間にかそこに佇んでいたのは、若く美しい女性。

純白の衣、地面に届きそうなほどに長い髪。

先端に竜を象った彫刻が施された杖を手にした彼女は、目を閉じたまま真っ直ぐに俺達に向いている。



503 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/21(木) 23:09:33 ID:Jm0IYgtE [10/11]


???「とうとう生きた人間が、ここへ辿り着いたのですね…」

男「…命亡き者は来た事がある…という事か」

???「…知っているようですね。いかにも…意識だけの存在となったあの方は、何度も」


やはり夢は正しかった、女兄はここへ来ているのだ。

竜に喰われた後、肉体を持たない存在となって。


???「…私は真竜の巫女、このクレーターの結界を護る者」

時魔女「クレーターって…隕石の衝突跡だよね」

男「じゃあここは台地じゃなく、本当は山に囲まれた窪地だというのか」

巫女「その通り…外からは入る事も見る事も叶わぬよう天蓋の結界を施した、全ての始まりの場所」

女「…始まりの場所?」

巫女「予想より早くはありますが、全てをお話ししましょう…」


そして彼女は語り始める。

この世界の始まり、人間の歴史、真竜と滅竜という二柱の神竜、そして七竜の事を。



507 名前: ◆M7hSLIKnTI[sage] 投稿日:2013/11/22(金) 20:16:00 ID:EnJJr11E [1/5]


………



人が定めた『年』という単位では数えきれないほどの遠い昔、まだ生命の無かったこの星に流星が堕ちた。

その流星には竜の卵が乗せられており、そこから双子の竜が孵る。

黄金の鱗を持つ兄竜と、白銀の鱗を持つ弟竜。

長い長い時を経て成長した二体の竜は、やがて星に生命を育んだ。

最初は目に見えない程の微細な生物から、植物、魚、虫、動物…そして人間。


高い知能を持ち、竜の助けを得ながらも独自の文明を発達させ始めた人間は、いつしか竜を神と崇めるようになる。

神竜と呼ばれるようになった二柱の竜は、人間を慈しみ守護する存在だった。



508 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/22(金) 20:17:09 ID:EnJJr11E [2/5]


しかし自らの文明を更に発展させ、地上の覇者となった人間は次第にその神への崇拝を偏ったものとし始める。

それは生と死という根本的な概念を二柱の神竜にあてはめた、人間による勝手な解釈。

黄金の神竜は生命を司る母なる真竜と崇められ、白銀の神竜は死を司る忌むべき滅竜と畏れられるようになっていった。


その事に腹を立てた滅竜は、魔物を生み出し自らを冒涜した人間を滅ぼそうと考える。

真竜はそれを宥め、人間を庇おうとした。

だが皮肉にもそれは人間達に更に真竜を崇めさせ、逆に滅竜を畏れる意識をより深く植えつける事となる。

人間達はやがて、真竜に滅竜の打倒を祈るようにさえなってしまった。


ついに滅竜は自らの白き瞳の片方を砕いて無数の魔物を生み出し、それを率いて人間達を駆逐し始める。

砕いた瞳の欠片の内、比較的大きかった七つの欠片は白眼の七竜となり、特に壊滅的な被害を与える存在だった。


真竜はやむをえず自らの紅き瞳の片方を七つに分け、紅眼の七竜を生み出して対抗させる。



509 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/22(金) 20:17:48 ID:EnJJr11E [3/5]


あくまで欠片に過ぎない白眼の七竜と、瞳をちょうど七つに分けた紅眼の七竜の力は比べるまでも無い。

それぞれの竜の戦いは完全に紅眼の勝利に終わり、白眼の七竜は全て封印され岩と化す。


そして更に真竜は自らの七竜と共に滅竜とも戦い、ついに滅竜自体をも封印する事に成功した。

その時、滅竜達の封印に使われたのは七竜に分けた紅き瞳の力。

それは逆に言えば、七つの瞳をあわせれば封印を解放する鍵にもなるという事。

真竜は紅眼の七竜を世界の各地へと遠く引き離して配置し、岩と化した滅竜と白眼の七竜は流星の堕ちた始まりの地へと安置する。


紅眼の七竜がいつか人間にとって障害となる事を知りつつ世界の各地へとそれらを配置した、真竜の意図。

それは人間が紅き瞳の七竜を倒せるようになった時こそ、自らの神としての役割の終わりであるという想いだった。



510 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/22(金) 20:18:59 ID:EnJJr11E [4/5]


実は双子の兄竜である真竜は、滅竜を封印するのではなく完全に消し去る力も有していた。

ただしそれを行使するには、自らに残る紅き片瞳の力の全てを使い切らなければならない。

それはすなわち、その時の人間にとって信仰の対象であった二柱の竜の両方が消滅するという事。

まだ成熟しきっていない人間という種族から突然に心の拠り所を奪う事は、同族内での争いをはじめとした自滅行為を生む危険性を孕んでいる…真竜はそう考えた。


そして更に時は流れ、現在からおよそ千年前の事。

岩と化した弟竜が置かれた始まりの地、そこに天蓋の結界を張った真竜はその内で自らも眠りにつく。

ある程度の成熟を見せた人間に世界を託し、彼らが紅眼の七竜を討ち倒す日を待つ事としたのだ。

人間の中から選ばれた清らかな乙女に不老の命を与え、真竜の巫女として慈しむべき人間の世界を見守らせながら。



511 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/22(金) 20:46:47 ID:EnJJr11E [5/5]


………



巫女「…人間が七竜の全てを討ち倒した時、滅竜は蘇る。そして真竜もまた眠りから目覚め、その最後の力をもって滅竜を消し去る…そのはずだったのです」


彼女はそこまで話し、言葉を途切れさせた。


男「…それが、何か狂ったと?」

巫女「それは私が語るよりも、狂わせた本人の口から聞くべきかもしれません」


そう告げた巫女の隣に、ふわりと光のカーテンが降りる。

柔らかな煌めきは次第に一つに集まり、そして人の形となった。

…そうか、人間は竜を討つのではなく。


女「そんな…!嘘…まさか…!」


竜を操り、利用しようとした。


男「…夢で、会ったな」


自らが護り慈しんだ、その人間の傲慢こそが真竜の誤算だったという事か。


女兄「男殿…来てくれたのだな」



512 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/11/22(金) 22:37:37 ID:j54CMnhw


女「どうして…本当に…兄上なの…?」

女兄「…久しぶりだ、女。すっかり大人になった…綺麗になったな」


口元を掌で覆い、竦めた肩を震わせる女。

駆け寄る事を躊躇いつつ、それでも一歩ずつ兄の元へ歩む。


女兄「良かった…幸せそうで」

女「嘘…みたい…!兄上っ!」


遂に堪えきれず涙を零し、彼女はその懐かしき姿に両腕を広げて抱きつこうとした。

しかし、その腕は無情にも空を切る。


女「!!」

女兄「…すまない、触れる事は叶わないだろう。私は既に意識だけの存在だ…それに」


妹の事を優しく見つめながら、兄は寂しげに微笑んだ。


女兄「…もう私にはお前を妹と呼び、肩を抱く資格など無いよ。翼竜として幾つもの村や街を襲い、たくさんの犠牲を生んできた…お前達に討たれるべき存在だ」

女「違う…!それは…国の、父上や大臣の企みではないですか!」

女兄「いかに命令に背く事が出来ないといえど、私は自ら翼竜を操り人を殺めた…。女、ちょうどお前くらいの娘を噛み殺した事もあるのだよ」



521 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 19:53:41 ID:io8Phlyc


七年ぶりの妹との再会だというのに、その温もりに触れる事も許されない。

国の犠牲となった悲しき魔導士の姿は、よく見れば僅かに透き通っている。


女兄「私は翼竜に喰われ、そして翼竜に宿った。その紅き瞳の力に自らの魔力を溶け込ませて同化したんだ。…最初はそれで上手くいっていた」


ゆっくりとした口調で、彼は望まなかったはずの己の罪を告白してゆく。

女のそれと同じ、澄んだ美しい青い瞳が俺を見据えていた。


女兄「しかしそれは同化というよりも、正しくは紅き瞳の力を蝕む…そう表現すべき事だった。強大な竜を支配する内に私の魔力は疲弊し、竜の精神には隙間ができていったんだ」

男「精神の隙間…」

女兄「そこに滅竜が忍び寄った。紅き七竜が倒される度に滅竜は少しずつその力を取り戻してゆき、次第に翼竜の精神に深く関与するようになっていった」


女兄が翼竜に宿った時点では、まだ倒されていたのは落日のハイドラだけだったはずだ。

しかしおよそ五年前にクエレブレが倒され、昨年にはオロチ、今年に入ってからはサーペント討伐が成った。

その度に滅竜の力は強まり…そして。


女兄「およそ二ヶ月前…か、ついに平常時の翼竜を支配するのは滅竜の精神となった」

男「…俺が、サラマンダーを倒した時だな」



522 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:00:48 ID:ro4kwxFk [1/4]


女兄「翼竜は操られるまま、ヴリトラを殺した。その時からだ…翼竜の中に滅竜の精神だけでなく、幾らかの生命力までも流れ込むようになったのは」

騎士長「もしや、翼竜を切り裂いた時の黒い霧は…」

男「…あの傷を受けても翼竜が死ななかったのは、そういう理由か」


翼竜の体内に光の刃を放った、あの斬撃は間違いなく致命傷を与えたと思った。

だが滅竜の生命力がその死を踏みとどまらせたというなら、確かにその事に説明はつく。だが、それならば何故…


男「…滅竜が翼竜の死を防ぐのは何故なんだ。残る七竜は翼竜だけ…それが死ねば滅竜は蘇る事ができるのだろう」

女兄「それはおそらく…だが」

巫女「…滅竜は紅き瞳の力を取り込もうとしているのでしょう。だからヴリトラの首を千切り、持ち去った」

幼馴染「じゃあ…今、ヴリトラの瞳は翼竜の中に」

騎士長「まさか、我が王都を襲ったのは…!」

男「騎士長、クエレブレの瞳は?」

騎士長「先王の間に保管されていたのだ…。建物の破壊も著しく、竜の瞳が残っているかは私が旅立つ時点では不明だった」



523 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:02:19 ID:ro4kwxFk [2/4]


おそらく違いあるまい。

今、翼竜の体内にはヴリトラとクエレブレの瞳が呑まれている。

翼竜自身のものを合わせれば、三つの竜の瞳が集まっているという事だ。

だとしたら、巣穴を飛び出していった翼竜が向かった先は。


男「翼竜は今どこに向かっているんだ、解るんじゃないのか」


しかし女兄は俯き、首を横に振って言った。


女兄「…砂漠での去り際と今朝の洞窟内で、私は残る魔力を振り絞って翼竜を操った。もはや今の私には翼竜の視界を覗き見る事すら難しいんだ…」


詫びる女兄の姿が一瞬、揺らぐ。

その身体は先よりも薄れ、透明度を増している。


女兄「私の魔法まで滅竜に利用され、その度に私の魔力は疲弊していっている。こうして意識を集めて姿を形づくるのも限界だ…間も無く私の姿は消えるだろう」

女「そんな…せっかく会えたのに…!」

女兄「すまない…女。だが最期にお前の声を聞く事が…その姿を見る事ができて良かった」

男「…完全に消滅してしまうのか」

女兄「解らない…まだ暫くは翼竜の中に意識は残るのかもしれないが、長くは無いだろう」



524 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:02:57 ID:ro4kwxFk [3/4]


更に彼の姿の揺らぎは大きくなり、より薄れてゆく。


女兄「男殿…妹を頼む。どうか、幸せにしてやってくれ」

男「…解った」


そして彼は女に優しく微笑んだ後、真竜の巫女に向き直った。


女兄「真竜の巫女よ…最期に、もう一度だけ詫びさせてくれ」

巫女「謝罪はもう千を超える程、聞きました。私は真竜に身を捧げた巫女…主の意志に反し、七竜を利用しようとした者を許す事はできません」

女兄「ああ…確か…に千を超える程、そう言われた…な。それで…も私は詫びるしか…でき…ないん…だ」


声が掠れる、もうその表情を窺うのも難しい程に身体は透き通っている。


女兄「神である真竜に…それを…司る事…ができる…なら、どうか…私の……魂を地獄へ…堕としてくれ…」

巫女「…貴方はもう充分に地獄を見たはずです。その光景を思い返し、悔やむ事…それが貴方の贖罪でありましょう」


彼女は閉じた瞼を開ける事も無く答えた、それなのに。


女兄「……ああ…忘れま…い…」

巫女「…還りなさい、母なる真竜の元へ……」


…何故だろう、彼女は泣いている気がした。



525 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:03:32 ID:ro4kwxFk


淡い光に包まれる、女兄の姿。

それはやがて天に昇るかのような一筋の細い光の帯になり、途切れて霞む。


女「兄上っ…!」


女が掴もうとした最後の光の欠片は、澄んだ青色の煌めきを残して消えた。

女がその場で膝を突く。


暫くの間、誰も言葉は発さなかった。

見えぬ天蓋に覆われたこの地には、風さえも吹いていない。

暗い世界を、重い静寂だけが包んでいた。



526 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:09:32 ID:qvgvEXy6 [1/13]


……………
………



その後、真竜の巫女は結界である台地の天蓋を解いた。

もし次に翼竜がここへ帰るとしたら、それは七つの瞳を集めた時。

同じ紅き片瞳の力をもってすれば、結界は効果を為さないという。


やがて夜が明け、騎士長は残ったグリフォンを往復させ、このクレーターに部隊の総員と全ての装備を運んだ。

この地に魔物が侵入する事は無いという巫女の言葉を信じ、ここを宿営地とする事にしたのだ。


時魔女は星の副隊長との定時連絡を使い、現在の状況を伝えた。

今後は連絡の頻度を一時間ごと程度に増し、翼竜についての情報を相互に交換する事とした。

情報はすぐに星の国から旭日の国へと伝わり、おそらく既に瞳は奪われているに違いない白夜の国にも伝えられるはずだ。



527 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:10:10 ID:qvgvEXy6


騎士長「…男殿、すぐに戻るつもりだ。今は傷の養生に努めて頂こう」


更に翌日、騎士長はグリフォンの背に跨って言った。


男「ああ…だが、くれぐれも気をつけてくれ」

騎士長「なに…白夜と落日には争いの歴史があるわけではない。とって喰われる事は無かろう」


反射鏡による共同通信網が整備されていない落日の国に翼竜襲撃の危機を伝えるために、彼は自らの副官と共にその王都へ向かう。

かつては月の国と戦争状態にあった落日の国だが、二国間には十年も前に休戦協定が結ばれている。

とはいえ敵国である事には変わりなく、その月と同盟関係にある星の国、また星の国との同盟を結んでいる旭日の国に対しての警戒心は依然、根強い。

ただ、落日と同じくどの国とも同盟をもたない白夜からの使者であれば、抵抗感は薄いだろうと考えられた。


騎士長と副官は二体のグリフォンを駆り、クレーターの空から落日の王都へと羽ばたいてゆく。



528 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:10:51 ID:qvgvEXy6 [3/13]


幼馴染「大丈夫かな…」


不安げな眼差しで、騎士長達が消えた空を眺める幼馴染。


男「…心配か?」

幼馴染「そ、そりゃそうだよ。同じ隊の仲間だもの」


彼女は少し慌てたかのように、鼻先を掻いて答える。

この仕草はよく知っている。

昔から何かを誤魔化している時、必ず見せる癖だ。

やはり一度は求婚された事のある相手、彼女としても多少は気になるのだろう。

彼がいまだに自分を好いていると知った時、彼女はそれをどう捉えるのだろうか。

ふとそんな事を考えたが、下世話な事だと思い自ら苦笑した。



529 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:12:01 ID:qvgvEXy6


たかが農夫の出の俺と違い、あれほど人望に厚く頭の切れる騎士長の事。

おそらく落日への忠告は上手くこなしてくれるに違いない。

故に今、この事態を伝えるのが最も困難なのは、他ならぬこの月の国という事になる。


だがこの時、月の国では既に別の大きな動きが起こっていたのだ。

その情報はその日の夕方、時魔女の定時連絡で齎される事となった。


時魔女「男…大変だよ!」

男「どうした、どこかに翼竜が出たのか」

時魔女「うん…それだけじゃなくて、女ちゃんにはショックな事かもしれないんだけど…」


時魔女は定時連絡の内容が記された金属板を俺に手渡す。

そこに書かれていた、驚くべき事態とは。


男「…女、落ち着いて聞いてくれ」

女「……?」

男「月の王都に…翼竜が現れた。…月王が死んだそうだ」



530 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:12:36 ID:qvgvEXy6 [5/13]


二日前…その時刻を考えれば、巣穴を飛び出した翼竜はすぐに月の王都を襲ったらしかった。

翼竜は城下には目もくれず、王城の中枢を破壊。

その襲撃により月王は命を落とし、やはりその王の間に保管されていた竜の瞳は奪われたという。

女は複雑そうな表情で俯き、口を一文字に結んで聞いていた。


男「…女、何と言っていいか解らないが…その…」


兄に非道な仕打ちをしたとはいえ、月王は彼女にとって血の繋がった父親。

そして女から祖父母の健在を聞いた事は無い。

王が死んだ今、彼女にはもう直接に血を分けた肉親はいないという事になるのかもしれない。


女「大丈夫…私は独りじゃないですから。…そう…ですよね?」

男「……それが俺の事を言っているなら、当たり前だ」


心配をかけまいと思ったのだろう、おそらく無理に彼女は笑ってみせた。



531 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:13:33 ID:qvgvEXy6 [6/13]


一時間後、次の連絡には月の国についての続報が書かれていた。

そしてその内容もまた驚くべきもの、月軍によるクーデターが起こったというものだった。


突然に中枢機能が麻痺した月の政治と、軍の統制。

それを契機として、以前より月の砂漠侵攻に疑念を抱いていた軍の多数派が蜂起した。

将軍をはじめとする国王派を数で圧倒した反乱軍は、その日の内に革命を成し遂げる。


通信網も制圧し手中に治めた彼らは、星の国に対して同盟の維持を求めると共に新体制への内政干渉を拒否すると告げた。

自らを反乱軍とも革命軍とも名乗る事なく。

彼らは新体制を築く自身の軍勢を『月影軍』と呼んでいるという。



532 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:14:10 ID:qvgvEXy6 [7/13]


…その夜


確かに、この地への魔物の襲来は今のところ無い。

故に見張りも僅かに、ほとんどの兵が寝静まった宿営地。

俺は焚き火の傍に座り、何をするでもなく想いに耽っていた。


果たして次に翼竜が現れるのは、どこなのだろう。

残る竜の瞳は落日と星、そして旭日の王都にある。

いずれかで翼竜にとどめを刺す事が叶えば、その時この地で滅竜が目覚める事になる。

その場合、滅竜は紅き瞳の力を得る事は無い。

巫女の言葉を信じるなら、目覚めた滅竜は真竜の力によって討ち倒されるだろう。

白眼の七竜もまた、創造の主である滅竜が倒されれば消滅するらしい。

だが、あの剣撃をもってしても命を奪えなかった翼竜を倒す事など可能なのだろうか。



533 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:14:44 ID:qvgvEXy6 [8/13]


少し焚き火の勢いが衰えた気がして、俺は手元の枯れ枝を数本そこへ焼べた。

パチン…と、枝の肌が弾ける音が起つ。


翼竜を自らの手で葬るという目標は、少しその意味を変えてしまったように思う。

両親を殺したあの翼竜の意思は、もうきっと竜の中に無いのだ。


そもそも七竜は、神と崇められた真竜が人間の障害となる事を承知で配した存在。

真竜がそうせざるを得なかったのは、滅竜の脅威を人間から遠ざけるため。

そして滅竜が人間を滅ぼそうとしたのが、他ならぬ人間の傲慢のせいだというならば、果たして本当の仇敵とは誰なのだろう。



534 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:15:17 ID:qvgvEXy6 [9/13]


女「…静かですね」


じっと揺れる火を見つめていた俺の右後ろから、女が声をかけた。


男「女…起きてたのか」

女「はい、私も眠れなくて…」

男「俺もだ…昼間、怪我を庇って休んでばかりだからかな」


彼女は当たり前のように俺の隣に腰を下ろし、その肩を寄り添う。

互いの距離はいつの間に、これが普通になったのだろう。

そんな事を考えて妙にくすぐったく、また嬉しくもなった。



535 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:17:35 ID:qvgvEXy6 [10/13]


女「私…もう皇女じゃなくなっちゃいましたね」

男「未練が?」

女「いいえ、全く」

男「…だろうな」


ただ彼女が皇女ではなくなり、ドラゴンキラーを欲した月の国そのものが無くなったという事は、ひとつの契約がその拘束力を失ったという事でもある。


男「…もう、形式上の意味さえ無いんだな」

女「そうですね、無理に私達が夫婦である理由も無くなってしまいました」


もし今、彼女が契約の反故を申し出たら俺はどう答えるだろう。

今の気持ちがどうであれ、最初は無理に結ばれたに等しい仲だ。

もし彼女が、ごく普通の出逢いや恋愛を求めるとしたら。



536 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:18:46 ID:qvgvEXy6 [11/13]


ふと俺は先日の夢を思い出した。


『ごめんなさい…男さん』

『貴方の妻となれない事…お許し下さい…』


ぐっ…と胸が締め付けられるこの感覚には、微かに覚えがある。

五年前に幼馴染を港で見送った時、確か感じたはずだ。

でもあの時、俺はその感情を押し殺した。


男「…女、それでもさ」


今は、どうする。

押し殺す必要はあるか、いや…考える必要さえ無いだろう。


男「それでも…俺の妻であってくれ」



537 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/02(月) 20:19:43 ID:qvgvEXy6 [12/13]


少し勇気の必要な言葉だった。

なのにそれを聞いた彼女は、くすっと笑う。


男「…笑うなよ、言うの照れ臭かったんだぞ」

女「ふふ…ごめんなさい、でも…まさか言ってくれると思ってなくて」


怪我をした方の肩でない事を確認して、彼女は俺の腕を引ったくると自らのそれを絡めた。


女「でも、すごく聞きたかった。…言って欲しかったんです」

男「…そうか」

女「男さん…ひとつ、お願いがあります」


そのまま、俺の腕に頬を寄せて。

女は少しだけ甘えた声で願いを告げた。


女「全て終わったら…改めてプロポーズしてくれますか…?」


どんなに気恥ずかしくとも、この問いに対する答えを返さなかったら男が廃るだろう。

俺は少し大きく息を吸って、できるだけはっきりと言った。


男「必ず…しよう。待っててくれ、女」

女「…はいっ」



542 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 19:42:53 ID:LvJ6OUXw [1/2]


……………
………


…三日後


男「…ずっとそうしているんだな」


クレーターの中央、直径20ヤードほどの円形の祭壇。

女兄の消えたあの日以降、神竜の巫女の姿は常にそこにあった。


巫女「…どうかされたのですか」

男「いや、別に…ただあんたが眠ったり食事を摂ったりするのを見た事が無いと思ってな」

巫女「神竜の生命力を預かる私には、必要のない事です」

男「じゃあ、あんたは千年もの間…ずっと祈る事だけを続けてきたのか」

巫女「…そう定められた身、それが使命ですので」



543 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 19:43:37 ID:LvJ6OUXw [2/2]


祭壇の周囲には七つの宝玉があしらわれ、その内の六つが透明な輝きを湛えている。

おそらくあと一つ、紅く輝くものが翼竜の瞳の力なのだろう。

七つ全てが紅色を失った時、滅竜達の封印は解ける。


男「翼竜が死んだ瞬間に、滅竜は蘇るのか?」

巫女「…千年を超える封印です。おそらく完全に岩から戻るには少しの猶予があるでしょう」


七竜の討伐にさえ死力を尽くさねばならない人間にとって、滅竜など傷をつける術さえ無いのかもしれない。

それでも滅竜が復活する際には、それなりの態勢を整えておかなければならないだろう。

滅竜を倒すのは真竜に任せる事になる。

だがせめて白眼の七竜は我々で相手をして、真竜に余計な力を使わせないよう努めなければ。


男「…真竜を眠りから覚ますのは、いつになる?」

巫女「真竜に残る片瞳の力は、つい先日まで天蓋の結界を維持する力として使われていました。それを解き、今は少しずつ覚醒の力を蓄えています」

男「完全に覚醒するには、どの位かかるんだ」

巫女「今でも覚醒しようと思えば可能です。しかし、長く他の事に使っていた力…できるだけ完全な状態で覚醒するには、時間をかけた方が良いでしょう」



544 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 19:46:16 ID:tqeYeIBU


巫女「何にせよ滅竜が岩の姿でいる限り、どうする事もできません。滅竜が蘇る時が真竜も目覚める時です」


現在の我が隊は騎士長が戻ったとしても、二十名を切っている。

いかに白眼の七竜が紅き瞳のそれより劣る存在だとしても、その全てを相手にするなら戦力不足は甚だしい。


星の国からの連絡によれば、王政の崩壊した月の国では月影軍が我々と合流しようとする動きも見せているという。

しかしまだ体制の安定しない状態で、本当に多数の兵を送る事は難しいのではないだろうか。

星の国にしても、いつ翼竜が現れるとも知れない状態では兵を裂く事はできまい。


増援を期待する事は、現実的では無い。

俺はそう考え、少ない兵での戦略を検討するも答えは出ずにいた。



545 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 19:47:53 ID:tqeYeIBU [2/2]


しかし、更に七日が過ぎた夕方の事だった。


時魔女「あと…ジャガイモは結構あるけど、他の野菜は殆ど無いね。何より、肉が無いっ!」

幼馴染「もうふかしたお芋、飽きたなぁ…」

女「…焼き牡蠣、食べたいです」

時魔女「そういう今は絶対に食べられない物が、食べたくなるもんだよねー」


備蓄の食料が不足し始め、グリフォンを俺の故郷の村に飛ばそうかと検討していた時。

周囲の見張りに飛んでいた一体のグリフォンが戻り、それを駆る騎士が慌てた様子で報告に走ってきた。


騎士「男隊長殿…!外輪山の向こうに、多数の軍勢が集結しております!」

男「何だと…どこの兵だ?」


増援だというなら歓迎すべき事だが、月の国王派の残党という可能性もある。



546 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 21:14:19 ID:E0/MeB/c [1/5]


騎士「それが、見た事の無い軍旗を掲げており…確か黒地に、黄色の円。その円の中にまた黒い何かシンボルが描かれておりました」

男「黒地に黄色の三日月ならば、月の軍旗だ。しかし黄色の円…満月をモチーフとした物は、知らないな…」


やがてその軍勢は外輪山に登り、その縁に姿を現した。

俺達は一応の警戒態勢をもって、それを迎える。

遠目にしか見えないが、確かに見張りの騎士が言ったように掲げられているのは、満月を描いた軍旗。


時魔女「味方かな…」

男「解らん、だが敵だとしたら…勝てる数じゃないな」


次々と尾根に姿を増し続ける兵士、その数はおそらく百を優に超える。

念のためグリフォンは人員の移送が可能な状態にしてあるが、相対する軍勢に魔法隊や弓兵隊が多く在れば被害は免れないだろう。

外輪山は険しくはあるが、外側と内側共に登り下りができないほどではない。


幼馴染「…下りてくる」

時魔女「何人かだけ…みたいだね。一斉に攻撃してこないって事は、敵じゃない…かな?」



547 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 21:29:24 ID:E0/MeB/c [2/5]


暫くして俺達が立つ荒野に下りた兵士は五名ばかり。

どうやら纏っているのは月の兵装のようだった。

その内の一人が掲げた軍旗、黒に近い濃紺の背景に満月が浮かび、その中に象られたシルエットは地に突き立つ剣だと判った。

その剣からは長い影が伸びている。


男「そうか…あの旗は」


歩み寄る兵士は首を垂れ、掌を向けて右腕を横に延べた。


幼馴染「交戦の意志無し…だね」

男「先頭の二人、見覚えがある。一度は勝負をした仲だ…」


掲げられるは彼らが定めた、月影の軍旗。

そして二人は見事、俺を飲み負かした酒豪達だ。



548 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 21:30:05 ID:E0/MeB/c [3/5]


月影兵「男…隊長…!やっと…やっと、会えた…」

男「貴様ら…」

月影兵「すみませんっ…隊長…自分らも本当は…最初から合流…したかっ…た…ううっ」


涙などこれっぽっちも似合わないだろうに、彼らはぼろぼろとその頬を濡らしている。


男「…また俺を酔い潰しにきたのか」

月影兵「国にっ…家族があるから…参加できず…隊長…もし貴方と戦う事になったらと…俺はそればかり…」


俺の眼前に跪き、兵は嗚咽を堪えて言葉を紡ぐ。


男「よく来た…本当に、よく来て…くれた…」


熱くなる目頭を押さえ、俺は声を震わせないよう努めながら、できるだけ短い言葉を選んだつもりだ。


月影兵「すみませんっ…たった…これだけの兵で…まだ本隊は都を離れるわけにいかず…」

男「何を言う…貴様らが来てくれただけで、千の軍勢にもなった想いだ…」



549 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/03(火) 21:30:48 ID:E0/MeB/c [4/5]


宿営地の端に繋いでいた三頭の馬が、不意に鳴き声をあげる。

後ろの三人はあの時、俺に馬を託したチェイサーだったのだ。

すぐにでも愛馬に駆け寄りたい事だろう。

しかし軍人たる彼らは、それより先に俺の前に整列して言った。


月影兵「月影の師団…男隊長っ…!我々…月影軍選抜隊、百三十四名…!貴殿部隊にっ…合流…した…く……」

男「……長旅…ご苦労だった…歓迎しよう。貴様らが入れてくれたバーボン……まだ一口しか飲んでいないぞ」


兵の肩を抱く。

情けなくも、俺の目からも涙が堰を切ってしまう。


月影兵「…うっ…うう…隊長っ…」

男「いつか…貴様らと空ける…そう…思っていた…から…な…」



554 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 17:26:58 ID:a..32Ga6


………



翌日、星の国を通じて白夜の国からの伝言が届いた。

騎士長は落日に訪れた後、白夜へ一度帰還していたのだ。


落胆すべき報告は二つあった。


ひとつは騎士長が落日に着いた時、既に翼竜はその王都を襲いハイドラの瞳を奪い去っていた事。

もうひとつは、やはり白夜の国からクエレブレの瞳が消失していたと判明した事。


逆に歓迎すべき報告も、ひとつあった。


現在、白夜ではグリフォン騎士団の本隊を割いて派遣部隊を組織しようとしているという。

騎士長らは既にこの地への帰還を目指して白夜を発ったが、残る派遣部隊も整い次第送られるという事だ。


騎士長が入手した落日の情報によれば翼竜は襲撃の際、落日軍の抵抗によりかなりのダメージを負ったらしい。

東に消えたという翼竜は、旭日か星のどちらかを目指している事だろう。

無論、既に連絡を受けている両国は、万全の態勢でそれを迎え討つはずだ。

どちらかの国で翼竜が堕とされる可能性は、充分にあると思われた。



555 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 17:39:27 ID:mD2H7Of. [1/3]


七つの瞳を揃えた状態で翼竜がこの地へ戻り、どのような形であれ滅竜が紅き瞳の力を手にすれば、真竜にそれを倒す事が可能かは判らなくなる。

自らの手でとどめを刺したいという想いはあれど、竜が遠い地で討たれるに越した事は無いだろう。


…しかし、その期待は儚く散る事となる。


騎士長からの連絡の二日後、星の国に現れた翼竜。

王都の被害を防ぐため、星の部隊はサーペントの瞳を付近の洞窟に隠し、翼竜を待っていた。

どうやって瞳の在り処を察するのかは解らないが、翼竜は狙い通りその洞窟のある谷に現れる。

しかし幾百の矢を受けても堕ちず、魔法を全て拒絶する竜を相手に、星の部隊は苦戦を強いられた。


瞳を隠した洞窟は、翼竜の侵入を許すほど広くは無い。

わざとそういう地形を選んだ…それが裏目に出る事となる。


そのままでは瞳を奪えないと察した翼竜はその場から飛び去り、突如として星の王都を襲ったのだ。

甚大な被害は王城だけでなく城下にまで及び、人々は無差別に殺戮されていった。

そして見かねた星の部隊が断腸の想いで瞳を洞窟から出すと、翼竜は王都を離れそれを奪い去っていったという。

それは明らかに『瞳を差し出さないなら全てを破壊する』という、意思をもった行動だった。



556 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 17:40:14 ID:mD2H7Of. [2/3]


そして更に三日後、ついに翼竜は最後の瞳を奪うため旭日の国に現れる。


旭日では星の情報を受け、オロチの瞳を渓谷に配した一千の大軍勢に護らせて迎撃しようとした。

幼馴染の師であるドラゴンキラー率いる魔弓隊は翼竜に善戦し、オロチ戦の経験からすれば充分に葬るに足る程のダメージを与えたという。


それでも翼竜は死なない。


六枚の翼の内の三枚を失ってもなお死霊のように飛び続ける竜は、最終的に瞳を奪取して飛び去った。

とうとう翼竜の元に七つの瞳は揃ってしまったのだ。



557 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 17:41:33 ID:mD2H7Of. [3/3]


傷ついた翼竜は、近接する星の国と旭日の国を移動するために二日間を要した。

加えて更に旭日で大きなダメージを負ったであろう翼竜がこの地へ戻るには、距離を鑑みれば最低でも七日以上はかかると思われる。

途中で力尽き、堕ちる可能性もあるかも知れない。


しかしそれからも日に数度、各地で上空を通過する翼竜が目撃されたという情報は入り続けた。

現在の翼竜は空の覇者たる姿は見る影もなく、まるで死にかけの蝙蝠のようにふらついているという。

血と黒い霧を噴出させながら、時には墜落しそうになりつつ、それでもこの地を目指し飛び続ける翼竜。


…あれほどに憎んだ、仇敵。


俺にとってだけでも両親の、そして傭兵長達の仇だ。

それなのに俺の胸中には、滅竜に生かされ操られ続ける竜を憐れむ想いさえ生まれていた。



558 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 18:48:19 ID:kbggjhmE [1/3]


そして、九日が過ぎた夜。

俺と女、幼馴染、時魔女、そして帰還した騎士長はひとつ焚き火を囲んでいた。


男「やはり、翼竜は死ななかったんだな」

騎士長「夜間でなければグリフォンで迎撃するのだが…」

男「いや…旭日で相当の傷を負いながら十日近く飛び続けるなど、もはや不死としか思えん」

幼馴染「翼を全て落としたら…?」

騎士長「旭日では数枚の翼を落としたそうだな」

時魔女「うん…でも、翼竜が飛び去る時には黒い霧で縫い合わせられたようにまた繋がってたんだって…」


滅竜は解っているのだろう。

紅き瞳の力を得る事無く蘇れば、真竜に倒される事を。

故に決して翼竜を死なせず、何としても七つの瞳を自らの元に集めてから復活するつもりなのだ。


男「明日の戦いは、どんなものになるか解らん。だがおそらく、これが最後の決戦になるだろう」

騎士長「決戦…まさに、そうだろうな。もし真竜と我々が敗れれば、この世界が終わる」



559 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 18:49:39 ID:kbggjhmE [2/3]


俺の傷はまだ痛みはするものの、とりあえず動かしても口を開けるような状態ではない。

兵は総勢で百六十名に及ぶ。

白夜からの派遣部隊の第一陣として、新たに十体に及ぶグリフォンの騎士も既に参入している。

白眼の七竜の全てと同時に戦うなら分割される事にはなってしまうが、まともな戦略がとれないほど少なくもないだろう。


だがもし真竜が敗れたら、我々はあの巨大な滅竜に挑まなければならない。

神と呼ばれた竜と戦う…なんと大それた話だろうか。

まさか田舎農夫たる俺が、このような重責を負う事となるとは。


男「明日の戦いに引き分けや延長戦は無い…負けても逃げても待つのは死だからな」

騎士長「無論、勝って生きるに越した事は無いが…逃げて死を待つよりは」

男「ああ、だがそれは俺達の理屈だ」


俺は焚き火を見つめたままそう言った。

その言葉を宛てた者達の返答は、知れていたけれど。



560 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 18:50:35 ID:kbggjhmE [3/3]


幼馴染「…見くびらないで、怒るよ」

時魔女「時間停止が効かなくったって、やれる事はあるんだから。男が生きてるのは、誰のおかげだと思ってんの」

女「もう言い飽きましたし聞き飽きました、お腹いっぱいです」


俺は目を閉じて聞いていた。

今、どんなに説得しても彼女らが退く事は無いのだろう。


騎士長「…どうやら、我々だけの理屈では無いようだな」

男「ああ、仕方が無い。…このお転婆共め」

女「…ひどい」

幼馴染「知ってた癖に、ばーか」

時魔女「時間止めちゃおっかな」


俺は堪えきれず笑いを漏らした。

彼女らを死なせないためには、勝つしかないのだ。



561 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 19:52:11 ID:uh2tP9rA [1/12]


………



…翌日、明け方


騎士長「総員、整列!」


まだ薄暗い早朝、全兵がこの地の中央に整列する。


男「…時は、来てしまったようだ」


先刻、外輪山の尾根に配していた見張り兵から、翼竜接近の知らせが入った。

飛来する速度は遅く、まだ数分以上の猶予はあるだろうとの事だった。


男「決して、勝ちの見えた戦ではない。だが…我々は勝たねばならん」


知らせを受けて十体のグリフォン部隊が迎撃に向かったが、恐らくそこでとどめを刺す事は難しいだろう。


男「ここへ達した翼竜がどうするのか…どのように滅竜達が蘇るのかも、解らない。…だが、臆するな」


真竜の巫女はいつもと同じ、中央の円形祭壇で祈りを捧げていた。

もうすぐ真竜を覚醒させ、そして真竜が力を使い果たした後は巫女も消滅する。

真竜の命を受け入れ、その生命力によって千年を生きた彼女。

望みこそしても、悲しむ想いなど無い…そう言っていた。



562 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 19:53:03 ID:uh2tP9rA [2/12]


男「今までも、命を賭さない戦いなどなかった筈だ」


例え今を生き延びようとも、敗れれば待つのはいずれ訪れる死。


男「もはや、死ぬなとは言わん。総員…死力を尽くせ、これが最後の戦いだ」


天蓋の無いこの地に、緩い風が吹き抜ける。

一体のグリフォンが帰還したのだ。


騎士「…翼竜は身体周囲に即死魔法の魔法陣を張り続けており、攻撃できませんっ…!」

騎士長「最期の力を使い切るつもりか…」


やはり、避けられない。

おそらく滅竜は紅き瞳を手にしてしまうだろう。



563 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 19:53:56 ID:uh2tP9rA [3/12]


男「……総員、聞け!」


真竜はそうなった滅竜を倒せるのか…それはもう、考えても仕方が無い。


男「翼竜に矢と魔法が届くようになり次第、一斉に放つんだ!翼竜が死んだ後、滅竜と白眼の七竜が蘇るだろう…恐らくは滅竜よりも七竜の覚醒が早いと聞いている」


滅竜達の封印が解け始めると同時に、真竜は覚醒される手筈になっている。

目覚めたばかりの真竜が白眼の七竜の攻撃に晒されないよう、それを防がなければならない。


男「盾兵、槍兵を中心に三十名が真竜の守護にあたれ!残戦力は状況に応じて七竜に立ち向かえ!上空のグリフォン隊と地上部隊で交互に攻め、撹乱する!」


迎撃部隊のグリフォン全てが帰還してきた。

やはり攻撃は不可能だったようだ。


騎士「翼竜!外輪山に差し掛かります!」

男「…残念ながら、それ以上の作戦はたたん。己の命を自ら賭けるんだ。各自の判断に任せる!」



564 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 19:54:41 ID:uh2tP9rA [4/12]


そしてついに翼竜は外輪山の尾根を越え、姿を現した。

長い首と尾をだらりと垂れ、破れ引き裂けた翼を力無く羽ばたかせながら、やがてその高度を落としてゆく。


男「…なんて、ザマだ」


真っ直ぐに岩の滅竜を目指すその屍のような姿に、複雑な想いがこみ上げた。


男「弓兵隊…構えろ!」


ここからでも判る、噴き出し滴る血と黒い霧。

半分開いた顎からは犬のように舌が垂れている。


男「弓兵…放てっ!魔法隊…雷撃魔法、詠唱…!」


矢が一斉に放たれる。

届く高度ぎりぎりではあるが、今の翼竜はそれを避ける動作すら見せない。

翼の孔が数と面積を増していき、飛び方は更にぎこちないものとなってゆく。



565 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 19:55:15 ID:uh2tP9rA [5/12]


魔法兵長「詠唱、完了します!」

男「発動位置に入り次第、放つんだ!」


雷撃に限らず、魔法は発動する場所に狙いを定めて詠唱を行う。

つまり通常なら飛翔する魔物、ましてや翼竜相手にはその狙いが定まるものではないのだ。

しかし今の愚鈍に、しかも真っ直ぐに飛ぶ竜になら充分に対応できる。


翼竜が向かう前方の僅か上空に、暗雲が渦を巻いた。

躱す事もせず進む竜を襲う、青白い稲妻。

一層の勢いをもって噴出する、滅竜の生命力たる黒い霧。

翼の動きが止まり、バランスが失われる。


幼馴染「…堕とすよ!」


風を切る鋭い音と共に竜を目掛けた矢は、その翼下で大きく炸裂した。

呻くような咆哮と共に、竜が堕ちる。



566 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 19:57:12 ID:uh2tP9rA [6/12]


轟音と共に地に叩きつけられた翼竜は、暫く微動だにしなかった。

しかしやがて翼を地面に引き摺りながら、後ろ足の力だけで這い始める。

首を持ち上げる事もできず腹を地に着けたまま、蚯蚓のように這う姿は余りにも痛々しい。


もはや滅竜の生命力をもってしても、まともに動く事は叶わないのだろう。

即死魔法の効果範囲も既に消え失せており、進む速度は人間が歩くよりも遅い。

俺は竜の眼前に立ち、その瞳を見た。


男「…もういい」


紅き右瞳、金色の左瞳。

その眼差しは悲しく、早く殺してくれと懇願しているようにさえ映る。


墜落の際に千切れた翼は地に伏せられたまま、黒い霧に縫われるという気配は無い。

もう滅竜にとって、この翼竜の役目は終わろうとしているのだ。


男「それ以上…動くな、翼竜」


傷だらけの竜が、ゆっくりと迫る。



567 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 19:58:38 ID:uh2tP9rA [7/12]


剣を抜く。


急所たる眉間、そこを護る鱗は剥がれ落ちている。

刃に闘気を充填する必要さえ無いだろう。


男「仇敵よ…さらばだ」


渾身の力をもって、眉間を貫く。


竜が、動きを止める。


すぐに筋肉が弛緩してゆくのが判った。

それまでも弱々しかった呼吸が、止んでゆく。


男「…断末魔さえ…あげられないのか」


これが、あれほどに果たしたかった仇討ちだというのか。


俺は、幼馴染は…こんな事を望んでいたんじゃない。


血に濡れた剣を抜き、俺は瞼を閉じゆく竜から目を逸らした。



568 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 20:05:48 ID:uh2tP9rA [8/12]


ずん…と、地響きが鳴った。


周囲の空気が重いものに変わったかに感じられる。

地震のように大地が震え、まだ暗い上空の雲が渦を巻いてゆく。


男「…総員、戦闘準備」


岩がひび割れる音が、鈍く轟いた。

滅竜の、七竜の身体を覆っていた岩石が少しずつ崩れ始める。



569 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 20:06:22 ID:uh2tP9rA [9/12]


男「例え命を落とそうとも、この世界が続くなら勇士の名は碑に刻まれよう…!」


祭壇に立つ巫女が両腕を横に広げ、天を仰いだ。

その周囲の宝玉、最後のひとつが紅色を失う。

代わりに天から射ち堕ろされる、金色の光。

それは巫女を包み込み、結晶のような形に乱反射している。


そして彼女はずっと閉じたままだった瞼を開いた。

その瞳、左は金色。

右は竜のものと同じ、真紅。



570 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 20:07:01 ID:uh2tP9rA [10/12]


光の結晶は次第に姿を変え、巨大な竜のシルエットとなってゆく。

未だ半身を岩に包まれた滅竜よりも僅かに大きいと思われる巨体、金色の鱗を身に纏いし神の竜。

その雄々しさは兵を奮い立たせるに足るものだ。


男「怖れるな…!吠えろ!恐怖を払え!我々が護ろうとするは、この世界だ!命を賭すなら、今をおいてあるものかっ!」

総員「おおおおぉぉぉっ!!!」


全戦力の雄叫びと、七竜から崩れ落ちる岩の破壊音。

大気を震わせたのは、いずれだったろうか。

少なくともその後に響き渡ったのは、最初に蘇りし多頭竜ハイドラの咆哮だった。



571 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/06(金) 20:07:36 ID:uh2tP9rA [11/12]



男「各自散開!…健闘を祈るっ!」



この世界が続くならば、きっと新たな神話として語られるであろう。



最後の戦いの火蓋は切って落とされた。



588 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:30:42 ID:I.MoTj66


ハイドラの動きはまだ鈍い。

五本の首の内、白い瞳を持つものは中央のひとつだけ。

おそらくそこを落とせば致命傷となるに違いないが、それぞれ自由に動く首が周囲を睨み前方には隙が無い。


騎士長「おおおぉぉっ!」


しかし素早く後方に回り込んでいた騎士長の駆るグリフォンが、首の付け根を狙って降下する。

その槍は深々と突きたち、青い血が噴き出した。

どうやら紅き瞳のそれよりも、白眼の鱗は脆いらしい。


一番左の首をくねらせ悶えるハイドラ、しかしカウンターの如く右の首が背後に向き騎士長を襲う。


幼馴染「そうくると思ってたよ!」


既に構えていた三本の矢が射られる。

それは別々の軌道を描きながら、騎士長に迫る首の目と頭部に突き刺さった。

その隙に騎士長のグリフォンが大きく羽ばたき、一時離脱する。



589 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:32:42 ID:I.MoTj66 [2/10]


続けて歩みを止めていたハイドラの周囲に、冷気が集まってゆく。


魔法兵長「凍てつくがいいっ!」


魔法隊の内の十数名による完全詠唱の凍結魔法が、竜の脚部ごと周囲を氷に包んだ。


時魔女「時間加速っ!」

女「いきます…!」


時魔女が付与した力に補助され、女は僅か数秒で詠唱を終える。


女「吹き飛びなさいっ!」


火薬を炸裂させたのかと見まごう程の爆発に包まれる、ハイドラの首。

爆裂魔法と呼ばれる術だが、使いこなす者は少なく見るのは初めてだった。

その威力は凄まじく、右の二本の首が弾け飛び夥しい血が噴出する。



590 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:33:30 ID:I.MoTj66 [3/10]


男「いいぞ…!やはり紅眼の竜よりは劣る!」


俺はハイドラの側面に回り、その動きを封じる氷を駆け上った。

闘気の充填は温存しなければならない、この白眼の鱗なら切り裂きは出来ずとも刃を突きたてる事は叶うだろう。


男「喰らえ…っ!!」


全力をもって剣を突く。

重い手応えと共に刀身が竜に沈む。

大きな弦楽器を掻き鳴らすような、苦しみの咆哮をあげるハイドラ。


男「おおおぉぉっ!!!」


体表を支点に体内を刃で切り裂く。

返り血に顔を背けながら、俺は剣を抜き距離をとった。



591 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:34:37 ID:I.MoTj66 [4/10]


心臓には届かずとも、ダメージは大きく累積しているはずだ。

このまま一体ずつを相手にするなら勝機は充分にあると思われた、その時だった。

別の方向から、空気を震わせる咆哮が届く。


騎士長「…久しい顔が見えたな!」

幼馴染「クエレブレ…!」


その先には二体目の竜が首をもたげていた。

今のところ、竜が蘇る順序は対の竜が倒された通り。

クエレブレが動き始める前にハイドラを葬る事が出来ていれば言う事は無いが、それは叶わなかった。

もし本当に順番に蘇るとしたら、紅眼のハイドラが倒されたのは八年前。

クエレブレが五年前である事を思えばこの後少しの間をもってオロチが動き始めるだろう。

その場合サーペントとサラマンダー、更にヴリトラとワイバーンは殆ど間を空けずに蘇る可能性がある。


少なくとも今の二体は速やかに倒さねばならない。



592 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:35:41 ID:I.MoTj66 [5/10]


騎士長「魔法隊!火炎魔法詠唱を…!」


咄嗟に騎士長が命令を下した。

彼の事だ、何らかの意図があっての事に違いあるまい。


幼馴染「大丈夫…!ここは洞窟じゃない、クエレブレの毒霧のブレスは炎で蒸発させればいい!」


まだ旭日の部隊としては駆け出しの頃、彼女はこの竜の対となる存在と戦った経験がある。

クエレブレは大洞窟に潜んでいた。

故に吐出する毒霧がそこに充満し、幾度にも渡って討伐隊が全滅してきたという。


幼馴染「あの時は旭日の魔弓隊が洞窟後方から竜を追い立てて白夜側へ出させた…そこからはグリフォンの総攻撃で圧倒したわ!」


竜が顎を大きく開け、周囲の空気を吸い込む。


男「来るぞ…!」


放射される紫色のブレス、吸い込めば命は無い。


魔法兵長「焼き払え!」


詠唱途中ではあるが、火炎魔法が放たれる。

立ち昇る火柱はその毒霧の拡散を防ぐには充分なものだった。



593 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:36:55 ID:I.MoTj66 [6/10]


騎士長「洞窟の中では空気を薄くする火炎魔法は満足に使えなかった…!だが今は違うぞ!」


グリフォンの編隊がクエレブレを包囲する。


男「よし…!クエレブレは彼らに任せろ!ハイドラにとどめを刺すんだ!」


残るグリフォン隊がハイドラ周辺から離脱するのを待って、弓兵隊が一斉掃射を開始する。

その脚部を封じていた氷塊は既に砕け、ハイドラは自由を取り戻していた。


男「手を休めるな!矢が途切れれば竜の歩みを許す事になる!」


その動きがままならない内に、魔法攻撃で潰すのが最善だ。

しかし魔法隊はクエレブレにも割かれ、先ほどよりも数や威力は劣る。

女の爆裂魔法に期待したいが、あの術は消耗も大きいだろう。

連戦に備えるためにも、多用はできない。


男「少しづつでもダメージを与え続けろ!あと二本…いや、一本でも首を潰せば俺がとどめを刺してやる!」

あまり時間はかけられない、気持ちばかりが焦る。



594 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:37:47 ID:I.MoTj66 [7/10]


弓兵「矢が不足し始めています!」


補給が追いついていない、弾幕が途切れ始めていた。


男「仕方がない…!女、もう一度…」


止むを得ず、女に再度の魔法攻撃を指示しようとした…その時。


幼馴染「…オロチが!」


白眼のオロチを覆っていた岩が、割れる。


男「まずい…これ以上、分散させなくてはならんのか…!」


ハイドラに向かう数少ない魔法隊が、足止めとしての火炎魔法を放つ。

竜の前に立つ火柱、しかしその歩みを止めるには些か弱い。

オロチが動き始め、恐るべき速度で地を這い迫る。



595 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:38:47 ID:I.MoTj66 [8/10]


明らかな危機に絶望が脳裏に過った、その刹那の事だった。




???「月の魔法隊が放つ火柱が、その程度とはな…!」




周囲の気温が灼熱に変わる。


時魔女「え…!?」


吹き付ける熱風。

眩い閃光と共に立ち昇ったのは、ハイドラの体躯を覆い尽くす程の炎の壁だった。


女「何て…威力…!あれが同じ火炎魔法なの…!?」

男「あの隊の装束は…!」


濃緑の大地に沈む夕陽のシルエットを模した国旗、それと同じ配色のローブに身を包む一団。


???「元よりハイドラは我々が討つべき竜!月の革命軍の手を借りては名折れというものよ…!」


それは落日の魔導隊の兵装に違いない。


時魔女「大魔導士!…落日のドラゴンキラー!」

大魔導士「落日の魔導隊、五十名!…暴れさせて貰うぞ!総員、翼竜を討ち損じた王都での屈辱!存分に晴らすがいい!」



596 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:39:52 ID:I.MoTj66 [9/10]


ハイドラを包む炎が消えない内に、今度はその内側で鋭く尖った氷の結晶が生まれる。

更に間髪を開けずその頭上に雷雲が現れ、稲妻が竜を捉えた。


女「信じられない…無詠唱の連続魔法…!」

男「落日の大魔導士殿…ハイドラは任せた!」

大魔導士「偉そうを言うな小童!貴殿は蛇と戯れるが似合いだ!」


オロチに向き直る。

砂を泳ぐ際のヴリトラと遜色ない速度で地上を這う蛇。

クエレブレに気をとられた魔法隊の数名を弾き飛ばして、こちらに迫っている。


男「真竜に向かわれるよりはましだ…俺達が相手になってやる!」


視界の端、真竜はその翼を広げ力を蓄えているようだった。

巫女はその前脚に寄り添い、滅竜を見据えている。



597 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:40:52 ID:I.MoTj66 [10/10]


幼馴染「炸矢…複式っ!」


オロチ目掛けて三本の矢が射られた。

その全てが竜の頭部に届いては炸裂し、土煙が包む。

しかしオロチはその煙幕を突き抜け、なおも変わらぬ速度で突き進んだ。


男「回避しろ!幼馴染!」


対オロチを担う全兵が、その両側を目指し二手に分かれて駆ける。

果たして竜が追うのはどちらになるか。

白き瞳がぐるりと動き、俺の姿を捉えた。


男「…こっちか、いいだろう!槍兵!俺がオロチの気を引く…!胴を攻めろ!」

槍兵「はっ…!」



598 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:50:19 ID:kaEeTq02 [1/2]


まさに蛇が獲物に飛びかかるように、顎を開いたオロチは俺を目掛けて首を伸ばす。

確かにスピードは砂を泳ぐヴリトラほどもある、しかしここは砂漠ではない。


男「喰えるものなら喰ってみやがれ!」


俺にとっても砂上よりは、よほど走りやすい。

横に跳ぶようにその牙を躱す。

俺を捉え損なった、そのがら空きの背後からは。


幼馴染「炸矢…!いくらでもおかわりさせてあげる!」


オロチの巨体が浮く程の炸裂、怒りを覚えた大蛇が今度は矢の主に向き直った。

その死角から槍兵の攻撃が胴に突きたてられる。

痛みに身を捩り、大きく顎を開けた…その口の中。


女「…丁度良い位置です、私もご馳走して差し上げましょう!」


幼馴染の矢を凌ぐ、大規模な爆発が巻き起こった。



599 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 16:51:16 ID:kaEeTq02


大魔導士「ほう…!その魔法を使う者がいるとはな!」


感嘆の声を投げる落日のドラゴンキラー。

既にハイドラは四本の首を失い、残る白き瞳を持つ首も地を擦る状態だった。

クエレブレもまた膝を折り、陥落は目前の様子だ。

ひとまず今、蘇っている竜の制圧は目前と思われた…しかし。


男「気を抜くな!オロチが再び動くぞ!」


先程よりも鈍い動作で、オロチは鎌首を擡げる。

そして、その背後。


幼馴染「う…わ…!」

時魔女「こりゃキツイわ…」


遠吠えのような複数の咆哮。

サーペントとサラマンダーが岩を破り、ヴリトラを包む岩石もまた大きくひび割れていた。



600 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:31:01 ID:o2kgVY82 [1/8]


男「怯むな…サーペントは湖から出られまい!砂の無いヴリトラも恐るるに足らん!」


しかし状況は決して良くは無い。

サーペントは水流のブレスを吐くと聞いたし、如何に砂漠でなくともヴリトラも手緩い相手ではない筈だ。


湖を泳ぎ始めたサーペントは一度水中に潜る。

おそらく浮上した時には溜め込んだ水をブレスに変えて放つだろう。

むしろ手を出せないのは我々の方だ。


翼竜の速度には遥かに及ばないが、空を舞うサラマンダーも脅威となるだろう。

それでも兵の士気を下げるわけにはいかない。


男「サラマンダーが迫る前にオロチを仕留める!矢を射れ…!補給を急ぐんだ!」


再び、矢の弾幕が上がる。

微弱なダメージかもしれないが、動きを止める事はできる。



601 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:31:36 ID:o2kgVY82 [2/8]


俺は温存している剣のトリガーを握るべきか悩んだ。

おそらく白眼の竜が纏う鱗なら、あの放出する光の刃で切れる。

だがそれは本来、ワイバーンを仕留めるために残しておくべき手段だ。

いかに紅眼の翼竜に劣ろうとも、飛翔する速度は変わらないかもしれない。

魔法や矢では捉え切れない可能性が高いだろう。


サラマンダーは既に空に舞い上がり、悪い事にこちらではなく真竜を目指している。

オロチに手間どっている場合ではない。

矢は途切れず大蛇の動きを封じているが、仕留めるに至るにはまだ時間を要すると思われた。




???「与一流弓術、追影炸矢複式…!」




突如、オロチを幾つもの炸裂弾が襲う。



602 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:32:18 ID:o2kgVY82 [3/8]


長いオロチの体躯、その内でバランスを崩すであろう複数の位置を狙った炸裂の矢。

大蛇の巨体がまさに浮き、弾き飛ばされる。


幼馴染「複合弓術…しかも五連複式!こんな事、できるのは一人しか…!」

???「久しいのお…愛弟子よ」


独特のチェインメイル、腰に差されたカタナと呼ばれる細身の剣。

外輪山の尾根に姿を現した騎馬部隊。


幼馴染「お師匠様…!」


それはサムライと畏怖される、旭日の魔弓隊の姿だった。


男「あの崖のような山肌を、馬で登ったってのか…!」

幼師匠「ふん…我が国の山岳に比すれば、丘のようなものぞ。どれ、この老いぼれも祭りに加えて貰おう!旭日の魔弓隊二十五名、参る…!」


魔弓隊が外輪山を駆け下りる。

馬上から射られる全てが炸裂の矢。

手足を持たないオロチは体勢を立て直す事すら出来ず、その閃光に呑まれてゆく。



603 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:32:53 ID:o2kgVY82 [4/8]


旭日の攻撃に目を奪われた俺に、高い位置からサラマンダーの咆哮が届いた。


そうだ、驚愕している場合ではない。

まだ新たに目覚めた、三体の竜がいる。


男「真竜…守らなければ!」


既にサラマンダーは顎を開き、火炎を吐出する体勢をとっている。

そしてそこまでの距離は、まだ矢や魔法が届くほどに近くない。

ごうっ…という風の音が鳴る。


女「間に合いません…!巫女様が!」


しかしそれは、サラマンダーのブレスによるものでは無かった。



604 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:33:35 ID:o2kgVY82 [5/8]


あまりに大粒な雨のように、風を切り火竜に落ちる影。

見る間に切り刻まれてゆく、その翼。

獲物を捕らえる隼の急降下に似た、その攻撃の主は…




???「遅くなったな…許せ、騎士長」




…その全てが数十体にも及ぶグリフォンの騎士。


騎士長「新王陛下…!」


それは新王自身が率いた、白夜騎士団の本隊だった。


白夜新王「グリフォン騎士団、四十騎…月影軍に加勢致す…!」


十体ずつ程度に分かれたグリフォンの編隊が、別々の角度から再び竜に迫る。


編隊長A「レッド小隊、攻撃開始!」

編隊長B「ホワイト小隊、攻撃する!」

編隊長C「ロゼ小隊、交戦!」


翼竜に比べて愚鈍な飛行能力しか持たないサラマンダーに、その攻撃を躱す術は無い。


白夜新王「この戦こそ、余が国を率いるに相応しいかの試練!先王の無念をこの槍に預かった…白夜の誇りを受けよ!」



605 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:34:24 ID:o2kgVY82 [6/8]


男「なんて事だ…!ははっ…月影の隊士よ、負けていられるか!ヴリトラを討つ、いくぞ…!」

月影兵「おおぉっ!!」


岩を破ったヴリトラの元へ走る。

しかしその脇の湖、サーペントが浮上し首をもたげた。

その腹にはブレスに変えるための水をたっぷりと飲み込んでいる事だろう。

たかが水と侮る事はできない。

火のように熱く無くとも、毒霧のように致死性は無くとも、高圧のそれをまともに受ければ衝撃は凄まじい。


サーペントの嘴が開く。


男「走れ!ヴリトラの周囲まで行けば水流のブレスは届くまい!」

時魔女「…あっ!」


その時、荒野の窪みに足をとられた時魔女がよろめいた。


女「時魔女さんっ!」


遅れる彼女の元へ駆け寄る、女。


あの日、砂漠で副官を失った時と同じ。

俺の脳裏に悪夢が甦る。



606 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:35:10 ID:o2kgVY82 [7/8]


次の瞬間、炸裂の矢とも魔法による爆発とも違う破壊音が轟いた。

吐出するつもりだった水を撒き散らしながら、サーペントが再度水に沈む。



???「…新兵器の威力は如何かしら」



その側頭部を捉えた一撃は、未知の兵器によるもの。


時魔女「…来て…くれたの…!」


おそらくその兵器の開発者であろう女性は、外輪山の頂に据えた砲身の脇にいた。

彼女は星の国、技術開発局長の肩書きを持つ才女。


星の副隊長「いい子にしてましたか、隊長…?」

時魔女「あ、当たり前じゃん!ボクがいなきゃダメって位、役に立ってんだからっ!」


彼女の横には二基目、三基目の兵器を組み上げる兵の姿が見える。



607 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 19:35:53 ID:o2kgVY82 [8/8]


月影兵「サーペント、再浮上します!」

星の副隊長「あはん…今ので終わりじゃツマンナイと思ってたの」


彼女が照準を覗きこむ。

鉄の筒で出来ているであろう長い砲身、その横に備えられたシートに座った彼女はきっと妖しく笑んでいる。


星の副隊長「ロックオン、距離・風向補正完了、白眼の海竜…スコープで見るとなかなかセクシーな横顔よ」

時魔女「うわ…副隊長、機械に触ると性格変わるんだよね…」

星の副隊長「新型カノン、名は…そうね…『ドラゴンスレイヤー』でいいかしら?…さあ、可愛がってアゲるッ!!」



608 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:55:38 ID:5duczdw. [1/8]


そして俺はヴリトラの眼前に達した。

白眼の者にではないが、渇竜には借りがある。


男「…悪いな、紅眼の代わりに返させて貰うぞ!ヴリトラ!」

時魔女「魔力コンバート、時間加速モード!座標ロックオン!女ちゃん…いくよっ!」

女「はいっ!」


女は素早く詠唱を済ませ、ヴリトラの頭上に雷雲を呼んだ。

迸る稲妻、雷撃を受けた竜は身体を反らし、その視界に隙が生まれる。


俺は死角から駆け寄り、腹部に剣を突きたてた。

だが、この巨大な竜を一突きで倒せるはずはない。

すぐに剣を抜き、二撃目、三撃目を突く。

長い身体のどこかにある心臓を探して、何度もそれを繰り返した。

槍兵らもそれに続き、ヴリトラは痛みに悶えている。


しかし、次の瞬間。


女「危ない…男さんっ!」



609 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:57:35 ID:5duczdw. [2/8]


竜は力を蓄えるように、その身体を縮めた。


男「尾に気をつけろ!」


言い終わるより早く襲う、鞭のようにしなる尾の打撃。


槍兵「うわああぁぁっ!!」


数名の槍兵が払い飛ばされ、犠牲となってしまう。


時魔女「男…!時間停止を…!?」

男「だめだ!翼竜まで温存しろ…!」


本来ならヴリトラに対して直接攻撃を行うには、まだ早い。

だが少しでも早く片付けねば、人間にとって最も厄介な竜が目を覚ます事となる。


俺は退かず、再度剣を構えてヴリトラの腹部を抉った。

苦しみの咆哮をあげる白眼の渇竜。

しかしまだその心臓は見つからない。



610 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:58:34 ID:5duczdw. [3/8]


時魔女「だめ!そろそろ離れて…!」


ヴリトラが首を回す。

その白き瞳が俺を捉える。

この状況で、砂漠での俺は闘気を失い動けなかった。


男「来いよ…!今度は切り裂いてやる!」

女「無茶をしないで!男さんっ!逃げて…!」


無茶は承知だった。

それでも早くこの竜を仕留めなければならない。


例えヴリトラの牙と刺し違えてでも、その眉間を貫いてやる。

死にさえしなければ、時魔女の能力で救われるはずだ。

もし死んだら、それまでの命だっただけ。


ヴリトラがその顎を開き、俺を襲う。



611 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:05:37 ID:5duczdw. [4/8]




???「無鉄砲さは健在のようですな、隊長…!」




その竜の眼前に、一人の戦士が舞った。

その者は斬撃を繰り出し、竜の左眼を抉る。

血を噴きながら、渇竜が退く。


馬鹿な、背丈の五倍はある高さだった。

何故そんな跳躍ができる。

それを可能にする、その左足は。


???「出過ぎた事…お許し願おう」


機械仕掛けの義足、ニヤリと笑う三十路越えの男。


月の副隊長「待たせましたな…良い休暇でありました」

男「…よく戻ってくれた、我が副官よ…!」

月の副隊長「さあ…私も借りを返さねばなりませぬ!参りましょうぞ!」



612 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:06:36 ID:5duczdw. [5/8]


砂の無い大地故に動きの鈍い渇竜。

まして副隊長の一撃で左側の視界は失われている。

この副官と共にであれば、それを翻弄する事など容易い。


男「こっちだ!渇竜!」


身体の側面に深く刃をたてる。

怒りに任せ、俺に向くヴリトラ。

その背後頭上から、副隊長が飛びかかり脳天を突く。

急所は外れたが竜は仰け反って苦しみ、その腹部を露わにした。


男(鱗の連なりが中央の一部だけ違う…!)


ここが心臓の在り処だ、俺はそう直感する。


男「女!凍結魔法を詠唱しろっ!」

女「わ、解りました…!」



613 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:07:38 ID:5duczdw. [6/8]


上段突きの構え、全力を振り絞る。


男「死ね…!」


剣を突きたてた、その傷口から夥しい血が噴き出した。

刃の先に脈動が感じられる、間違い無く心臓に達している。

そのまま刃先を捻じり込み、更に体内を抉ってゆく。

がくん…と、竜の身体が力を失った。


女「…凍結魔法!いけます!」


竜の首が俺に向かって倒れ込んでくるのをぎりぎりで躱し、素早く距離を空ける。


男「いけっ!とどめだ!」

女「はいっ…!!」


凍る空気、甲高い音に震う鼓膜。

竜の傷口から溢れる青い血が、一瞬にして固体に変わった。

渇竜の心臓が氷塊に包まれ、その動きを止める。


竜の命が閉ざされてゆく。



623 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:53:23 ID:bjVnSqmo [1/11]


地に伏せたヴリトラの傍、少しの間だけ息を整える。


既にハイドラとクエレブレは討たれ、オロチも旭日と落日の両面攻撃によりその動きを止めていた。

鈍く首をもたげるサーペントに、更に二発同時の砲撃が浴びせられる。

サラマンダーはその翼を完全に奪われ、地にうずくまって十騎余りのグリフォンに包囲されているようだ。

残る数十騎のグリフォンは真竜の周辺上空を旋回し、護っている。


男「さあ…奴が蘇るぞ」


対の紅眼が死んだのがほんの先刻だったからなのか、幸いにも復活が遅れていた翼竜。

だがついにその身体を覆う岩が大きく剥がれ落ち、あの禍々しい六枚の翼がゆっくりと広げられてゆく。



624 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:53:56 ID:bjVnSqmo [2/11]


最初の羽ばたきは遅く、しかし大きなものだった。

竜の周囲の大地から、円形に土煙が広がる。

身体を宙に浮かせ、その大顎をいっぱいに開き、自身の復活を誇示するように咆哮をあげる竜。


しかし、その次の瞬間には。


時魔女「消え…た…!?」

幼馴染「…上よ!」


翼竜は瞬く間に天空へ昇っていたのだ。


女「やはり、速い…」

男「我々も真竜の元へ…!急げ!」


上空で背面の宙返りを見せた後、その身を捻り急降下を始める翼竜。


男「くそ…!どうする気だ!」


あまりの速度にどこを狙っているかの判別がつかない。

見る間に大地に迫る、翼竜がその顎に捉えたのは。



625 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:54:32 ID:bjVnSqmo [3/11]


時魔女「…紅眼の翼竜が!」


己の対の存在、紅き瞳の翼竜の亡骸。

その身体を引き裂き、頭を千切り、ずたずたにしてゆく。


時魔女「喰ってるの…!?」

男「…違う」


駆けつけても間に合うまい。


白眼の翼竜が抉り出そうとしているのは、七つの紅き瞳だ。

突如、紅眼の亡骸から大量の黒い霧が噴出する。

それと同時に白眼の翼竜は飛び退き、再び上空へと舞った。

亡骸の上に竜巻のように渦巻いた霧は、その中に幾つかの紅い光を抱いている。


男「消える…!」



626 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:55:22 ID:bjVnSqmo [4/11]


文字通り空に霧散する滅竜の霧。

そこには既に紅き瞳の影は無かった、…そして。


女「真竜…!」


金色の真竜は更に大きく翼を広げ、首を前に伸ばして顎を開いた。

対面する滅竜が岩を破り、凄まじい咆哮をあげる。


ついに対峙する、二柱の神竜。


白銀の鱗を明け方の青白い光に輝かせて、その全貌を明らかにした滅竜の大きさは七竜の数倍はあるだろう。


幼馴染「真竜は飛ぶつもりなの…?」

男「いや、あれは…おそらく反動に耐えるための姿勢だ」


目一杯に広げられた翼で空気を受けて、自らの攻撃を支えるつもりに違いない。



627 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:55:57 ID:bjVnSqmo [5/11]


つまり、滅竜を討つための真竜の最大にして最後の攻撃は。


女「紅い光が…!」


真竜の顎の前に、瞳の色と同じ紅い光の球体が現れる。

稲妻のような閃光を纏いながら、次第に大きくなってゆくその紅き瞳の力の集合体。

それをブレスに変えて放つのだ。


辿り着いた真竜の元、巫女はその両腕を滅竜に目掛けて延べている。


巫女「まだ…滅竜の覚醒は完全ではないはず」


確かに滅竜は封印は解けても、大きく動き始めてはいない。


巫女「弟竜を消し去るための、兄竜の命をのせた一撃…これで終わらなければ、人間の世が消える」


真竜の翼がゆっくりと前方に羽ばたく、紅い力が一段と大きくなり唸り声のような音をたてている。


巫女「…ようやく、私の使命が終わります。受けなさい…滅竜!」


金色の翼が後ろへ羽ばたき前方への推進力を得る、それと同時に眩い光のブレスが放たれた。


巫女「真紅のブレス…!!!」


紅き瞳の力が波動となって滅竜を襲う。



628 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:56:33 ID:bjVnSqmo [6/11]


まだ動きを取り戻さない白銀の竜が波動に呑まれ、目を開けていられない程の閃光が辺りを包んだ。

僅かに遅れて凄まじい爆風が吹き抜け、俺は後方の地面に倒れ込む。


数秒、衝撃と目の眩みに視界を失った後、身体を起こした俺の目に映ったのは。


男(翼竜が、まだ飛んでいる…)


ゆっくりと翼を地に着け、その身体を横たえてゆく金色の真竜。

片翼が吹き飛び、相当のダメージを受けつつもその脚で立ったままの滅
竜。


時魔女「だめ…だ…!」

幼馴染「倒せ…なかった…」


滅竜が、生きている。


絶望だけが、残されている。


未来が、閉ざされてゆく。



629 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:57:40 ID:bjVnSqmo [7/11]


《…成る程、凄まじい力だ…》


空気全体が震うような、それでいて頭の中に直接届いているかのような声が響く。


男「滅竜の…声なのか…」


《白き瞳の力だけなら、ひとたまりもなかったであろう…》


まだ完全に復活できてはいない。

加えて真紅のブレスによる大きなダメージを受けて、鈍くぎこちない動作で滅竜が首をもたげる。


《…だが、我は生き残ったぞ…真竜…》


前を向いた、その右瞳は。


巫女「…やはり…奪われ…てい…た…」


消えようとする金色の真竜のものと同じ、紅き色を湛えている。



630 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:58:23 ID:bjVnSqmo [8/11]


男「…総員!」


止まっているわけには、ひれ伏すわけにはいかない。

もう守るべき真竜も倒れた。

一切の兵も、矢も、魔力も温存する必要は無い。


男「…総攻撃だ!我々で滅竜を倒す!」

総員「おおおおぉぉぉっ!!」


一斉に矢が上がる。

グリフォンが編隊すら組まずに滅竜に突撃してゆく。


まだ満足に動けない標的、僅かでも希望があるなら今だけだ。



631 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:59:18 ID:bjVnSqmo [9/11]


時魔女「翼竜が!」


しかしその滅竜を守るように、白眼の翼竜が立ちはだかる。

不意をつかれたグリフォンが数体弾かれ、顎が一体を捉えている。


男「時魔女!時間停止の準備を!」

時魔女「もう始めてる!…でも、速すぎてロックオンが…!」


その時、騎士長のグリフォンが俺達の傍に舞い降りた。


騎士長「幼馴染殿!複座に乗ってくれ!」

幼馴染「…はい!」


グリフォンの背、もう一つの鞍は後ろ向きに取り付けられている。

幼馴染は矢のストックが充分にある事を確認して、そこへ乗り込んだ。


騎士長「男殿!翼竜は我々で撹乱する、その剣で滅竜を討ってくれ!」

男「解った…!」


騎士長のグリフォンが再び空へと舞い上がる。



632 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 12:59:57 ID:bjVnSqmo [10/11]


………



騎士長「あまり気を遣っては飛べん…!落ちないよう注意してくれ!」

幼馴染「ご心配なく、馬上での訓練も積んでいます!」



騎士長「…幼馴染殿、何をこのような時にと言われるかもしれん。だが、どんな形であれ仇の翼竜が倒された今…願わせて欲しい」

幼馴染「………」

騎士長「このグリフォン、名をスレイプニルと言う」

幼馴染「…それが?」

騎士長「本来、グリフォンの名は主人である騎士と、その主たる君主のみが知るものだ。普段はその名を口に出す事は無い」

幼馴染「……では、何故…私に」

騎士長「私には今、主君が無い…私が本当の騎士としてこの戦いに挑むためには、仕えるべき主が必要なのだ」



幼馴染「…騎士長様……私は…私も、仕えた旭日を仇討ちのために捨てた身」

騎士長「………」

幼馴染「サムライも騎士に同じ、仕えるべき主を必要とするもの。…騎士長様、貴方は私にその背中を預けて下さった」

騎士長「…変わった話ではあるが」

幼馴染「互いを主君とする…騎士とサムライが背を預けあうなら、そのような絆の形があっても良いのでは…?」



636 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 20:09:56 ID:MOKUMJko [1/4]


………



翼竜を包囲しつつも、その速度に近寄れずにいるグリフォンの騎士達。

その中を一騎だけ正面から竜に向かう者がいる。

先刻、幼馴染をその背に乗せた騎士長のグリフォン。


ぎりぎりの至近距離をすれ違いながら、射手の矢が竜の胴を捉え炸裂した。

その衝撃に理性を失ったかのように、翼竜は身を翻すと自分を射った者を追い始める。

滅竜の周囲に大きな隙が生まれた。


大魔導士「今の内だ!接近して滅竜に火を浴びせろ!奴は動けん…全力でいけ!」

幼師匠「…的は大きい、外しようがあるまい!全ての矢を射るのだ!」

白夜新王「翼竜は騎士長の部隊に任せ、滅竜に挑め!槍が折れようとも、誇りは折れぬ!」



637 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 20:11:12 ID:MOKUMJko [2/4]


男「女…時魔女、もう長くは無いのかもしれんが、真竜と巫女の傍にいてやってくれ」

女「男さんは…!?」

男「俺は騎士長に約束した、この剣で滅竜を討つ。…時魔女、もし翼竜の動きが鈍ったら時間停止を」

時魔女「…解った」

女「男さん…お願い、死なないで下さい」


命を賭するのは、これが最後だ。


男「…すまない、女」


だからもう一度だけ、約束できない俺を許してくれ。

トリガーを握る。


《充填開始…15%…》


全てを、刀身に籠める。


男「いくぞ…滅竜!」



638 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 20:13:18 ID:MOKUMJko [3/4]


滅竜の背に火柱が立った。

落日の魔導士による攻撃、ハイドラを呑み込む程のそれも巨大な滅竜に対してはどれだけの威力があるものか。


《…30%…45%…》


雨のように滅竜に降り注ぐグリフォンの突撃も、獅子に纏わりつく虫けらのように見える。

少しずつ動きを取り戻す滅竜が大きく片翼を羽ばたいた。

たったそれだけの事で叩き落とされる、数体のグリフォン。


《…60%…75%…》


無数に射られる地上部隊の矢、果たして棘がたつ程の痛みでも与えられているだろうか。

まして槍兵の攻撃など、その胴に届く事さえない。


《…90%…充填完了、加圧開始…110%…120%…》


旭日の部隊が放つ炸裂の矢も、星の国の新兵器も、直撃したところで鱗の数枚を剥がすのみだった。



639 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 20:14:21 ID:MOKUMJko [4/4]


滅竜まであと数十ヤード、その真正面に立つ。


《…130%…140%…150%…》


俺の存在に気付いた滅竜が、ゆっくりとした動きでその脚を一歩踏み出す。

自分の身体を必死に襲う小さな人間達の攻撃など、気付いてさえいないかのように。


《…160%…170%…加圧限界接近…175%…180%…》


俺が何かの攻撃をしようとしている事は解っているはずだ。

それなのに滅竜は、挑発するようにその首を傾げるだけ。


《…185%…190%…195%…》


時魔女「男…!もうやめて…死んじゃうよ!」

女「…男さんっ!」


《…200%…過充填開始、刀身破損ノ恐レアリ…210%…215%…》



640 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 20:17:49 ID:HB2hymOY


果たしてこの光の刃が滅竜を裂く事ができるのかは判らない。

ここまで闘気を注ぎ込んで、俺の身体がどうなるのかも。


狙うなら頭、どうせ刃をたてようにもその胴までは届かないのだから、できるだけ充填率を高めた特殊効果に賭けるしか術はない。

それで滅竜の首を落とす事が出来れば、翼竜も消える。


…出来なければ、終わりだ。


男「神よ…死ねっ!!」


剣を薙ぐ。


トリガーを開放する。


青白い光の刃が放出され、滅竜の首を捉える。


白銀の鱗が飛び散る。



641 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:10:21 ID:oDncGEv. [1/10]


男「…く…っ……!」


俺は膝を突きながら、その首が切断されている事を願った…しかし。


滅竜《…人間の力とは思えんな》


ゆっくりと繋がったままの首を曲げ、頭を俺に向ける滅竜。


男「馬鹿…な…」

滅竜《あと十度もその技を放つなら…あるいは我を倒せるかもしれぬ》


今の一撃で奪ったのは、斬撃を当てた箇所の鱗と表皮の一部に過ぎなかった。


男(所詮…神には勝てないのか…)


遠ざかろうとする意識を、力の入らない拳を握り締めて無理に手繰り寄せる。


だが、繋ぎとめる事ができたのは意識だけだった。

斬撃で放たれたのは、俺自身の闘志でもあったのか。


男(…もう、無理だ)


俺の身体にはもう残っていない、もう空っぽになっていたんだ。



642 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:11:15 ID:oDncGEv. [2/10]


最初から、無理だった。


『命を賭して』、『命に代えても』、『刺し違えても 』、何度も弱い自分を偽って、そんな強い言葉を吐いてきた。

じゃあそれが無駄な時は、どうしたらいい。

刺し違える事も、命に代える事も出来ない、どうやったって死ぬのが自分だけの時は…何と自分を偽ればいいんだ。


滅竜は更にその動きを取り戻し始めている。


今、たった一度の尾による打撃で、月影の槍兵が何人も死んだ。


グリフォンの騎士が、滅竜の頭に迫る。


だけどあんな小さな…滅竜にとっては縫い針ほどの槍で、一体何が出来るというんだ。


滅竜が上げた前脚、ただ歩もうとしただけかもしれない。


それを地に降ろすだけで、旭日の騎馬兵が踏み潰された。


滅竜ばかりに気を取られた落日の魔導士に、翼竜が顎を開いて突っ込む。


一人が喰われ、何人もが弾き飛ばされて、死んでゆく。



643 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:12:43 ID:oDncGEv. [3/10]


俺はただの農夫だ。

それが神を殺そうなどと、冗談にしたって出来が悪い。


元々の軍人ではない俺が逃げ出したって、誰も笑わない。

いや、笑われたっていい。


この地に来た時に通った洞窟、そこへ逃げれば今だけでも死なずにすむんじゃないだろうか。

女は俺に死ぬなと願った。

例えいずれ人間が滅ぼされるとしても、少しでも生き永らえる事が出来るなら。


だけど足が、動かないんだ。

早く、早く女の元へ。

ちくしょう、這ってでも…ここから離れなければ。


ドラゴンキラー、月の討伐隊隊長、月影の師団、月影軍指揮官。

なんだその大層な呼び名は、俺じゃない…俺にそんなもの務まる訳が無かったんだ。



644 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:13:23 ID:oDncGEv. [4/10]


月の副隊長「隊長殿…!」


身動きのままならない俺の元へ、副官が駆けつける。


男「…もう無理だ、勝てるわけが無い」

月の副隊長「しっかりしなされ!何を弱気な…!」

男「どうしろって言うんだ…俺はもう身体も動かない!」

月の副隊長「…隊長殿…心が折れ申したか…」


そして副官は黙って俺に肩を貸し、半ば引き摺るように女の元へと運んだ。


女「男さん…!しっかりして!」

月の副隊長「女殿…隊長殿を頼み申す」


俺を責める事もせずに、彼は再び滅竜の元へ走る。

勝ち目が無いと知っても、死ぬと解っていても。

今の俺には、その後ろ姿を見る事さえ躊躇われた。



645 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:14:17 ID:oDncGEv. [5/10]


真竜はぴくりとも動かず、少しずつその身体が光の粒となって消え始めている。

巫女もまた横たわり、時魔女はその傍に付き添っていた。


女が優しく俺の肩を抱く。


男「女…もう、勝てない…どうやったって…あんなモノ倒せるわけがない」


己の弱さを女に吐露しながら、俺は両手を地に突いて震えている。

何と情けない姿だろう。

例え愛想を尽かした女に頬を打たれたとしても、俺には戦う力も意志も残ってはいないんだ。


しかし女が口にしたのは、罵る言葉でも俺を奮い立たせようとする言葉でもなく。


女「男さん…充分です、貴方はもう出来る事は全てしたじゃないですか」

男「…女……」


そして女は、立ち上がった。


女「まだ…自分に出来る事を残しているのは、私の方かもしれません」


そう言って俺に微笑んで見せた後、彼女は伏せる巫女の元へ歩む。



646 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:15:01 ID:oDncGEv. [6/10]


時魔女「女ちゃん…」

女「巫女様、先ほどの話…もう一度お聞かせ下さい」


巫女が薄く目を開けた。

その右眼の紅色が失われている。


女「もう一度…真竜のブレスを放つ事が出来れば、滅竜を倒せるかもしれない…そう仰いましたね」

巫女「女…様…しかしそのためには…新たな巫女が…」


掠れた声で巫女は言った。


新たな真竜の巫女をたてれば、もう一度真竜に紅き瞳の力を与える事が出来る。

巫女となった者は真竜にその魔力を差し出す代わりに、紅き瞳の生命力と意志を託される。

巫女とするのは強大な魔力を持った、清らかな乙女でなければならない。


女はただ目を閉じて、それを聞いていた。



647 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:15:39 ID:oDncGEv. [7/10]


巫女「…時魔女様の魔力は…既に異質なもの…幼馴染様では、魔力が足らない…」


女「…私は、魔力には自信があります」


巫女「しかし…」


巫女になる乙女は、清浄な身でなくてはならない。


女「……大丈夫です」


目を開けて寂しげに笑む、女。


女「私は男さんの妻…でも」


そして彼女は、俺が何度も口にしてきた言葉を借りて言った。


女「…それは形式上の事ですので」



648 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:16:30 ID:oDncGEv. [8/10]


巫女「紅き瞳の生命力を…得るという事は…真紅のブレスを放てば…死ぬという事…」


女「承知しています…巫女様、時間がありません」


男「…女……」


巫女「本当に…良いのですか…?」


男「女…!」


女「…構いません」


男「やめろ…女…!」


巫女「…女様…手を…」


男「よせっ…!だめだ!」


女「ごめんなさい…男さん」


男「謝らなくていい…!だから…」


女「貴方の妻となれない事…お許し下さい…」



649 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 21:17:21 ID:oDncGEv. [9/10]

巫女が女の手を握り、何かを唱える。

二人共が目を閉じていた。

やがて周囲に金色の光が立ち昇る。


男「よせ…!やめてくれ…!」

時魔女「…女…ちゃん…」


強さを増す光、その内に紅い煌めきが舞い、次第に女を包んでゆく。

そして一瞬、目が眩む程の輝きを放った後、光の柱は散って消えた。


男「……女…」


ゆっくりと、女が立つ。

巫女の手から竜を象った杖を受け取り、その瞼を開ける。



その右瞳は。



女「私は…貴方が生きる、この世界の妻となります…!」



真竜の力を宿す、紅色。



654 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 22:54:47 ID:XL1hDAnU [1/7]


真竜が金色の輝きを取り戻す。

立ち上がり、その翼を大きく広げ、全力の咆哮をあげる。


滅竜《…まさか、何故…真竜…!》


首を延ばし体勢を屈めて、顎を大きく開いた。

尾の先、翼の先から紅い稲妻のような力が身体を伝い、その顎の前に集まってゆく。


滅竜《…馬鹿め…相殺してくれるわ!》


同じ姿勢をとり、借り物の紅き瞳の力を集め始める滅竜。

白き瞳をも持つ滅竜は、真紅のブレスを放っても生き残るだろう。


滅竜を攻撃していた兵達が状況に気付き、一斉に退避の動きをとり始めた。


男「女…!やめろ、それを放てばお前は…」

女「…男さん、私…貴方と出会ってから、本当に幸せでした」


真竜の意志を託された女は、滅竜に対して真っ直ぐに腕を延べている。


女「…ありがとう、男さん」



655 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 22:55:35 ID:XL1hDAnU [2/7]


俺は、なぜ。

こんなところで、動けずにいるんだ。


時魔女「…翼竜が来る!」


真竜を襲おうと羽ばたき近づく翼竜。

騎士長と幼馴染はそれを追い、妨害しようとしている。


時魔女「真っ直ぐにこっちに来てる…!これなら…!」


時魔女は既に変換を完了していた時間停止を発動するため、翼竜を視界に捉えロックオンを試みる。


時魔女「…よし!いける!…時間停止っ!」


刹那、翼竜が空に縫い付けられたように動きを止めた。

騎士長だけでなく、周囲にいたグリフォンが即座に総攻撃を加え、瞬く間に切り裂かれてゆく竜の翼。


時魔女「もう充分かな…!?解除っ!」


翼竜がその動きを取り戻す。

そして為す術もなく失速し、墜落してゆく。



656 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 22:56:29 ID:XL1hDAnU [3/7]


まだ、誰も諦めていない。

女が命に代える覚悟で手繰り寄せた最後の希望を、必死に掴もうとしている。


俺はここで項垂れているだけなのか。

女が命を捨てる事を悲しんでいるだけ、それで生き延びるつもりか。


男「…時魔女!…俺に時間加速を!」

時魔女「え…!?う、うん!魔力コンバート、時間加速モード!」


女の夫たる、この俺が。


男「…騎士長っ!来い…!」


その希望を掴もうともせずに、どうするというんだ。


翼竜が堕ちた後、既にこの近くまで退避していたグリフォンが俺の前に舞い降りる。


男「騎士長!俺を乗せてくれ!」

騎士長「解った…!」


俺は言う事を聞かない脚を、無理矢理伸ばして立ち上がった。



657 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 22:57:41 ID:XL1hDAnU [4/7]


幼馴染に手を引かれ、グリフォンの背に登る。


男「時魔女…時間加速は限界まで速くしてくれ」

時魔女「了解!発動するよ…時間加速っ!」


その効果が付与されると同時に、俺は剣のトリガーを握った。


《充填開始…20%…40%…》


魔法効果により充填速度は凄まじく早い。

それは俺の身体にとっては限界を超える負担だという事は解っている。


それでいい、例え俺の全ての力を…命までも充填したって構わない。


幼馴染を降ろし、離陸するグリフォン。


男「騎士長…滅竜の背後から、その頭へ!」


《…70%…90%…充填完了、加圧開始…120%…》



658 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 22:58:53 ID:XL1hDAnU [5/7]


既に真竜と滅竜、双方の顎の前には紅い光の球が出来はじめている。

背後から滅竜の頭部に近づいた。


滅竜《…こざかしい!》


騎士長「まずい…気付かれた!」


異変に気付いた滅竜が、その片翼でグリフォンを狙い羽ばたこうとした…その時。


滅竜《…何だ…これ…は…!》


滅竜が突如、動きを止める。

その理由はすぐに解った。


何故なら、その瞳の色が物語っていたから。



659 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 22:59:55 ID:XL1hDAnU [6/7]



男「まだ…あんたは、そこにいたのか…」



騎士長「男殿…!どうする!」

男「ここでいい…騎士長、後は頼んだ!」


滅竜の頭上、俺はグリフォンから跳んだ。

その、紫色の瞳にかかる瞼の上に。


騎士長「男殿…!」

男「退避しろ、騎士長…すぐに」


《…300%…充填限界、充填限界》


滅竜の動きを封じる彼の力がいつまで続くかは解らない。

剣の充填もここまでのようだ。

刀身には光のひびが入り始めている。



660 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 23:00:39 ID:XL1hDAnU [7/7]


『理論上は150%で金剛石でも砕けるはず』


ならば、限界充填の今なら、どうだ。


男「砕けろっ…!」


滅竜の瞼越しに、剣を突き降ろす。


その瞳に深々と刃が食い込む。


男「おおおおおぉっ!!!」


トリガーを解放する。


眩い光と共に刀身が、そして竜の瞳が砕ける。



661 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 23:03:47 ID:WyZM4pWI [1/2]


今だ、女、躊躇うな。


伝うはずだろう、俺の意志は。


男「女…」


許せ、お前が俺の生きる世界の妻となれない事を。


男「…放て、女」


お前はやはり、俺の妻でなくてはならんのだ。


男「はなてえええぇぇっ!!!」


真竜の顎、紅き光が満ちる。


滅竜を、俺を、その波動が貫く。


きっと今、妻は微笑んだ。


俺の心を捉えてやまない、あの美しい青い左瞳を涙に濡らして。



662 名前: ◆M7hSLIKnTI[] 投稿日:2013/12/09(月) 23:05:01 ID:WyZM4pWI [2/2]

第三部、終わり


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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/12/11(水) 09:42:21|
  2. ファンタジー
  3. | コメント:0

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